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はじめに

ポルシェ911ダカールに、多くの説明はいらない。ヴァイザッハのエンジニアが、996世代のスーパーカップ・レースカーをロードゴーイングカーに仕立て直したGT3以来、もっとも意義深い市販911のルールブックの再解釈だ。25年近く前に登場したGT3は、結果として911のモータースポーツ由来のDNAを象徴するモデルとなった。

【画像】写真で見るポルシェ911とライバル 全16枚

では、今回のテスト車はと言うと、それ以上に着想の源が明らかだ。1984年、1万2000kmの悪路を走破し、ポルシェにパリ−ダカールの勝利をもたらした、大幅な改造を受けたGシリーズの911である。燃料タンク容量は270L、マニュアル操作のロッキングセンターデフを備え、ホイールのトラベルは300mm近い。ただし、エンジンはロードカーとたいして変わらない3.2Lフラット6。953として知られるモデルである。


テスト車:ポルシェ911ダカール    JACK HARRISON

その後、これにつづいたのが959パリ−ダカール。見るものすべてにサプライズを与えた、もっとも困難な悪路レースを勝ち抜き、953以上に有名なモデルとなったクルマだ。これらへのオマージュである911ダカールは、2500台の限定生産となる予定だ。

少なくとも911というクルマの性格を考えれば、このオフローダー仕立てはきわめて特殊だとも、これまでにないほど自由な発想の特別仕様車だとも言える。最新のGT3RSは、サーキット向け市販911の能力がどこまで行けるのかを再定義し、S/TはRSの厳密さを緩めて公道向けに仕立てたモデル。スポーツクラシックは、MTで後輪を駆動するターボにすぎない。

その点、ダカールは、パッと見でも下回りの保護パーツやカイエンのような地上高、オールテレインタイヤなど、911らしからぬ装備で悪路走破性を高めている。かつてパリダカに挑んだ、特別生産の911たちのように。

では、現代のライバルと比べた場合にはどうか。ロードカーとして、このクラスの上位に食い込む、あるいはトップを脅かすことができるのだろうか。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

911の限定車は多すぎて、似通ったものも少なくないので、全部間違えずに見分けられるのはよほどの911好きくらいだろう。そんな中、見間違いようがないものを挙げるなら、このダカールが筆頭だ。カレラ4GTSをベースに、最低地上高は50mmアップし、黒いプラスティックのホイールアーチクラッディングや独自のカーボンFRPスポイラーが独自のスタイリングに寄与する。

サスペンションには油圧アクチュエーターが備わり、さらに30mmの車高アップが可能。合計191mmの地上高は、もっとSUV的なフェラーリ・プロサングエを上回る。それよりダカールに似た仕立てのランボルギーニ、ウラカン・ステラートでも最大171mmだ。この地上高は、ラリーとオフロードの各走行モードを選ぶと自動的に最大値まで上がるが、ダッシュボードのとグルスイッチでの車高調整も可能だ。


カーボンのリアスポイラーや牽引フック、なにより高い地上高により、後ろからでも特別な911であることを主張する。    JACK HARRISON

その最大地上高は、170km/hまではキープされる。無論、その速度をその車高で走るのはかなり度胸がいる話だが。

スプリングは当然ながら、一般的な911に比べてかなり長く、ポルシェがいうにはレートが「かなり低い」とのこと。数々の最新911より明らかにスポーティさが薄らいだセッティングだ。とはいえ、速さと実用性を追求した最新911譲りのアイテムも備わっている。セミアクティブダンパーやアクティブスタビライザー、後輪操舵は標準装備で、ブレーキベースのトルクベクタリングも用いられる。ただしそれらは、ガラスのようにスムースな路面のワインディングではなく、濡れた草地やぬかるんだ林道を想定したチューニングが施されている。

リアのエンジンカバーを開けても、上面のみしか姿を見せないエンジンは3.0Lツインターボの水平対向6気筒。GTS仕様のチューニングで、480ps/58.1kg−mを発生する。トランスミッションは8速DCTで、各ギアレシオとファイナル比は同じギアボックスを用いる他の911と共通だ。それでも、最高速度が240km/hにとどまるのは、ピレリのオールテレインタイヤの耐用速度を考慮した結果だ。

吸気系や冷却系は、オフロード向けに手を加えられた。アップレートしたエアフィルター、よりパワフルなファンモーターとオルタネーターはターボ用だ。エンジンマウントはGT3からの流用で、締結剛性を2倍に高め、底付きのリスクを防いでいる。

フロントで28mm、リアで15mm拡大したトレッド、数々のグレードアップしたハードウェアなどにより、カレラ4GTSよりかなり重そうなダカールだが、スペック表上ではその差10kgに収まっている。バッテリイヤガラスの軽量化、カーボンFRPのボンネットとリアスポイラーで軽量化を図ったことは確かだ。そうそう、リアシートも排除した2座仕様であることを、危うくお伝えし忘れるところだった。

内装 ★★★★★★★★☆☆

このダカールで、ポルシェがもっと大胆になってもよかったのではないか、と多くのテスターが思ったのがインテリアだ。結局はオプション込みでも20万ポンド(約3720万円)の限定車なのだ。アルカンターラ的なポルシェが好むテクスチャーのレーステックスを多用して特別さを演出し、カーボンシェルのバケットシートや、オプションのガッシリしたハーフケージで本気ぶりを示してはいるが、しょせんは正真正銘のラリーレイドスペシャルだと思わせてくれる部分がほとんどないのだ。

とはいえ、992世代の911らしく、基礎はしっかりしている。エクステリアはゴツい見た目だが。アスレティックなドライビングポジションはGT3のそれと大きくは変わらない。スイッチ類の動きは総じて歯切れ良く、プラスティック類は高価そうで、スムースレザーやレーステックスとのコンビネーションで高級感も十分。外観がダサく思えても、室内は贅沢な感じがする。小物類の収納スペースは多く、視認性はすばらしい。


992世代の美点と、スウェード調素材やスムースレザーによる高級感はあるが、それは同時に、造形や使い勝手からは、これが特別仕立ての911に過ぎないこともよくわかる。    JACK HARRISON

ラリースポーツパッケージをオーダーしようというなら、注意点がある。ダカールは現行911の中でもとりわけ多用途性や使い勝手に優れたモデルだが、ロールケージが実用性を損ねるのだ。たとえリアシートレスオプションを選んでも、キャビン後方のラゲッジスペースとして使えるのに、それが犠牲になってしまう。132Lのフロントトランクがあっても、荷物は積めるだけ積めるほうが便利だ。

走り ★★★★★★★★★☆

トップスピードに関しては、このダカールより低いものを探すと、41年前の1983年、3.0LのSCまで遡らなければならない。しかし加速性能は違う。凍てつくような寒い日のテストで、路面は湿ってオールテレインタイヤのポテンシャルを出しきれない状況だったが、それでもローンチコントロール機能により、0−97km/hは3.3秒、0−161km/hは7.6秒をマークした。これはもっといいコンディションで2019年にテストしたカレラSや、日産が英国での販売を終了したばかりのR35型GT−Rを凌ぐ数字だ。

超高性能のサマータイヤを履かせて、もっと温暖な環境でテストすれば、0−97km/hは3秒フラットも夢ではない、という仮定も成り立つ。現代のパフォーマンスの基準で言えば、スーパーカーと呼べるかどうかの境目となる数字だ。冗談みたいなルックスに騙されてはいけない。これは正真正銘、速い911だ。


オフローダーのなりをしているが、パフォーマンスはベースとなったカレラ4GTSと同等。やや見劣りする部分は、オフロード向けチョイスのタイヤとブレーキが主な理由だ。    JACK HARRISON

気楽にモータースポーツを楽しみたいユーザーや、オフロードで遊びたいユーザーには、悪路向けのラリーローンチコントロールが専用設定されている。これは、ホイールスピンを20%まで許容するセッティングとなっている。

性格的には、ベースであるカレラ4GTSにきわめて近い。ダカールのほうが、初期加速ではややリアの沈み込みが大きく、ハードブレーキではダイブする。しかし、どちらもオフロード用の足回りにリセッティングしたクルマに想像するほどではない

8速DCTの素早い変速は、相変わらずおみごと。ツインターボユニットの実効性は、ブーストとシャシーが噛み合って、回転域の低いところから力強い加速を生み、驚くほどソウルフルなトップエンドの絶叫で完結する。これは、ダカールとのマッチングはバッチリのエンジンだと言える。パワーもトルクも有効バンドが広く、オフロードで効力を発揮する。車両姿勢のアジャストは思いのままだ。

もうひとつ触れておきたいのは、ポルシェといえばのブレーキ性能だ。もしも乾燥路面のストレートでテストしていたなら、オールテレインタイヤはネックになっていたはずだ。113−0km/hは45.1mで、カレラSの39.8mや、夏に計測したターボSの38.3mには及ばない。

公道上でも、ダカールのブレーキ性能には限界を感じた。そして、うっかりそれを失念することはないだろう。というのも、ペダルの初期レスポンスがややフワッとしているからだ。ディスクは専用の鋳鉄で、これは既存のカーボンセラミックが標準ホイールの内側に収まらなかったのが理由だという。

使い勝手 ★★★★★★★★☆☆

インフォテインメント

タッチ式10.9インチ画面のPCMインフォテインメントシステムは2019年、992世代の登場と共にソフトウェアがリニューアルされた。新たなシステムはレイアウトがシンプルになり、ポルシェコネクトによるネットワークのコネクティビティは向上。スマートフォンのミラーリングは、AppleもAndroidもワイヤレスだ。ただし、ワイヤレス充電器はまだ用意されていない。

純正ナビは表示がクリアで、入力はわかりやすく、地図をメーターパネル内のディスプレイと連携させることもできるのでルートを追いやすい。音声入力は大体1回で認識し、渋滞回避のリルート機能もなかなかの出来栄えだ。


コネクティビティなどの機能は最新で文句がない。とはいえ、ダカール専用のオフロードメニューくらいは用意してもよかったのではないか。    JACK HARRISON

オーディオは、ボーズのサラウンドサウンドが標準装備。パワーはまずまずで、再生クオリティは全体的に上々。それでも比較すれば855Wのブルメスターがほしくなる。

できれば、インフォテインメントにオフロード表示がほしかった。傾斜計やその手の機能くらい簡単につけられるだろうに。

燈火類

ポルシェ・ダイナミックライトシステムは標準装備。照射は明るく、幅広く、操舵に合わせた動きは自然だ。

ステアリングとペダル

ダート走行を想定したであろうダカールだが、ドライビングポジションはトラディッショナルな911のそれで、脚は伸ばし気味に座らされる。ステアリングコラムはテレスコピックがやや足りないが、ペダルポジションには文句がなかった。

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

良路でのダカールのハンドリングは、どこかオールドスクール。そこが賛否両論を生みそうだ。通常の911に比べ、ダカールのステアリングには明らかな重さがある。そして、方向転換にやや遅れが出る。アジリティに欠けるわけではないが、背の低い911と異なり、指先の動きで向きを変えるような感じは薄い。

コミュニケーションも薄い。サスペンションが柔らかく、接地面が小さくなっているのだから仕方ない。それゆえ、ほかの911ほどには自信を持って飛ばすことができない。グリップも限られている。湿った路面ではアンダーステア気味だ。そして911の通例として、アンダーステアの後にはオーバーステアがやってくる。


ダカールはその名に相応しく、オールテレインタイヤ、80mm高い地上高、オフロード向けの走行モードを備える。ラリーモードではリアをトルクで流して、グラベルで横を向けるような運転もできる。    JACK HARRISON

派手に飛び跳ねるような運転をしたわけではなくてもだ。というのもダカールは、基本的にしつけが良く、ズラリと揃ったシャシーの電子制御がきっちり効いているが、ルーズな感じも潜んでいる。厳格すぎるスポーツカーを好むユーザーには支持されないはずだ。

ところが、そうではないユーザーは好意的に受け止めるだろう。ダカールは911の気楽な派生モデルで、もしかしたらもっとも楽にポテンシャルを使えるポルシェかもしれないからだ。ロールはよく抑え込まれているが、クルマの状態を知り、次にどうなるか予測できるくらいには残されている。

また、通常の911ほど一体感を得られないステアリングも、オフロード前提であればじつにいい。これは最新の911だが、ブレーキの助けを得てまでノーズをコーナーに張り付けて走ることは求められていない。そこからパワーをかけて、穏やかに曲がっていくだけでこの上なくハッピーだ。

ラリーモードを選べば、トルク配分がかなりリア寄りになり、こうした挙動が強調される。古き佳き、というヤツを思い出させるが、あくまでそれの最上級だ。ダカールは穏やかながらも走らせ甲斐のある、なんなら非常にエキサイティングなモデルだ。なぜなら、サスペンションのトラベルを使い切ることは決してなく、どこでどれくらいその運動性の性格を引き出すかはドライバーに委ねられるからである。

快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆

エルゴノミクスと視認性に関しては、ダカールに客観的な欠点を見いだせない。全体的に魅力的なマシンだ。なのだが、これほどすっと乗り込んで楽に走り出せるクルマはそうそう作れないだろう。さらにボーナス的な要素として、ホイールのガリ傷の心配が少ないことが挙げられる。比較的、タイヤによる保護が効いているからだ。

走らせると、スプリングの低くなったレートと増えたトラベルが、すぐさま明らかに感じ取れる。ダンピングの動きの上質感や、もっとぶっちゃけ言えば高価そうな感じは期待するほどではないかもしれない。いっぽうで、なめらかに流れるような走りは、ほかの911では味わえないものだ。


遮音効果が見込めるリアシートがないこともあり、室内はかなりうるさい。    JACK HARRISON

路面のポットホールや大きな隆起も意に介さずプログレッシブに吸収するさまは、カイエンやマカンに近いものがある。いや、むしろこっちのほうが上かもしれない。

ミドシップのウラカン・ステラートが見せる、デリカシーや軽さを感じさせるタッチはない。しかし、23万2000ポンド(約4315万円)のライバルに大きく引き離されているというほどではない。

ただし、車内はうるさい。もしくは、ひどくうるさい。オールテレインタイヤと。リアシートがあれば見込める遮音性が欠けていることで、113km/hでの室内騒音値は73dBAに達する。これはもう、スーパーカーのテリトリーに、片足どころか首までズッポリとハマっているレベルだ。

コンペティションカーに思いを馳せたことを感じさせる劇的演出だと思えないこともない。油圧サスペンションリフトシステムの独特な唸りはまた、耳を楽しませてくれなくもない。それでも購入者の多くは、非常にいい乗り心地と、これほどひどい遮音性が共存するとは想像しないままにこのクルマを手に入れるに違いない。

購入と維持 ★★★★★★★★☆☆

車両価格を見る限り、競合車よりコスパがよく思えるのはポルシェの常だ。17万3000ポンド(約3218万円)という本体価格は、唯一の直接的なライバルと言えるウラカン・ステラートよりだいぶ安い。日常遣いのしやすさも、ポルシェのほうが上だ。ただし、どちらの変わり種も乗り心地はすばらしく、残価率も驚くほど高いと予想される。

もしも中古車を探すなら、少なくとも短期的には新車価格を上回る値付けとなるだろう。最近のポルシェへの需要と、限定的な供給により、一部のスペシャルモデルには法外なプレミアムがついている。ダカールもそうなるだろう。


ステラートより安価なダカールだが、残価予想は同じく手堅い。アストンの典型的な速いSUVは、かなり落ちてしまう。

しかし、買い損ねてもこう考えてはどうだろう。ダカールの本体価格で、新車のカレラGTSと、走行少なめのアリエル・ノマドを買ってもお釣りが来るのだと。

ダカールの点検インターバルは3.2万kmで、12.7km/Lというクルージング燃費は911ターボと同程度。注意深く走っても、オフロードではマッドフラップやクラッディングにダメージを負うだろう。そういう点を除けば、これはしょせんただのポルシェ911なのだが。

スペック

レイアウト

構造上、911の主流モデルと何ら変わらないダカール。フラット6エンジンはリアアクスルより後ろにあり、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク。GT系に見られるフロントのダブルウィッシュボーンではない。

燃料タンクは、通常よりやや大きい67L。実測での前後重量配分は、38:62だった。

エンジン

駆動方式:リア縦置き四輪駆動
形式:水平対向6気筒2981cc、ツインターボ、ガソリン
ブロック・ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ91.0×76.4mm
圧縮比:10.2:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:480ps/6500rpm
最大トルク:58.1kg−m/2300−5000rpm
エンジン許容回転数:7500rpm
馬力荷重比:299ps/t
トルク荷重比:36.2kg−m/t
エンジン比出力:161ps/L

ボディ/シャシー

全長:4530mm
ホイールベース:2450mm
オーバーハング(前):−mm
オーバーハング(後):−mm

全幅(ミラー含む):2020mm
全幅(両ドア開き):3800mm

全高:1338mm
全高(エンジンフード開き):1845mm
最低地上高:−mm

足元長さ(前席):最大1080mm
足元長さ(後席):−mm
座面〜天井(前席):最大1030mm
座面〜天井(後席):−mm

積載容量:132L

構造:スティール+アルミ、モノコック
車両重量:1605kg(公称値)/1660kg(実測値)
抗力係数:0.35
ホイール前/後:8.0Jx19/11.5Jx20
タイヤ前/後:245/45 R19 102V/295/40 R20 110V
ピレリ・スコルピオン・オールテレイン・プラス
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:8速DCT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:4.89/9.2 
2速:3.17/14.2 
3速:2.15/20.9 
4速:1.56/28.8 
5速:1.18/38.1
6速:0.94/47.8 
7速:0.76/59.1
8速:0.61/73.7

最終減速比:3.12:1

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:8.6km/L
ツーリング:12.7km/L
動力性能計測時:3.9km/L

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):5.2km/L
中速(郊外):9.3km/L
高速(高速道路):10.5km/L
超高速:9.9km/L
混合:8.9km/L

燃料タンク容量:67L
現実的な航続距離:579km
CO2排出量:256g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラット/コイルスプリング、アクティブスタビライザー
後:マルチリンク/コイルスプリング、アクティブスタビライザー

ステアリング

形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.5回転
最小回転直径:10.7m

ブレーキ

前:350mm通気冷却式鋳鉄ディスク
後:350mm通気冷却式鋳鉄ディスク
制御装置:ABS
ハンドブレーキ:電動、センターコンソール中央にスイッチ設置

静粛性

アイドリング:53dBA
全開時(3速):96dBA
48km/h走行時:64dBA
80km/h走行時:69dBA
113km/h走行時:73dBA

安全装備

ABS/PSM/HSA/POSIOP
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人−%/子供−%
歩行者保護性能:−%
安全補助装置性能:−%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温1℃
0-30マイル/時(48km/h):1.5秒
0-40(64):2.0秒
0-50(80):2.6秒
0-60(97):3.3秒
0-70(113):4.1秒
0-80(129):5.2秒
0-90(145):6.3秒
0-100(161):7.6秒
0-110(177):9.2秒
0-120(193):10.9秒
0-130(209):13.0秒
0-140(225):15.8秒
0-402m発進加速:11.6秒(到達速度:198.8km/h)
0-1000m発進加速:21.1秒(到達速度:238.2km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
ランボルギーニ・ウルス(2019年)
テスト条件:乾燥路面/気温13℃
0-30マイル/時(48km/h):1.4秒
0-40(64):1.9秒
0-50(80):2.5秒
0-60(97):3.3秒
0-70(113):4.2秒
0-80(129):5.2秒
0-90(145):6.4秒
0-100(161):7.8秒
0-110(177):9.4秒
0-120(193):11.4秒
0-130(209):13.7秒
0-140(225):16.3秒
0-402m発進加速:10.4秒(到達速度:194.4km/h)
0-1000m発進加速:18.4秒(到達速度:242.7km/h)

中間加速

20-40mph(32-64km/h):1.5秒(2速)/2.5秒(3速)

30-50(48-80):1.3秒(2速)/1.9秒(3速)/2.9秒(4速)/5.2秒(5速)

40-60(64-97):1.4秒(2速)/1.9秒(3速)/2.4秒(4速)/3.7秒(5速)/6.8秒(6速)

50-70(80-113):1.9秒(3速)/2.5秒(4速)/3.2秒(5速)/5.0秒(6速)/9.8秒(7速)

60-80(97-129):1.9秒(3速)/2.7秒(4速)/3.4秒(5速)/4.3秒(6速)/7.6秒(7速)/19.0秒(8速)

70-90(113-145):2.1秒(3速)/2.7秒(4速)/3.6秒(5速)/4.6秒(6速)/6.4秒(7速)/15.8秒(8速)

80-100(129-161):2.7秒(4速)/3.8秒(5速)/4.6秒(6速)/6.4秒(7速)/15.8秒(8速)

90-110(145-177):2.8秒(4速)/3.7秒(5速)/5.0秒(6速)/6.5秒(7速)/13.5秒(8速)

100-120(161-193):3.2秒(4速)/4.2秒(5速)/6.0秒(6速)/8.5秒(7速)

110-130(177-209):4.5秒(5速)/6.6秒(6速)

120-140(193-225):4.5秒(5速)/5.1秒(6速)

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温1℃
30-0マイル/時(48km/h):8.4m
50-0マイル/時(64km/h):23.1m
70-0マイル/時(80km/h):45.1m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.72秒

ライバルの制動距離

ランボルギーニ・ウルス(2019年)
テスト条件:乾燥路面/気温13℃
00-0マイル/時(48km/h):8.1m
50-0マイル/時(64km/h):21.1m
70-0マイル/時(80km/h):43.3m

各ギアの最高速

1速:69.2km/h(7500rpm)
2速:106.2km/h(7500rpm)
3速:156.1km/h(7500rpm)
4速:215.7km/h(7500rpm)
5速:239.8km/h(6297rpm)
6速:239.8km/h(5016rpm)
7速:239.8km/h(4056rpm)
8速:(公称値):240.0km/h(3255rpm)

8速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):1529rpm/1748rpm

結論 ★★★★★★★★☆☆

自動車界では、車両価格が天井知らずで高くなるという予測が支配的だが、911ダカールに関する限り、法外な出費をせずとも、これが地に足のついたクルマだと気づくことができる。もちろんこれは、入手が難しいくらい人気の限定モデルで、オプションでは理解できないほど高価なリバリーなども用意されてはいるのだが。

ポルシェがフランスのシャトー・ドゥ・ラストゥールにあるテストコースで1万kmにわたるオフロードテストを行い、明らかになったのは、911はアスファルトから引き剥がしてオフロードに放り込んでも、思いがけないほど懐の深さを見せるということだった。また、オーナーになれば、ダカールが本当にマッドやグラベル、サンドといった悪路をこなせるクルマだと知るはずだ。


結論:ダカールがテーマのオマージュモデルは、ほかの911にない魅力の持ち主だ。    JACK HARRISON

しかし、われわれが見る限り、この風変わりな911が秘めるリアルな才能と魅力は、ロードカーとしてのパーソナリティにあると思う。ダイナミクスに関しては限界もあるが、サスペンションの大きなトラベルと限られたグリップやトラクションが相まって、根本的な安定感が生まれ、ダカールはイージーに操れて楽しめるクルマになっている。

最近の911のラインナップにおいては、もっとも乗り心地のいいクルマに仕上がったのは、ボーナスのような恩恵だ。賢明な仕様を選べば、ひともうらやむ日常使いできるスポーツカーとなるだろう。

いまポルシェがするべきは、911ダカールのフィロソフィをさらに前進させ、もっと低い価格で提供することだ。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

ポルシェは、このアイデアを温め続けてきたのだろう。2012年には911ヴィジョン・サファリを公開したが、ダカールと共通する要素の多いランニングプロトタイプだった。ただし、もっとスパルタンなキャビンと自然吸気エンジンを備えていた。ワルター・ロールは、911ダカールのようなクルマがもっと早く出ると思っていただろう。

マット・ソーンダース

ダカールでオフロードを遊ぼうというユーザーがどれくらいいるのだろう。それでもオプションには4635ポンド(約86万円)のルーフテントも用意される。iカンパー製で、耐荷重190kgという本格派だ。

オプション追加のアドバイス

オプションにはサマータイヤも用意されている。滅多にいないかもしれないが、ターマックのみを舞台に、その乗り心地やリラックスした走りを楽しみたいというならおすすめだ。ペイントは、地味なほうがわれわれは好みだ。

改善してほしいポイント

・オイルパンとターボチャージャーを保護するアンダーボディクラッディングは装着したい。
・リアシートはあったほうがいい。
・静粛性は改善をオールラウンド性や使い勝手の向上には必要だ。
・3ペダル仕様の追加生産は、ないモノねだりだろうか。