Appleが長らく開発を続けてきた自動運転車開発プロジェクトが、ついにキャンセルされたことが2024年2月末に報告されました。これまでさまざまなウワサが報じられてきたAppleの自動運転車ですが、外観デザインがどんなものを計画していたのかが、Bloombergの報道で明らかになっています。

What Did the Apple Car Look Like? Inside Apple’s Planned Self-Driving Vehicle - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2024-03-10/what-did-the-apple-car-look-like-inside-apple-s-planned-self-driving-vehicle-ltlic8vt



Appleは収益を多様化し、iPhoneを超える新たな収益源を確保するために、自動運転車開発プロジェクトをスタートさせました。当時、シリコンバレーにとって自動車市場、特に自動運転技術の分野は次の注目市場になると目されていました。これはテスラなどの台頭により、自動車が本質的には車輪のついたコンピューターになりつつあったためです。

しかし、Appleの自動運転車開発プロジェクトは経営陣の優柔不断やリーダー間の意見の相違、技術的課題、自動車業界の冷酷な現実などにより、最終的にキャンセルされることとなりました。Appleのティム・クックCEOと経営陣はそもそも自動車を製造するかどうかを含め、どのような戦略を追及するかについて意見が分かれていました。他にも、車内の個々の装置の細部などについても、意見が分かれ続けていた模様。なお、最も大きな争点は「どのレベルの自動運転システムを開発するか」だったそうです。

Appleの自動運転車の内装はプライベートジェットやリムジンで見られるようなデザインで、4人が快適に乗車できるよう設計されていました。また、中央に巨大なモニターを設置して動画を再生したりFaceTimeしたりすることができる内装や、天井からiPadサイズのディスプレイを吊り下げる内装なども提案されていた模様。他にも、空気の流れをキャビンの側面に沿って押し出すという特殊な空調システムも考案されていたそうです。

ジョニー・アイブ氏が考案したAppleの自動運転車の初期外観デザインは、1950年代のフォルクスワーゲンのマイクロバスを現代に再現したようなもので、Apple社内では「Bread Loaf」と呼ばれていた模様。

その後に考案された2番目の自動運転車のデザインは、2017年に発表されたフォルクスワーゲンIDバスのプロトタイプとほぼ同じようなデザインだったそうです。なお、このデザインはフォルクスワーゲンがIDバスのプロトタイプを発表する前にApple社内で発表されていた模様。



2020年頃に発表された3番目の自動運転車デザインは、電気自動車メーカー・CanooのLifestyle Vehicleのような丸みを帯びた未来的なデザインのバンでした。色合いを調整できるダークブラックの窓を搭載しており、サンルーフはすべてガラス製、外装は真っ白になっていた模様。前後のデザインが同じで、常に前進しているように見え、レベル5の自動運転を搭載することを計画されていました。



その後もAppleの自動運転車のデザインの基礎はBread Loafのままでしたが、ドアをスライドドアからガルウィングに変更するなど、細かな変更が加えられていた模様。当初はレベル5の自動運転システムを計画していたAppleですが、最終的にはこれがレベル2にまで引き下げられています。

Bloombergは「Appleは新しい生成AI機能に集中するため、社内のリソースを解放すべく、自動運転車開発プロジェクトをキャンセルしたことは間違いではありません。しかし、プロジェクトのキャンセルは依然として大きな失望であり、恐らく今後数十年間にわたってAppleの歴史を変えることになるでしょう」と指摘しています。

なお、Appleの自動運転車開発プロジェクトの年表は以下の記事にまとめられています。

「Apple Car」開発プロジェクト年表、誕生から頓挫まで - GIGAZINE