友だちとの会話に自信がない人は、聞き上手になればいいのです(写真:IYO/PIXTA)

春休みが終わって新しい学年に進級するお子さんの中には、「クラスの輪に溶け込めるだろうか」と心配になっているケースもあるでしょう。そんな時、親が子どもにできるアドバイスはあるでしょうか。

子どもの小学校生活で、「仲間に入りたい」「嫌なことを言わないでほしい」「教えてほしい」「意見を言いたい」など、シチュエーションにあわせた言い方と、その考え方を紹介している齋藤孝さんの新刊『こんなときどう言う?事典』より一部抜粋、再構成してお届けします。

相手に話してもらえばいい

<自分が話をしていても楽しくない気がして話が上手な人っていいなあと思います>

基本)「へえ」「それでどうなったの」とリアクションを上手にとろう

できる)相手ががんばっていることについて質問しよう

これだけでもOK)おもしろそうに聞くだけでも大丈夫!

<自分から話さなくても上手に話を聞けばもりあがるよ>

会話をしていても、すぐに話が止まってしまうと、「自分は会話がヘタだな」と思ったりしないかな? そんなときは落ちこまずに、相手に話してもらうようにすればいいと思います。

「今日、寝坊しちゃって」と相手が話したら、「ぼくも寝坊したよ」と自分の話にしてしまうのではなく、「へえー! それでどうなったの?」と、相手の話が続くような受け答えをしてみてほしいな。すると相手も、「それがね、目覚まし時計が壊れてて……」と、どんどん続けて話してくれるんです。

そのとき、おもしろそうに聞くようにすることも大切です。正直いって、人の話はおもしろいものばかりじゃないよね。「つまんないな」「それ、前も聞いたよ」みたいな話だって多いです。

それでも、「つまんない!」なんて言わずに、「へぇー。そうなんだ!」「それでそれで?」と、おもしろそうに聞いてみてほしいんだ。すると、相手は「この人、話しやすいな」と思ってくれますし、話そのものが本当におもしろくなったりもするんです。

<質問をしてみよう>

もう一つ。「質問する」ことでも話は盛り上がります。

相手がしていることに、「それ、どうやってやるの?」と質問してみましょう。

質問するというのは、相手の興味やがんばっていることに寄りそうということなんです。たとえきみに興味のないことであっても、「それってどうやるの?」「これってどういうこと?」と質問することで、相手は楽しく話してくれる。だから、どんなことにも興味をもつことが、話を聞くうえではとても大切なのです。

ただし、質問するにしても、相手のいやなことについてたずねるのはやめようね。大切なのは、「相手がよろこんで答えてくれそうなことを見つけて、質問する」ことです。

POINT 聞く人がうまいから話はおもしろくなる!

軽く声をかけてみる

<友だちになりたい。なんて話しかけようかな……>

基本)「ねえねえ、何が好き?」と質問しよう

できる!)「いっしょにやろう」と声をかけよう

これだけでもOK)相手が話し始めたら「おもしろそう!」と聞いてあげよう

<「ねえねえ」って声をかけてみよう>

友だちになるためのきっかけは、やっぱり話をすることかな。 でも、いきなり「友だちになってください!」なんて話しかけると、相手もとまどってしまうかもしれないね。

ぼくのおすすめとしては、「ねえねえ」という感じで、軽く声をかけてみることです。たとえ一度も話したことがなくても、「ねえねえ」と言われたら、思わず「なに?」「どうしたの?」って答えますよね。

そうしたら、「何か好きなものある?」と、相手の好きなものを聞いてみてください。または、「○○っていうアニメ、好き?」「じゃあ、〇〇っていうユーチューブ動画は好き?」といったように、きみが好きなものを二つぐらい言ってみてほしいんだ。もし、「わたしも好き!」と言ってもらえたら、好きなものの話題でもりあがれるので、一気に友だちになれるはずだよ。


『こんなときどう言う?事典』より引用

<相手が好きなものに「おもしろそう!」と言ってあげる>

もし、相手の好きなものをきみが知らなかったとしても、「それっておもしろそう! どんなものか教えて」と言えば、「知らないけれど興味はある」という気持ちを伝えられて、話を続けられます。

ここで大切なのは、相手の好きなものに、「いいね」と言ってあげることなのです。それだけで、相手はうれしくなるものなんだ。

そして「どんなところが好きなの?」なんて聞いてあげれば、相手は「自分の好きなものを応援してくれる人なんだ」と思って、たくさん話をしてくれますよ。

反対に、きみが「○○が好きなんだよね」と言ったときに、相手から「興味ない」と言われることもあると思います。そんなときには、「じゃあ、何が好きなの?」と、聞いてみましょう。

どんな場合でも、相手の話を否定せずに「いいよね」と認めたり、「何が好きなの?」と好きなものを聞いたりすることで、会話の流れをつくることが、友だちになるためのいい方法だと思います。

いっしょに何かをやろう

すでに友だちになっているけれど、まだちょっとよそよそしくて、「もっと仲よくなりたいな」なんて思っているなら、何かかんたんにできそうなことについて、「いっしょにやってみない?」と声をかけてみたらどうかな?


たとえば、授業で理科室や音楽室など、教室を移動するときに、「いっしょに理科室に行かない?」などとさそってみると、それだけでとても仲のいい友だちのような感じになります。

「さそっても、断られないかな?」と不安になるかもしれないけど、その場ですぐできることであれば、断る人は、あまりいないと思います。だいたいの人は、「うん。いいよ」「いっしょにしよう」と言ってくれるはずです。

それで、実際にいっしょに遊んだり、教室を移動したり、勉強をしたりすると、それだけで仲のよさのレベルがグンと上がっていくものなんです。

POINT 相手の好きなものを大事にしよう

(齋藤 孝 : 明治大学教授)