弁護士か、コンサルか。思い悩む学生に、安井さんはどうアドバイス?(写真: Fast&Slow / PIXTA)

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人を助けたい、社会を変えたいという思いで東大に入り、なんとなく弁護士を目指していました。しかし、そんな中で2年生の終わりを迎え、いつの間にか予備試験を勉強してきた学生たちに後れをとってしまっています。

現在コンサルの就活に踏み切るべきなのか、弁護士に「なれない」リスクを背負ってまで勉強をするべきなのか、わからなくなってきました。

自分は、たくさん働きながら、自己実現をしたい、社会を変えたいという思いがあります。そういう意味では、弁護士もコンサルも魅力的な職業だと感じています。 コンサルというやりがいのある仕事をしてみたいと思う反面、弁護士になりたかったという「後悔」が生まれてしまうのではないかという怖さがあります。

その一方で、リスクを背負ってまで弁護士になりたいか、と言われるとわからなくなってしまいます。思ったとおりの成績が出せなければ、望み通りの事務所には就職できない可能性もあるのと、法学の勉強自体は、あまり得意ではないと自覚しているからです。 就活までの期限が差し迫ったなかで、自分で納得して職業を決めたいのですが、決めあぐねています。

FK 学生

目標が漠然としていないか


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ご自身がやりたいことや、成し遂げたいことをより具体化したうえで、その実現のための選択肢を考えたほうがよいでしょう。

FKさんは「なんとなく弁護士を目指して」と書かれていますから、おそらく目標などが漠然としているため、手段である職業選びも漠然としてしまい、自分自身の選択に自信が持てない、ということなのだと思います。

目的や目標が曖昧であるがゆえに、その実現のための手段を絞り込むことができない、という状態とも言えると思います。

頂戴した相談に書かれている、「ヒトを助ける」とか「社会を変える」という目標自体は素晴らしいのですが、やはりどうしても漠然とした感じがしてしまいます。

そうではなく、「どのようにして、ヒトを助けたいのか」や、「どのようにして、社会を変えたいのか」などと、より具体的に考えたほうがよいでしょう。

目標や目的、すなわちやりたいことが明確であればあるほど、その実現のための手段も、自ずと明確になるものです。

FKさんはまだ学生ですから、当然将来に関してはいろいろな選択肢がありますし、大いに悩むべき時期です。

むしろ悩めば悩むほど、将来に対する自分自身の選択肢や決断に対して納得がいくようになりますから、大いにそうするべきです。

とは言え、いつまでも悩んでいても仕方がありませんから、冒頭に申し上げた通り、「夢の具体化」を図っていったほうがよいでしょう。

まったく将来何をしたいのかがわからない、といケースであれば、やるべきことはほかにあるのですが、FKさんの場合はある程度やりたいことの方向性は見えていますから、後は具体化するだけです。

目標をどんどん具体化して考える

例えば「社会を変える」。

素晴らしい目標ですし、学生でありながらそのような志を持てること自体、優秀な証しだと思います。

後はもう一歩進んだ、具体化が必要です。

例えば、の例ですが、「社会を変える」には「社会」という要素と「変える」という要素の2軸に分解できます。

ではその「社会」とは具体的に何を指すのか。どの単位の社会(世界、地域、国、コミュニティー、業界、会社などの特定の集団や組織、または特定の問題、など)を想定するのか。

当然それによって目指すべき手段としての職業や、自分の立ち位置は変わります。

そして「変える」。

これも、具体的な社会問題、または特定の問題に関する変化を狙うのか、何をもって変化とするのか、そのアプローチは?など、考えることはさまざまあります。

この2軸、「社会と変化」をより具体化したうえで、ではその実現のための手段として、どのような職業や関わり方があり、その中で自分は何を選択するべきか、を考えたほうがよいでしょう。

そしてもう1つ。

弁護士について「思ったとおりの成績が出せなければ、望み通りの事務所には就職できない可能性もある」とFKさんは書かれていますが、これはどの職業に関してもそうです。

例えばFKさんはコンサルと弁護士の2択で現在は悩まれています(なお、ここではなんのコンサルなのかが不明のため、以下はいわゆる「戦略コンサル」という前提で書きます)。

当然認識されているように、弁護士も非常に競争の激しい職業ですし、ライバルも多いですから、成績や成果、結果によって、携わることのできる案件も変わってきます。

一方で戦略コンサルはどうか、というとこれまた状況は一緒です。

ご存じのとおり、人気ファームには非常に多くの学生が職を求めるのに対し、採用数は極端に少ないですから、入り口の段階でも競争は熾烈です。

仮にいったん職を得たとしても、ファーム内でのアップオアアウト(昇進できるか、できずに退職せざるをえないか)や成績などによって携わる案件のスケールや内容が異なってくることに加え、どのファームに入るのか、転職を考えるかどうか、など、諸々仕事内容や待遇、成長性や将来性も変わってきます。

さらに言うと、戦略コンサルという職業の性質上、どうしても「その後」のキャリアを考えるべきなのですが、当然「その後」の選択肢においても、コンサル時代の実績などが大きな影響を及ぼすことは言うまでもありません。

どの職業を選んでも自分次第

つまり、どの職業を選んでも「要は自分次第」という側面はあり、その意味では「安泰になる職業なんてない」、ということです。

であるからこそ、学生時代に大いに悩み、自分自身のそのときの選択肢に対して、将来後悔することのないようにしたほうがよいでしょう。

そしてそれには夢の具体化などが必要なのは、すでに述べたとおりです。
どんな職業でも自分の夢を叶えるにあたって、困難にぶつかるときや、迷うときがあることは当たり前ですから、その困難などを乗り越えるのに大切なことは、どれだけ自分がその夢に対して真剣か、です。

夢や目標に対して真剣であればあるほど、困難や難局にぶつかっても、道を切り開くことできるハズです。

つまりは諦めない力の源泉となりうる、ということです。

これが夢や目標に対しての真剣度や熱量が小さかったり、漠然としていたりすると、「諦める」という選択肢がつねに頭の片隅に浮かんでしまうものです。

戦略コンサルにせよ弁護士にせよ、激務ですし競争が激しく、上に行けるのは、ほんの一握りなのはすでにご存じのとおりです。

戦略コンサルも、実績を出し続け、その後のキャリアにつなげている方のほうが、少数派です。

目指す道に対してどれだけ真剣になれるか

違いはいろいろとありますが、根本はどれだけ真摯に職業と向き合っているか、つまりは自分の目指す道に対して真剣か、どれだけ熱くなれるか、です。

職業上クールに見える方も多い両業種ですが、成功している方は、クールなマインドや態度とは裏腹に、ホットなハートを待ち合わせているハズです。

弁護士になりたい、ということに対して、真摯な学生はすでに司法試験対策を早くから進め、在学中に合格をする強者もいます。

そういったいわゆるガチ勢、真剣組に対して、FKさんのスタンスで対抗できるかどうか。

そういったことも考え、では自分が熱くなれる対象は何か、をより具体的に考えたほうがよいでしょう。

そのような考え方で、FKさんが今お持ちの目標や夢をより具体化し、その実現のための手段も具体化し、夢に向かっての第一歩を早めに踏み出すであろうことを応援しております。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)