この記事をまとめると

■ジャカルタ市内には「トランスジャカルタ」という専用レーンがありBRTが走っている

■一般道には2017年から導入された「メトロトランス」という路線バスが走る

■ジャカルタではBEVバスとタッチ決済の導入による利便性の向上を実感できる

コロナ禍で一気に公共交通機関の電動化が進んだジャカルタ

 ジャカルタ市中心部には、「トランスジャカルタ」という専用レーンを走り、電車のように改札機をとおった先にあるプラットフォームから乗り込む、BRT(高速バス輸送システム)がある。ただし、大きな交差点などの一部は一般道路を走ることになり、一般的なバスのように交通渋滞などによる遅延も発生したりするので、「なんちゃってBRT」とも呼ばれている。

 筆者がクルマなどを定点観測するために訪れる、ジャカルタ市内中心部の目抜き通りには、中心部をトランスジャカルタが走り、その両脇が一般道路となっているが、その一般道路部分には「メトロトランス」という、日本での一般市内路線バスのようなものが走っている。

 メトロトランスは2017年から導入されたバスシステムであり、それまでバス停には停まらずに手を挙げればその都度停まり乗客を乗せていた「メトロミニ」や「コパジャ」といわれる従来のバスに代わるものとして導入された。

 乗り方は日本の路線バスと変わらず、バス停にバスが停車してバスに乗り込む。乗り込む際に「eマネー」と呼ばれる公共交通機関だけではなく、高速道路や駐車料金決済などに幅広く使えるICカードで料金を払うことになり、乗車時にタッチし、降りる時にもタッチすることになる。

 新型コロナウイルス感染拡大前の2019年にジャカルタを訪れたときは、ドイツ・ダイムラー製のICE(内燃機関)バスばかりだったのだが、2022年にコロナ禍後初めてジャカルタ市内を訪れると、中国BYD(比亜迪)製BEV(バッテリー電気自動車)バスが走り出していた。

 ちなみに2023年に訪れたときはタイミングが悪かったのか、BEVバスに乗ることはできなかった。

バス電動化でオペレーションも変えて利便性を高める新興国

 そして2024年にジャカルタ市内を訪れると、運行本数の少ない日曜日ということもあったのか、やってくるバスはいずれもBEVばかりであった。BYD以外で目新しかったのは、いずれも中国系となるが、ゴールデンドラゴン(SAG)ブランドと、SKYWELLブランドのBEVバスである。調べてみるとこの2ブランドのBEVバスは、ここ最近新たに導入された車両のようであった。

 バス愛好家を自称する筆者は、さっそく日本大使館近くのバス停でBEVバスがくるのを待った。しばらくしてやってきたのは、SAGブランドのBEVバスであった。乗り込むと座席に空きがある程度でそれほど車内は混んでいなかった。最後部に近い座席に座るとバスは発車した。

 以前ジャカルタで乗車したBYD製のBEVバスに比べると、車内に入るノイズが少なくなっており、車内はかなり静かなものとなっていた。トランスジャカルタの車両電動化はこれからのようだが、トランスジャカルタの車両に比べれば、メトロトランスのBEVは、当たり前なのだが静粛性が極めて高かった。

 いまのところジャカルタ市内ではメトロトランスにBEV路線バスを積極的に投入している様子。報道によると、台数を増やすだけではなく運行路線も増やしているとのことであった。ただ「予算的な都合もあり、思うようにBEVバスを増やすことができていない」といった話も聞いている。

 単なる車両電動化だけではなく、eマネー決済のみなどキャッシュレス決済も同時に進めている。タイの首都バンコクではBEVバスの導入に伴い、バス停に運行状況を知らせるディスプレイを設置するなど、「バスロケーションシステム」の普及も進んでいる。インドの首都デリーでもBEV路線バスは普及しているのだが、料金決済はQRコード決済のみとなっていた。

 海外では、単に車両を電動化するだけではなく、バスのオペレーションまでを変えようとしているように見える。それに比べると、日本でもBEVバスの導入はそれなりに進んでいるが、まだまだ試験導入段階のようにも見えるのは、それに伴って利便性を高めようという動きが見えないからなのかもしれない。