EUによる「デジタル市場法」(DMA)の規制が2024年3月7日(木)からスタートしました。DMAでは大規模プラットフォームを「ゲートキーパー」に指定し、公正な行動を求めています。メッセージングサービスの分野では「Facebook Messenger」と「WhatsApp」がゲートキーパーに指定されていることから、両サービスを展開するMetaでは、サードパーティー製アプリとの相互運用性確保に取り組んでいます。

Making messaging interoperability with third parties safe for users in Europe - Engineering at Meta

https://engineering.fb.com/2024/03/06/security/whatsapp-messenger-messaging-interoperability-eu/



The EU Digital Markets Act is here.

https://element.io/blog/the-eu-digital-markets-act-is-here/



DMAによって、Facebook MessengerとWhatsAppには、サードパーティー製メッセージングアプリと相互運用可能にすることが求められます。

技術要件やセキュリティ要件など一連の資格を満たしたサードパーティー製メッセージングアプリにおいて、相互運用性を有効にすることを選択したユーザーは、Facebook MessengerやWhatsAppとメッセージの送受信を行うことが可能になります。

Metaは2022年から欧州委員会と協力し、ユーザーのセキュリティやプライバシー、安全を最大化する方法で相互運用性を実装してきたとのことで、DMAが施行された現地時間2024年3月7日にサードパーティー製アプリのプロバイダーに向けて、まずはWhatAppのリファレンスオファーが公開されています。追って、Facebook Messengerのリファレンスオファーも公開予定となっています。

Metaによると、相互運用を行うにあたってサードパーティー製アプリのプロバイダーはFacebook MessengerおよびWhatAppと契約を結び、相互運用実現のための協力が必要だとのこと。Metaはリクエストから3カ月以内に相互運用を可能にする準備を終える必要がありますが、機能公開までに時間がかかる可能性があると説明しています。

すでにFacebook MessengerやWhatAppと相互運用を行うために取り組んでいるのが、リアルタイム通信プロトコル「Matrix」を採用したフリーのオープンソースメッセージングアプリ「Element」です。

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Elementは、有料機能である「ブリッジ接続」によってDiscordやSlackとの相互運用も可能です。

セキュアなチャットアプリ「Element」の有料機能「ブリッジ接続」で「Discord」「Slack」のチャットを相互転送してみた - GIGAZINE



Elementのマシュー・ホジソン氏によると、2023年末からMetaと協力して相互運用性についてのテストを行っており、DMA APIを介したMatrixとWhatsAppとの1:1チャットを、エンドツーエンド暗号化を維持したまま統合することに成功しています。また、WhatsAppとの相互運用性も正式にリクエストしているとのこと。

ただ、問題点が残されているため、既存の統合を有効にすることはできていないとホジソン氏は述べています。

1点目の問題は「到達可能性」です。EU市民にとってDMAの相互運用性がデフォルトでオンなのかオフなのか、WhatsAppのユーザーが事前に明示的にオプトインしなくてもElementユーザーがWhatsAppユーザーにメッセージを送ることができるのかどうかという問題です。

2点目の問題は、不正利用防止メカニズムのプライバシーへの影響です。WhatsAppは、Matrixでいうところの「ブリッジ接続」を、「プロキシ」または「中間」アーキテクチャという形でサポートすることで、エンドツーエンド暗号化を維持しつつ、既存のMatrixトラフィックをWhatsAppのプロプライエタリAPIに変換します。しかし、スパムやTCPフィンガープリントの詐欺からユーザーを守るために実装する予定だという「追加要件」の内容が不明で、Matrixユーザーの個人を特定可能なデータをMetaに公開するという選択肢は明らかに現実的ではないと、ホジソン氏は指摘しています。

ただ、MetaはDMA APIのテスト中、Elementに建設的に協力しフィードバックを行ってくれていたとのことで、ホジソン氏は「少なくとも、これはオープンサードパーティーAPIによっての大きな前進であり、長期的に、真のオープンな標準ベースの相互運用性に向けた一歩になることを期待しています」と述べています。