「急性リンパ性白血病の生存率」はご存知ですか?症状についても解説!【医師監修】

写真拡大

「急性リンパ性白血病の生存確率はどのくらい?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
本記事では、急性リンパ性白血病について以下の点を中心にご紹介します。

・急性リンパ性白血病とは

・急性リンパ性白血病の症状

・急性リンパ性白血病の生存率

急性リンパ性白血病の生存率について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

急性リンパ性白血病とは

血液幹細胞は通常、赤血球、顆粒球、血小板などに分化する骨髄性のものと、リンパ節でT細胞やB細胞に分化するリンパ系のものに分かれます。急性リンパ性白血病になると、リンパ系の細胞に分化すべき幹細胞に異常が生じ、それが白血病細胞(がん細胞)に変化し、急激に増殖してしまいます。このように、急性リンパ性白血病は、骨髄で白血病細胞が増殖する病気であるため、脳や脊髄などの中枢神経系に浸潤しやすいという特徴があります。また、特に子供の発症率が高いとされています。

急性リンパ性白血病の原因

急性リンパ性白血病は、その発病原因が、多くの場合不明である複雑な疾患です。健康な方にも突然発症する可能性があり、また子供においてはいくつかの遺伝子変異が関与していることが知られています。しかし、これらの遺伝子変異を持つ子供すべてが急性リンパ性白血病を発症するわけではなく、遺伝的要因だけで発症することは稀です。急性リンパ性白血病の他の原因としては、ウイルス感染、過去の放射線治療、特定の化学物質への曝露、また他の悪性腫瘍の治療で使用された抗がん剤などが挙げられます。しかし、これらの因子がどの程度急性リンパ性白血病の発症に関与するのかは明確ではありません。

急性リンパ性白血病の症状

急性リンパ性白血病にはどのような症状があるのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。

貧血

白血病細胞が骨髄や末梢血中で異常増殖することにより、正常な赤血球の生成が妨げられ、その結果、貧血が引き起こされます。貧血による症状としては、倦怠感、めまい、ふらつき、動悸、息切れ、むくみなどが挙げられます。さらに、呼吸困難や頻脈、場合によっては胸痛の症状があらわれることもあります。これらの症状は急性リンパ性白血病の進行を示す重要なサインであり、早期の医療介入が必要です。

血小板減少症

血小板減少症は、血小板の数が正常値よりも著しく低下する状態を指し、鼻血や歯肉出血、皮下出血などさまざまな出血症状を引き起こします。血小板減少症は月経過多の原因となることもあり、女性は注意が必要です。さらに、血尿や消化管出血は比較的まれですが、重篤な場合には、頭蓋内出血や腹腔内出血などの自然出血が見られることがあります。

急性リンパ性白血病の生存率

ここでは、急性リンパ性白血病の生存率を、子供と成人の場合に分けて解説していきます。

子どもの場合

約80%の子供において根治が期待されており、全体で約98~99%の患者が完全寛解に達しています。完全寛解とは、顕微鏡レベルで白血病細胞が消失した状態を指し、長期生存への重要なステップです。患者の生存率は、診断されたときの年齢、白血球の数、白血病細胞の性質、治療への反応の程度など、さまざまな要因によって変化します。このように、子供の急性リンパ性白血病治療は近年大きな成果を上げていますが、患者個人の特徴に応じた適切な治療法の選択が重要です。

成人の場合

成人における急性リンパ性白血病の治療は、子供の場合と比較して困難を伴うことが多く、5年生存率は15~60歳で約30~40%です。また、患者の約60%が治療後に再発するとされています。この治療の難しさは、成人の患者の白血病細胞の特性や、年齢に伴う身体の反応性の違いに起因する可能性があるとされています。治療においては、既存の治療法の改善と新たな治療法の開発が重要となり、これにより生存率の向上が期待されます。しかし、現状では、成人患者の長期生存率は依然として問題となっており、継続的な医学研究と臨床試験が求められています。

急性リンパ性白血病の治療方法

急性リンパ性白血病を発症した場合、どのような治療を受けるのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。

寛解導入療法

寛解導入療法は、急性リンパ性白血病治療の初期段階で重要な役割を果たします。この治療の主な目的は、白血病細胞を減少させ、患者の症状を軽減することです。治療には、プレドニゾロンやデキサメタゾン、ビンクリスチン、L-アスパラギナーゼ、アントラサイクリン系などの薬剤が4~5週間にわたり投与されます。治療に使用される薬剤は、フィラデルフィア染色体の有無、患者の年齢、全身状態などに基づいて選ばれます。若年者の場合、子供に使用される抗がん剤との組み合わせで、一部の薬剤を増量することもあります。さらに、フィラデルフィア染色体が存在する場合、イマチニブやその他の分子標的薬が基本の薬剤組み合わせに加えられます。イマチニブは、効果が認められている第1世代の薬剤であり、耐性が生じた場合には、第2世代や第3世代の薬剤が使用されます。これらにはニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブなどが含まれます。また、白血病細胞が中枢神経系に浸潤するのを防ぐため、メトトレキサートなどを脳脊髄液に直接注射することもあります。

強化療法

強化療法は、寛解導入療法の直後に実施されます。この治療法の主な目的は、既に減少した白血病細胞をさらに削減することです。まず早期強化療法が実施され、寛解導入療法で使用されていなかった新しい薬剤が投与されます。特に重視されるのは、薬剤が届きにくい中枢神経系への白血病細胞の浸潤を予防するための、メトトレキサートを含む髄注療法や点滴による投与です。強化療法は通常、約8~10ヶ月の入院を要します。

維持療法

維持療法は、白血病細胞の根絶と再発の予防を目的としています。この治療は、メルカプトプリンとメトトレキサートの2種類の内服薬を基本とし、メルカプトプリンは毎日、メトトレキサートは週に1度服用されます。維持療法の期間は患者によって異なりますが、一般的には1~2年間の治療が推奨されます。治療終了後は、完全寛解が維持されているかを検査で確認し、治癒が確認されれば経過観察に移行します。全身状態や年齢、病態によって通常の治療が困難な場合は、薬剤の調整や造血幹細胞移植などが検討されます。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、特に予後が悪いと判断される染色体や遺伝子の異常が見られる場合や、初期治療の反応が不良のために再発リスクが高いと考えられる場合に検討されます。例えば、初診時の染色体分析で低二倍体(46本の染色体が44本以下)などの異常が確認された場合、通常の化学療法だけでは不十分と判断され、造血幹細胞移植が提案されることがあります。また、寛解導入療法開始後1ヶ月たっても寛解に至らない場合や、再発時に高リスクと判断された場合にも、この治療法が検討されます。適合するドナーが身近にいない場合は、日本骨髄バンクがドナーを探す手助けをしてくれます。移植が望ましいかどうか、またバンクへの登録方法などについては、担当医に確認することが重要です。

「急性リンパ性白血病」についてよくある質問

ここまで急性リンパ性白血病の生存率や症状などを紹介しました。ここでは「急性リンパ性白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

急性リンパ性白血病の治療期間はどのくらいですか?

甲斐沼 孟(医師)

治療の内容と患者の状態によって異なりますが、一般的な治療期間は、約1年半から2年程度です。初期段階では、8~12ヶ月の入院が必要な治療がなされます。この期間中、患者は全ての時間を病院で過ごすわけではなく、治療の合間に外泊や一時的な退院もできます。学齢期の患者は、病院内の学級で治療中も学習を続けられます。入院治療が終わると、維持療法として1年~1年半の飲み薬治療に移行し、定期的に外来診療を受けます。この期間中に、患者は学校や幼稚園、保育園に復帰できます。治療後、約5年間再発がなければ完治とみなされます。急性リンパ性白血病の治療は特に若年層での治癒率が高く、約80%の患者が治療に成功しています。

急性リンパ性白血病の治療後に気をつけることはありますか?

甲斐沼 孟(医師)

退院後は、入院生活による筋力の低下が見られることが多いため、特に注意が必要です。通学や仕事など日常活動を再開する際は、最初は短時間から始め、徐々に活動時間を増やしましょう。これは、体力の回復を促し、日常生活へのスムーズに復帰するためです。また、定期的な健康診断も重要で、体調に何か変化があれば担当医に相談することが推奨されます。

編集部まとめ

ここまで、急性リンパ性白血病の生存率についてお伝えしてきました。急性リンパ性白血病の生存率の要点をまとめると以下の通りです。

・急性リンパ性白血病は、血液のがんの一種で、白血球の前駆細胞であるリンパ系の幹細胞に異常が生じることで発生する

・急性リンパ性白血病の症状としては、貧血や血小板減少症が挙げられる

・急性リンパ性白血病の5年生存率は、15~60歳で約30~40%である

「急性リンパ性白血病」と関連する病気

「急性リンパ性白血病」と関連する病気は1個あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

血液内科の病気

リンパ芽球性リンパ腫

リンパ芽球性リンパ腫は、リンパ系の幹細胞が未熟な段階でがん化し、異常に増殖する疾患です。このがんは、主にリンパ節などで増殖し、急性リンパ性白血病と異なり、骨髄浸潤の割合が25%未満であるのが特徴です。

「急性リンパ性白血病」と関連する症状

「急性リンパ性白血病」と関連している、似ている症状は13個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

発熱

大量発汗

貧血

脱力感

疲労

蒼白

息切れ

動悸

頭痛

嘔吐

視力障害

骨痛

関節痛

これらの症状は、白血病細胞の異常増殖に伴う正常血液細胞の減少と、臓器への浸潤によるものです。そのため、異常を感じた場合は、すぐに医師の診察を受けることが大切です。

参考文献

急性リンパ性白血病(がん情報サービス)

急性リンパ性白血病(ALL) Q&A│小児がん(国立成育医療研究センター)