楽しい頑張りになるには「どうすれば今を楽しめるか」と考えてみることです(写真:foly/PIXTA)

【質問】
8歳、5歳、2歳の子がいる母親です。これまで子育てを頑張ってきましたが、日々のイライラが減らず、子どもたちがよくなっている感じがしません。4月になり、新しい生活スタイルになりますが、もっと私が頑張らないといけないと思っています。どのように頑張っていけばよいでしょうか。何かヒントがあれば教えてください。

仮名:新井さん

頑張れば頑張るほどうまくいかない?

「子育ては頑張るもの」という認識が世間にはあると思います。もちろん、子育てほど大変なことはありません。何しろゼロの状態から人を育てるのですから、それは楽なはずはありません。親御さんたちは日々、子育て奮闘の連続だと思います。筆者が主宰するカフェスタイル勉強会「Mama Café」ではこれまで延べ1万3000人の母親から子育て、教育相談を受けましたが、子育ての大変さは毎回感じています。そして皆さん、本当に“頑張っている”と思います。

しかし、この「頑張る」という言葉は大切な言葉ではありますが、何かしら悲壮感が漂う雰囲気を持つ言葉として受け取られがちです。

努力逆転の法則と言われるものがあります。これは「頑張れば頑張るほど、結果が逆方向へと進んでいく」というものです。何か事がうまく運ばないとき、このような実感を持ったことはないでしょうか。空回りしているという言葉はまさにこの現象です。この法則に従えば、子どもをよくしようと頑張れば頑張るほど、子どもがよい方向には進まないということになります。では、頑張るのでなければ、どうすればいいのでしょうか?

結論から先に言ってしまいましょう。

「子どもをよくしようと頑張るのではなく、どうやったら今を楽しめるかを考える」

いたってシンプルな結論です。

では始めに、なぜ頑張ると思うような効果が出ないかお話しします。

頑張るには「苦しい頑張り」と「楽しい頑張り」の2種類があります。通常使われている「頑張る」は前者の「苦しい頑張り」を指すことが一般的です。イメージとしては昭和的根性論、ねじり鉢巻きして頑張る感じです。嫌だけどやらなければならないときの努力がこれにあたります。

この「苦しい頑張り」は一時的で短期間であれば有効的なこともあります。しかし、長期間の継続を伴うことには向いていません。そんな苦しい状態が長く続くはずもありませんから。

しかし、頑張りにはもう一つ「楽しい頑張り」があります。

「苦しい頑張り」と「楽しい頑張り」

「楽しい頑張り」は実は本人には頑張っているという認識はありません。なぜなら、やりたくてやっているからです。でも、傍から見れば、「よく頑張っているね〜」と言われたりします。

例えば、昆虫が好きな子が毎日、昆虫図鑑を見たり、休日には公園に終日昆虫を探しに行ったりしている姿を見て、よく頑張っていると思うかもしれませんが、本人は何とも思っていないはずです。サッカーが好きな子が毎日サッカーの練習をしている姿を見て、「よく努力しているね〜」と思うかもしれませんが、本人はもっとやりたいと思っているはずです。絵を描くことが好きな子は、一日中でもイラストを描いていられますが、端から見ていると、随分と熱心で頑張っているなぁと思うかもしれません。

大人も同じです。自分が好きなことは我を忘れて夢中になっているのではないでしょうか。

つまり、「楽しい頑張り」は周囲から見て頑張っていると思われているのに対して、「苦しい頑張り」は本人が頑張っていると認識しているケースなのです。

では、子育てはどちらの頑張りでしょうか。おそらく実態としては、2つの頑張りが混在している形だと思います。子どもと遊んでいるときは楽しい頑張りで、子どもに時間を守らせることや、やらなければならないことをやらせるときは苦しい頑張りかもしれません。こうして子どもが刻一刻と成長していくなかで、親の負荷も徐々に減っていき、いつしか子育てが終わっていくのが現実だと思います。

しかし、そうはいうものの、子育ての印象は「大変」の一言です。ということは、苦しい頑張りの時間が多く占めているのではないかと思います。それをそのままの状態で乗り切ることも一つのあり方ですが、楽しい頑張りに振り替えることができるならば、子育てはまた違った印象になります。

楽しい頑張りになるには、「どうすれば今を楽しめるか」と考えるみることです。

言動を観察して、視点を変えてみる

例えば、2歳児のイヤイヤ期は有名ですが、それをうんざりした感情で受け止めるのではなく、次の行動をとってみます。

(1)イヤイヤと言うときと言わないときの違いを観察してみる

(2)日々どのように変化していくか観察してみる

つまり、「観察する」がキーワードになります。観察しているとき人は感情が出てきにくいものです。さらに観察したことを日記に記したり、ブログに書いたり、またはパートナーとシュアするなどアウトプットしていきます。すると1年経って見返すと、随分と子どもが成長したことも確認できます。

発明、発見とは人々が困っていることから生まれることが多いと言います。それと同じで、子育てで困ったら、そこから発見をしてみるのです。

例えば、子どもが頻繁に反抗するのであれば、その共通点を考えてみます。すると、あるパターンがあることがわかります。例えば、「子どもが反抗する前に必ず親が余計な一言を言っている」などです。それであればその一言をなくせば、子どもの反抗は減るはずです。このように観察することによって、ある種の“楽しみ”に振り替えることができるのです。

「苦しい頑張り」は力が入り、視野が狭くなります。すると観察ができません。自分が、頑張りそうになったら、「ちょっと待って。観察、観察」「どうやったらこれが楽しめるかな?」と言葉にしてみてください。すると視点が一気に変わり、楽しさがじわじわと出てくると思います。

子育ては本当に大変な一大“事業”だと思います。しかし、ちょっとした心がけ次第で、楽しさへと180度ひっくり返すこともできます。

「子どもをよくしようと頑張るのではなく、どうやったら今を楽しめるかを考える」をぜひ試してみてください。


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(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)