超円安でも、海外旅行に行きたい!

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 円安が一向に収まる気配を見せないまま、長期休暇シーズンを目前に控えた日本の夏。せっかくの旅行シーズンだが、「海外旅行なんて夢のまた夢」と諦めムードの方がほとんどなのではないだろうか。

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【写真を見る】世界一周航空券vs通常料金 比較するとお得さが一目瞭然

海外旅行に出掛ける日本人、激減?

 ただでさえ夏休み時期は航空券の値段が跳ね上がる。それでも“大盤振る舞い”の覚悟で、なんとか海外へ……。が必要なものだった。

 だが、暴力的とさえ言える勢いで加速する円安の前では、そんな庶民のバカンスを実現させることは厳しそうだ。2010年からの約10年間はだいたい1ドル=100円前後で安定していたレートが、ここ数年で一気に円安に振れ、いよいよ160円を突破する“異常事態”となった。

超円安でも、海外旅行に行きたい!

 昨年の時点で、ハワイを訪れるも円安&物価高で外食もままならず、ホテルの部屋でカップラーメンを啜っていた家族連れが話題になっていた。今年はいよいよ海外に行くことすら難しい状況である。

 さすがに今年は国内で過ごすしかないか、と諦めることなかれ。超円安でも、海外旅行に行くことのできる“裏技”が――?

「単純に“安い”というわけではないのですが、これだけ色んなモノやサービスの価格で値上げが広がる中、相対的に割安と言える航空券が存在します」

 そう話すのは、自身の世界一周旅行の体験をYouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」で発信している、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢氏だ。

日本からヨーロッパ、そしてアメリカへ

 風呂内氏がオススメするのは、その名も「世界一周航空券」という商品。

「JALが所属するワンワールド、ANAが所属するスターアライアンスと、アライアンス(航空連合)ごとに発売されている航空券です。複数都市を訪問する旅程の際、条件を満たせばレガシーキャリアにお得に搭乗することができます」(風呂内氏)

 レガシーキャリアとは各国の大手航空会社のこと。風呂内氏が教える方法は、長距離フライトでも快適な空旅ができるのが大きなメリットだ。

「各社それぞれ条件が少しずつ異なりますが、JALが所属するワンワールドの世界一周航空券の場合、訪問する国のエリア(大陸)の数で値段が変わる“大陸制”というシステムのチケットが初めての人にもわかりやすいと思います」(風呂内氏)

 例えば、羽田空港を出発し、パリ、ロンドン、とヨーロッパの国々を周ったあと、今度はアメリカのニューヨークとラスベガスへ。最後は太平洋を渡って再び成田空港へと帰ってくる。この旅程だと「アジア」「ヨーロッパ」「北米」の3大陸となり、料金はエコノミークラスだと33万5000円。ビジネスクラスでは65万6300円となる。

「会社によって旅程の期間は決まっていて、スターアライアンスの場合では10日以上という条件があります。また、出発から帰国までの期間は1年以内と決まっています。燃油サーチャージと空港利用料などは別途支払いとなります」(風呂内氏)

 他にも、最大搭乗回数は16回であることや、各エリアの途中降機の回数など、細かな条件がある。

「特定の都市を起点に右回りでも左回りでもいいのですが、途中でUターンするのはNGで、あくまで1周することが条件です。自分の行きたい都市と都市をどう線を結べば発券が可能か。もっとも合理的なルートはどれか。あれこれ考える時間も世界一周航空券を使う旅の醍醐味です」(風呂内氏)

 言うなれば飛行機版「青春18きっぷ」ということだろうか。

エコノミークラスよりも、ビジネスクラスの方がお得?

 風呂内氏は夫婦で「世界一周航空券」をこのように使った。

「2023年の5月から約2カ月間の世界旅行をしました。羽田、パリ、ロンドン、バルセロナ、ニューヨーク、ワシントンD.C.、ラスベガス、サンフランシスコ、成田というルートです」(風呂内氏)

 長距離のフライトで体力を削られないよう、席はビジネスクラスを選択したという。

「航空券が65万6300円で、そこにフライト毎の燃油サーチャージ等を合わせると、飛行機にかかった費用は1人あたり約83万円でした」(風呂内氏)

 決して安くはないが、世界7都市を飛び回って、しかもほぼビジネスクラス。ふつうに購入するのに比べると2人で200万円以上の節約になったそうだ。

「エコノミーならキャンペーンを使ったり、LCCなども駆使したりすればもっと安いこともあります。だからこそ、ビジネスクラスの方がお得感は大きいのです」(風呂内氏)

 たしかに、セールなどを狙ってエコノミーの33万5000円よりも安く抑えることは可能かも知れないが、ビジネスクラスで65万円より安くするのは不可能だろう。

燃油サーチャージの水準は少し落ち着いてきた

 さらに料金に影響を与えるのは、航空券にプラスアルファでかかる「燃油サーチャージ」や施設使用料、諸税など。燃油サーチャージは原油価格や為替の影響を受け、航空会社によって扱いが異なる。JALやANAは2か月ごとに改定され、コントロールの効かない部分だ。

「燃油サーチャージは発券時の水準が適用されます。JALだと2ヶ月ごとに、その翌月・翌々月に適用される金額が発表され、その金額は“ゾーン”で決まっています。そのため、自分が発券したタイミングが割高だったのか割安だったかの1つの目安になります。利用することになる他の航空会社もそれぞれのルールで適用されるため、完全な基準にはなりませんが、ざっくりとした立ち位置を確認できることになります」(風呂内氏)

 例えばJALの場合、燃油サーチャージのゾーンはAからOまで15段階あり、アルファベットが進む毎に支払う料金も増えていく。風呂内氏が体験したケースだと、2020年2月発券(コロナ禍によりキャンセル)はゾーンCだったが、2023年11月発券はマックスのOにまで値上がりしていた。また、スケジュールの都合で2023年12月に発券し直した際はゾーンLになっていた。

 これから購入を検討する場合、2024年9月末までの発券については、Oより5つ下がりゾーンJとなっているため、最も高い時期にはあたらない。

「燃油サーチャージの水準も多少落ち着いてきて、航空チケットそのものは定額であることを考えると、お休みはカレンダー通りという人が、少し贅沢に旅行をしたい場合にも選択肢になり得るチケットだと思います」(風呂内氏)

 風呂内氏は自身のYouTubeで世界一周航空券の詳細なルールや、実際に行った旅行でかかった費用なども公開している。

 海外旅行が手軽ではなくなってしまった今こそ、使える節約術はなんでも活用したいところだ。

風呂内亜矢(ふろうちあや)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者。独身時代に貯蓄80万円しか持たずマンションを購入したことをきっかけに、お金の勉強を始め、マンションの販売会社に転職。自身の購入体験を元に年間売上1位の実績を挙げる。現在は夫婦で複数の物件を所有し賃料収入を得る一方で、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。『マンガでカンタン!NISA・iDeCoは7日間でわかります。』(Gakken)他、お金に関する書籍は約30冊。日常の記録に交えてお金のTipsを伝えるYouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」も更新中。

デイリー新潮編集部