大城卓三

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 スポーツ報知は5月9日、「巨人・大城卓三がリフレッシュ抹消、阿部慎之助監督『原点に戻って』再昇格は自己申告に」との記事を配信した。記事のタイトルを見ただけでも、巨人の阿部慎之助監督が非常に気を使いながら、大城卓三に2軍行きを伝えたことが分かる。

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【写真をみる】阿部監督は小林がお気に入り? 大城“2軍行き”の「本当の理由」とは

 今季の巨人は3月29日の阪神戦で開幕を迎えた。それからの12試合、大城は10試合でスタメンマスクを被り、残りの2試合は小林誠司が出場した。今季も「巨人の正捕手は大城だ」という印象が強かったはずなのに、なぜ2軍行きとなったのか。担当記者が言う。

「4月13日の広島戦で流れが変わった印象があります。この日、岸田行倫選手が初めてスタメン起用されました。その後、小林選手と岸田選手が交互にマスクを被るようになり、大城選手のスタメン起用が激減したのです。大城選手が最後にスタメン起用されたのは4月29日。それから5月8日までの8試合は小林選手が4試合、岸田選手が4試合と、2人が試合を分け合う形で起用されています」

大城卓三

 大城のスタメン出場が減少した理由の一つとして、打撃不振があるのは間違いないだろう。23試合・66打席で打率1割8分8厘、ホームラン0本。出塁率1割9分7厘と低迷している。

 ところが阿部監督は「大城は不調だから2軍に落とした」とは一言も口にしなかった。記者団には「一番のメインは気分転換」と説明。スポーツ報知は《指揮官は大城卓の実力を認めているからこそ、再調整の時間を与えた》と伝えた。

ネット社会の反映

 記事の後段では阿部監督の「とにかく、野球が楽しいなとかね、もう一回そういう原点に戻ってきてくれと言ったんだけどね」という“エール”を紹介。まさに“リフレッシュ抹消”の効果を期待している──というわけだ。

 ところが、阿部監督の発言を額面通りには受けとめない野球解説者もいる。何しろ今季は小林と岸田が積極的に起用されている。しかも、大城の2軍行きが決まると、“第4の捕手”である山瀬慎之助が選手登録された。

「巨人やメッツで投手として活躍した高橋尚成さんは自身のYouTubeチャンネルで、捕手としては大城選手より小林選手のほうがいいと率直に語りました。また中日の大エースだった山本昌さんもラジオ中継の解説で『監督が代われば、使う選手が代わる』と指摘。阿部監督は守りで勝つ野球を目指しており、リードや送球といった面を考えて大城選手より小林・岸田の両選手を重用している可能性があると分析しました」(同・担当記者)

 巨人OBで野球解説者の広澤克実氏は「阿部監督の報道陣に対する説明は、ネット社会の影響力を考慮したものだと思います」と言う。

2軍行きの本当の理由

「ストレートな表現で報道陣に説明していまうと、最悪の場合はSNSで炎上する時代になりました。阿部監督は本音をオブラートに包み、細心の注意を払った発言だったのではないでしょうか。では、本当のところ大城くんはなぜ2軍行きを命じられたのか、考えられる理由は2つです。1つはプライベートで緊急事態が発生した場合です」(同・広澤氏)

 プライベートでの緊急事態と聞けば、どうしても交際や金銭などに関するトラブルを連想してしまうが、それだけではないという。

「家族や恩師が危篤だとか、親などに介護の必要があり、実家で相談しなければならないとか、そのような緊急事態でも登録を抹消するという球団が最近は増えました。もう1つの可能性は、やはり『今のままでは1軍の戦力としては認められない』と阿部監督が判断した場合です。“リフレッシュ抹消”と報道されていますが、大城くんは打撃が不振なので再調整する必要があります。しかし、そのためにわざわざ2軍に行く必要があるのでしょうか?」

小林を絶賛した阿部監督

 当たり前のことだが、1軍では1軍コーチが選手に指導を行う。大城はスタメンを小林や岸田に譲ったとしても、1軍に帯同してコーチと猛練習に励むのは難しいことではない。2軍コーチが1軍コーチとは比べ物にならないほどの指導能力を誇っているのなら話は別だが、プロ野球のコーチなら一定の指導水準を持っていることは言うまでもない。

「厳しい言い方かもしれませんが、そもそも大城くん、小林くん、岸田くんの3人は『巨人の正捕手』にふさわしい実力の持ち主ではありません。どんぐりの背比べという中で、大城くんは打撃がセールスポイントでした。それが今の打撃成績で2軍行きを命じられたということは、かなりの危機感を持つ必要があります。やはり“リフレッシュ抹消”は建前なのではないでしょうか。それこそ今季に限れば岸田くんの打撃のほうが、よほど見るべきものがあります」(同・広澤氏)

 スポーツ報知は5月3日、「巨人・阿部監督の本音『大城メインでいきたいんだけど』小林、岸田と3捕手併用の理由明かす」との記事を配信した。

 この記事で阿部監督は、大城を《はっきり言うと精彩を欠いている》と評し、小林については《誠司を使って、すごく落ち着きが出てきた。間がいい。投手との間、返球の間、試合を運んでいく中でのいろんな間が素晴らしいなと思って見ている》と語った。

巨人の落ち度

「繰り返しになりますが、3人の捕手には一長一短があり、図抜けた選手はいません。その上で、阿部監督になってから、小林くんのスタメン出場が増えたのは記録から明らかです。こうしたことから考えると、阿部監督は、昨季まで小林くんが置かれていた状況に同情していたのではないでしょうか。さらに結局のところ、監督には好きな選手と嫌いな選手がいるものです。もちろん成績や調子でスタメンを決めるとはいえ、好きな選手は起用したくなるのが人情でしょう。阿部監督は大城くんより小林くんのほうに相性の良さを感じているのかもしれません」(同・広澤氏)

 いずれにしても、3人の優れた捕手が正捕手の座を巡って激しく争っているわけではない。「3人の中でマシな捕手は誰か」というレベルでしかない。

「捕手にとって最も重要な仕事は、言うまでもなくリードです。配球を組み立てるには打者心理と投手心理の深い理解が欠かせません。3人だってリードについて考えなかったわけではないでしょう。巨人の首脳陣が教えてこなかったのです。私は野村(克也)監督が古田(敦也)を育てる姿を間近で見て来ました。キャッチャーは一朝一夕に育ちません。野村監督ほどの徹底的な教育、指導を巨人が捕手に行ってきたとは思えません」(同・広澤氏)

早くもFAに関心

 実は今オフ、トップクラスの捕手が相次いでFA権を取得するため、早くも話題を集めている。ソフトバンクの甲斐拓也、阪神の坂本誠志郎、中日の木下拓哉──そして大城の名前も入っている。

「捕手の育成は難しいため、FAでの獲得を考える球団が少なくありません。さらに最近は複数の捕手で1シーズンを乗り切るチームが増えてきました。こうした事情から、今オフのFAで捕手が話題の中心になるのは間違いないでしょう。例えば甲斐くんがFAを宣言すれば、巨人は関心を示す可能性があります。ならばソフトバンクは坂本くんの獲得を検討するでしょう。大城くんが移籍を希望すれば、セリーグならDeNAが名乗りをあげてもおかしくないと思います。来季は捕手の所属チームがガラッと変わる可能性もあるのではないでしょうか」(同・広澤氏)

デイリー新潮編集部