Z世代の多くの若者たちは、TikTokやInstagramのリールなどのSNSに何をどう投稿するかが生活の中での大きな柱となっています。

人にどんな自分を見せたいのか、自分でコントロールすることによって、自己プロデュースをしているのですが、ここ数年の等身大より美しく加工する“映え文化”に疲れ果てている傾向も見られます。

Z世代を中心に流行中のSNSアプリ「BeReal」

そこで2023年あたりからZ世代を中心に流行しているのが、2020年にリリースされたフランス発のSNSアプリ「BeReal」です。

簡単に特徴を説明しますと、このアプリでは1日1回、不規則なタイミングでアプリから通知があり、2分以内に「今何をしているか」を投稿しなければなりません


いかなるときにも、移動中にも投稿が求められる「BeReal」(画像:筆者提供)

通知が届いた瞬間の自分を投稿することしかできず、画像処理のフィルターもかけられないため、かなりリアルな写真を投稿することになります。しかも、正面を映すアウトカメラと、自分を映すインカメラの同時撮影が必須です。広告やフォロワー数の表示もないことから、“映え疲れ”をしていたZ世代には新鮮だったものと推察されます。


早朝や雪の中でも「BeReal」で投稿(画像:筆者提供)

このように、素の自分を見せる「BeReal」に加え、画像修正ができない韓国プリクラが流行しています。こうして、無加工の写真をSNSで投稿する機会が増えたため、加工した写真を載せづらくなったという声もよく聞こえてきます。

無加工でも少しでも自分の容姿を良く見せるため、手やスマホで顔を隠すといった撮り方をしているZ世代も多かったのですが、“隠している”感じが不自然になってしまっていたりもしました。

そこで、今年流行し始めているのが、”ハイアングル”からの写真を撮るという方法です。ハイアングルだと、脚が長く、顔も小さく映るため、自然にスタイルを良く見せることができるのです。

例えば、愛知・名古屋にある「MJ PHOTO STUDIO」は、真上から撮影できることができるフォトブース。韓国ではサングラスをかけて撮影することが流行している“真俯瞰写真スタジオ”は、日本ではここだけだそう(2024年6月時点)。

基本料金は2名で2200円、10枚撮影可能ということで、写真館などでの撮影よりお値打ちなのも人気の理由でしょう。

また、2024年2月に東京・新大久保にオープンした「The film」というエレベーター風のプリクラも人気があります。もともと韓国のソウルで流行していたものが、今年初めて日本に入ってきました。

「Y2K」「Y3K」のいいところ取りの写真

エレベーター風の室内は前面鏡張りで、画質の粗い監視カメラで上から撮られているかのような写真を撮ることができます。通常サイズは500円、大きめサイズは600円で、写真だけではなく撮っている間の動画もQRコードを読み込んで簡単に入手できるようになっています。

エレベーターが全面銀色でメタリック感があることから、3000年代の近未来的な世界観をイメージした「Y3K」のトレンドも感じつつ、画質の粗い写真であることから、2000年前後の平成カジュアルファッション「Y2K」のトレンドもあるといういいところ取りの写真が撮れるのが、このエレベーター風プリクラとなっているのです。


流行中の「ハイショット」からの撮影(写真:筆者提供)

また、「上から階段フォト」や「天井カメラ」という、高い位置からのアングルから撮影した動画もTikTokやInstagramのリールなどで流行しています。「上から階段フォト」は、音源に載せて一般人がジャケット写真のような写真を撮る動画です。

その多くは上からの画角で階段に並んでいるサングラス姿の人たちを撮影し、その写真をモノクロにして動画投稿するのです。これは海外のアーティストのようなジャケット写真を撮って、イケイケ感を演出することを楽しんでいるようです。「天井カメラ」はただ単に頭上にカメラを設置して、仲間たちと楽しくにぎやかにワチャワチャしている様子を撮るものです。

そのコミュニティ特有のノリや大人数での仲の良さをアピールして、「自分もこんな友人が欲しい」「憧れられたい」と人に思われたいことから、流行しているようです。

見せ方は「無加工派」と「加工派」に二極化

その一方で、中国のSNSでは“盛り盛り”の加工ブームが到来しています。これまでご説明したように、日本のSNSでは無加工・ハイアングルの流行傾向がありますが、まだまだ「映えさせたい」と加工肯定派も根強いのが現状です。肌感覚では、Z世代の無加工派と加工派は半々といったところでしょうか。

東京・六本木の「RALME HOUSE」という撮影スタジオでは、中国のSNSであるREDのワンホン(インフルエンサー)がヘアメイクをしてくれるといいます。そもそも、流行に敏感なZ世代女子の間では、REDから情報を得ている子も多く、日本でもワンホンの影響力が大きくなってきています。

強めの色味を使って目鼻立ちをハッキリさせるワンホンメイクも流行しつつあり、アニメ風の目や鼻などのイラストを自分の写真に馴染ませて、二次元風の顔に加工できるアプリ「Meitu」や「hypic」などのワンホンイラスト加工もこれから流行していくと思われます。

このように、SNSでの中華トレンドを取り入れてまだまだ映えさせたい子と、映え疲れをしている子で、Z世代の中でもSNSでの見せ方は二極化しているようです。これからのSNSの傾向がどのような流れになっていくのか、これからも注目していきたいと思います。

(構成:高田晶子)

(原田 曜平 : マーケティングアナリスト)