新入社員が「報・連・相」をうまくこなせるようになるには、どのように指導するといいのでしょうか?(写真:Taka/PIXTA)

「数字に弱く、論理的に考えられない」

「何が言いたいのかわからないと言われてしまう」

「魅力的なプレゼンができない」

これらすべての悩みを解決し、2万人の「どんな時でも成果を出せるビジネスパーソン」を育てた実績を持つビジネス数学の第一人者、深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を徹底的に解説した、深沢氏の集大成とも言える書籍、『「数学的」な仕事術大全』を上梓した。

今回は「新入社員」について取り上げ、新入社員が「報・連・相」をうまくこなせるようになる簡単なテクニックを紹介する。

「報・連・相」すらまともにできない新入社員

4月に入り、街は新入社員と思われるスーツ姿をたくさん見かけるようになります。人材育成の立場で仕事をする者として、その初々しい姿には無条件で心がときめきます。

一方で、彼らを迎える先輩社員たちに目を向けると、彼らを悩ませるあるテーマが浮かび上がります。そのテーマとは、配属された新人の指導です。


今回は数字に強い人材・組織を開発する専門家の立場から、「新人にはまずこれを指導しておけばOK」といえるテクニックをご紹介します。明日からすぐに指導に役立てることができるので、ぜひご活用ください。

最もよく聞くのは、新入社員が「報・連・相」をまともにできない、という悩みです。

ある中堅ビジネスパーソンが、「昨日はどんな仕事をしたのか、報告してもらえますか」と新入社員に指示したところ、

「資料作成をガッツリやりました」

という返事がきたといいます。

「ガッツリ」とは具体的にどれくらいなのかがわからず、ビジネスシーンで適切とはいえません。この中堅ビジネスパーソンも、思わず「ガックリ」きたようです。

上司や先輩への報告、連絡、相談。まず新人がコミュニケーションとして求められる基本中の基本です。昭和。平成。令和。時代は変わりましたが、これだけは変わらない普遍的なものでしょう。

新入社員の不適切な「報・連・相」にガックリきたとしても、正しい指導をしておかないと、いつまで経っても適切なコミュニケーションができる人材に育ちません

では、先の例はどのように訂正してあげればいいのでしょうか。

ビジネスにおけるコミュニケーションでは、数字の活用が求められます。できるだけ数字を盛り込んだ返答を考えてみましょう。

「資料作成をおよそ5時間やりました。A案件の資料は進捗率50%、B案件の資料は90%です。A案件は2日後、B案件は明日の午前中に完了予定です」

いかがでしょうか。「ガッツリやりました」よりもグッと良くなったとわかると思います。

しかし、この報告スタイルで「OK」と指導してしまうと、とにかく数字をたくさん用意し、それを羅列した内容で話すことが良いと勘違いしてしまうかもしれません。

「報・連・相」とは数字を伝える営みではありません。数字で伝える営みなのです。

ポイントは「情報→数字→情報」

そこで、即戦力に育成するためにもうワンステップ進めます。具体的には、「情報→数字→情報」の順で報告、連絡、相談をするよう指導してください。

私はこの「報・連・相」の方法を、情報で数字をサンドイッチ状態にする、「サンドイッチの法則」と表現しています。

詳しく説明します。まず、最初の「情報」では相手へのメッセージや結論のようなものを端的に述べます。いわゆる結論ファーストの考え方です。

しかし単に結論だけ述べて終わってしまうと、相手は「なんで?」「本当に?」「具体的には?」という疑問が生じます。ビジネスシーンではその疑問を解消するためにはたいてい具体的な数字が求められるものです。

そして最後に、補足や余談、あるいは相談事項などを述べるようにします。

まとめると、次のようになります。

情報 (主たるメッセージ)

数字 (根拠、エビデンス、具体化)

情報 (補足、余談、相談など)

「サンドイッチの法則」に合わせて先の例を修正すると、

「資料作成に注力した1日でした。具体的には、所要時間としておよそ5時間。それぞれの進捗率はA案件が50%でB案件は90%。A案件は2日後、B案件は明日の午前中に完了予定です。なお、A案件については少し悩んでいる箇所があるので、もし可能でしたらいまここでご相談したいのですがいかがでしょうか」

となります。先ほどよりもはるかに良くなったと感じるはずです。

このように、数字を情報でサンドイッチする、サンドイッチの法則を活用することでビジネスにおけるコミュニケーションの質が劇的に改善されます

新入社員の戦力化は、上司の指導力で決まる

重要なのはこれを徹底させることです。できれば4月など初期の段階で訓練させることをおすすめします。

もしこの型でのコミュニケーションになっていなければ、先輩や上司は「サンドイッチになっていないよ」と愛を込めて指導をしてあげてください。逆に適切なコミュニケーションができたときは(恥ずかしがらずに)ほめてあげてください。

そんなちょっとしたことで意欲が湧いたり、明日も会社に来て頑張ってみようと思えたり、この先輩からもっと学んでみたいと思うものです。

新入社員が戦力になるかどうかは、能力や時代背景で決まるものではありません。先輩や上司の指導力で決まります。そして、仕事ができる人ほど指導力が高いものです。

新入社員の戦力化は人材育成の専門家でも難しいと感じるテーマです。指導を任された方の「自分の仕事で精一杯。正直、勘弁してほしい」という本音は、痛いほどよくわかります。

とはいえ、誰しも新人だった時代があり、その時には先輩社員にさまざまな指導をしていただいたはずです。しかし、いざ自分がその立場になると、途端に面倒に思ったり、つい逃げてしまったりしてしまいます。

正論は読者に嫌われることを覚悟で申し上げますが、それは少しばかり勝手がすぎるように思います。恩送りという言葉がありますが、できることなら誰かからいただいたものは誰かに渡すことができる大人でいたいものです。

先輩社員の皆様、頑張りましょう。私も頑張ります。

(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)