なりすましの投資詐欺､目の当たりにした手口

2024年7月9日 8時0分

増加する「著名人なりすましアカウントによる投資詐欺被害」。筆者が実際に確認した具体的な手口をご紹介します（写真：bee／PIXTA）

近年、著名人なりすましアカウントによる投資詐欺被害が増加しています。なりすましアカウントの投稿本文にLINE誘導用URLが記載されていて、LINEに移動した後そのやり取りの中で投資を持ちかけられる、というケースが多いようです。

先日、私はSNS上のある著名人なりすましアカウントの削除依頼を受けて対応をしました（このなりすましアカウントはその後、凍結）。そのときに、当該アカウントの行動を確認するために、当該アカウントの投稿本文にあったLINE誘導用URLをクリックし、あえてLINEに誘導をされてみました。

今後の著名人なりすましアカウントによる投資詐欺被害防止の一助になるかもしれませんので、私が実際に確認した具体的な手口をご紹介します。

LINEに誘導された後…

著名人なりすましアカウントの投稿本文に掲載されたLINE誘導用URLをクリックすると、QRコードが表示されました。そのQRコードでLINEの友達追加をすると、著名人と同名（もちろん別人です）のなりすましアカウントが表示されました（プロフィール画像は著名人）。

その画面左下の「トーク」ボタンを押すと、URLと招待コードが表示され、LINEオープンチャット（以下、オープンチャット）に招待されました。

オープンチャットへの誘導用URLをクリックし、招待コードを入力して承認されると、オープンチャットに参加ができるようになりました。オープンチャットの画面左上には、グループ名および参加人数が表示されるのですが、私が参加した時点で、200人近い参加者がいました。

オープンチャットでは、著名人のなりすましアカウントではなく、「●●（著名人の名前）さんのアシスタント」というアカウントが、毎日投資に関する情報をアップしていました。本当に文字通り“毎日”投資に関する情報をアップし続けていました。毎日アップされる投資に関する情報それ自体は、明らかにそれはおかしいだろう、という内容も一部ありましたが、それなりに有用な内容のほうが多かったです。

このように、オープンチャットに誘導してすぐに投資を持ちかけるのではなく、一定の期間有用な投資情報を提供し続けるのは、オープンチャット参加者にその主催者を信頼させて、その後の投資を持ちかける話を信じさせやすくするためだと思われます。

「ネガティブな発言」は即削除

アシスタントを名乗るアカウントだけでなく、たまに著名人のなりすましアカウントもオープンチャットに参加し、発言をします。さらに、その発言に対して、オープンチャット参加者が「素晴らしくわかりやすい解説、ありがとうございます」「先生の指示を受けてすぐ投資できるよう、●●●万円を用意しました」「私は先生の前回の指示を受けて●●●万円利益を得ました」等の発言を繰り返していました。

このようなやり取りは、「他の参加者がこれだけ信用して褒めたたえているし、実際に成果を出している参加者もいるし、大丈夫なのだろう」と、オープンチャット参加者にその主催者を信頼させるためのサクラがほとんどだと思われます。なお、一部の参加者の発言内容に、翻訳サービスを利用したような堅苦しい日本語のものがあり、日本人でない人がサクラとしてオープンチャットで発言しているのかな、という印象を持ちました。

また、あるアカウントが「これって詐欺じゃないの？」と書き込むことが複数回あったのですが、このようなネガティブな発言は、数分～数十分で削除されていました。参加者が疑いを持たないよう、オープンチャット内の発言に対する監視が徹底されているようでした。

著名人のなりすましアカウントおよびそのアシスタントと名乗るアカウントがオープンチャット参加者に対して投資を持ちかける話をしてきたのは、私がオープンチャットに参加した日から、約1カ月後のことでした。具体的な投資方法はオープンチャット上では公開されず、個別に著名人のなりすましアカウントに投資希望メッセージを送ると具体的な投資方法が指示される形式でした。

また、「早くに投資できてよかったです」「●●●●万円を投じています。この投資を通じて利益を得ることを期待しています」等、多くのオープンチャット参加者が投資しているように見えるやり取りが続きました（この中には多数のサクラがいると思われます）。こういった投資方法に関するやり取りがされた約1カ月後、オープンチャットでの著名人のなりすましアカウントおよびアシスタントと名乗るアカウントの発言は、いっさい更新されなくなりました。