子どもの歯並びによっては矯正治療が必要? 何歳ごろまでに治療を始めるべき? 歯科医師が解説
子どもの歯並びが気になりつつも治療が必要か・必要ないのかお悩みの保護者の方も多いでしょう。そこで今回は、小児矯正が必要な歯並びや受診のタイミング、さらにコスト軽減に活用できる医療費控除について、中野みらい矯正歯科の岡本先生に解説していただきました。
監修歯科医師:
岡本 雅文(中野みらい矯正歯科)
日本大学歯学部を卒業後、同大学附属病院にて臨床研修医を経て、臨床研修機関にて矯正治療を専門に学ぶ。その後、歯列矯正専門クリニックでの勤務や、一般歯科の矯正担当医として矯正治療に携わって10年経過。岡 伸二先生と出会い、中野で三代続いた「岡歯科医院」の跡を引き継ぐ。2021年に「中野みらい矯正歯科」を開院。
小児矯正が必要なのはどんな歯並び?受け口の治療は「乳歯の間がいい」って本当?
編集部
子どもの歯並びで、歯列矯正を考えたほうがよいのはどのような歯並びでしょうか?
岡本先生
お子さんの歯並びのガタガタや受け口、出っ歯などが気になったら、歯列矯正を検討してみてもいいでしょう。また、上下の噛み合わせが一部で反対になる「交叉咬合」、噛み合わせが深い「過蓋咬合」、前歯が噛み合わない「開咬」などが見られた場合も、矯正歯科にご相談していただければと思います。
編集部
ネットをみると「受け口は乳歯のうちに治療を始めたほうがいい」という情報も目にするのですが、これは本当でしょうか?
岡本先生
ここは判断が難しいところですが、一般に歯列矯正は早い時期にはじめたほうがメリットは大きいといえます。乳歯の時期にできることがあるのも確かですが、絶対に「乳歯の時期に」というわけではありません。ただし、永久歯の前歯が生えかわった時に上下で反対咬合(受け口)になっている場合は、できるだけ早めに治療を開始したほうがいいでしょう。
編集部
乳歯の「すきっ歯」はいかがでしょうか? こちらも矯正歯科を一度受診したほうがいいのでしょうか?
岡本先生
乳歯のすきっ歯は異常な歯並びではなく、むしろそのすき間は永久歯が正しい位置に生える際に役立ちます。したがって、乳歯の時期のすきっ歯については、とくに心配する必要はありません。また、永久歯に関しても生えかわりの時期は前歯にすき間を生じることがあります。ただ、そのすき間もほかの永久歯が生えそろってくると自然に閉じてくるのがほとんどなので、あまり気にする必要はないでしょう。永久歯が生えそろってもすき間が閉じない場合は、治療が必要になることもあります。
編集部
そのほかに、「これが気になったら矯正歯科に相談したほうがいい」という症状はありますか?
岡本先生
子どもの歯並びは日常生活の何気ない習慣やクセが原因で悪くなることが少なくありません。常にお口がポカンとあいている「ポカン口(口呼吸)」や、舌を前に突き出す「舌癖」などがその代表例です。矯正歯科ではこのような悪習癖を改善し、お口周りの筋肉や舌の位置・動きなどを正常にし、歯並びが悪くなるのを防ぐトレーニングなども行っています。したがって、乳歯が生えそろった後もこのような習慣やクセが気になる場合は、一度矯正歯科にご相談いただければと思います。
小児矯正はいつ・何歳ごろまでに始めるべき? 矯正歯科の受診が遅れるとデメリットはある?
編集部
子どもの歯並びが気になったら、年齢に関係なく矯正歯科を受診してもいいのでしょうか?
岡本先生
基本的に何歳からでも受診は可能です。お子さんの歯並びが少しでも気になったら早めに矯正歯科で相談し、治療が必要かどうか、必要な場合はいつ頃に開始するのがいいのかを聞いておくと安心でしょう。
編集部
小児矯正は「何歳ごろまでにはじめたほうがいい」など年齢の上限はありますか?
岡本先生
遅くとも9歳頃までには矯正歯科を受診しておきましょう。矯正治療に年齢の制限はありませんが、子どもの場合は成長の利を活かし、顎の大きさや形を調整しながら歯並びを治せるというメリットがあります。ただ、このような治療ができるのは乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」に限られます。したがって、この時期を逃さず治療をはじめるためには、9歳前後までには矯正歯科医や小児歯科の専門医に相談し、必要に応じて治療を開始するのがベストです。
編集部
小児矯正で矯正歯科の受診が遅れた場合、デメリットはありますか?
岡本先生
デメリットというほどではありませんが、時期を過ぎると子どもならではの成長を活かした治療ができなくなる可能性があるため注意が必要です。子どもでも永久歯がすべて生えそろったあとでは、使用する装置や治療法も大人の歯列矯正とほぼ同じになります。歯列を広げたり、顎の位置を調整したりといった治療は難しくなるので、その点は注意しておきましょう。
小児矯正の気になる費用 子どもの矯正歯科で保険が適用できるケースは? 「医療費控除」は対象になる?
編集部
歯列矯正は子どもの場合でも「保険外治療」になるのでしょうか?
岡本先生
子どもの歯列矯正も、原則的に保険が適用できません。保険適用となるのは一部のケースに限られます。
編集部
具体的に、どのようなケースで小児矯正に保険が適用できますか?
岡本先生
主に先天的な病気で歯並びや噛み合わせに異常があるケースです。具体的なものに、唇顎口蓋裂や鎖骨頭蓋骨異形成、ダウン症などの遺伝子疾患があります。また、前歯から小臼歯のうち、先天的な要因で永久歯が3本以上生えてこない場合にも保険が適用できます。※参考資料
日本矯正歯科学会https://www.jos.gr.jp/facility
編集部
小児矯正の費用を抑えるポイントがあれば教えてください。
岡本先生
小児矯正の費用は基本的に保険が適用できませんが、ほとんどのケースで医療費控除の対象になります。支払った医療費の金額や収入に応じて、税金の一部が還付されるので、ぜひこの制度を利用していただければと思います。
編集部
「医療費控除」について、もう少し詳しく教えてください。
岡本先生
医療費控除は自身や家族が1年間に支払った医療費の合計が10万円を超える場合に利用できる制度で、確定申告の際に申請すると支払った所得税の一部が返ってきます。医療費には小児矯正の治療費のほかに、交通費(公共交通機関)や薬代、ほかの診療科の受診にかかった費用なども含むことができます。詳しい申請方法や必要な書類については、最寄りの税務署に相談するか、国税庁のホームページを参考にしてください。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
岡本先生
子どもの歯並びについては学校の歯科健診で初めて指摘され、かかりつけの歯科医院に相談するケースも少なくありません。しかし、小児矯正に関する考え方は歯科医によって様々なのと、保護者が判断を迷ってしまうこともあるようです。したがって、もし治療を検討しているのであれば、小児矯正専門医院に一度ご相談してみることをおすすめします。その際は、治療内容や費用、治療期間などをよく確認して納得のうえで治療を開始していきましょう。
編集部まとめ
小児矯正は歯並びが気になったら何歳からでも受診が可能です。とくに、歯並びのガタガタや受け口・出っ歯などが気になった場合は、早めに矯正歯科に相談しておくといつ・どのタイミングで治療を始めるといいかのアドバイスが受けられます。また、小児矯正にかかる費用は多くで「医療費控除」の適用となります。少しでもコスト負担を減らすためにも、ぜひこのような制度を積極的に利用していきましょう。
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