10年を経て2004年の国会に「放置違反金」制度の法案が提出された。駐車違反に限っての、行政制裁金に似た金銭ペナルティだ。法案は国会をスムーズに通過。2006年6月1日、放置違反金は駐車監視員の制度とともにスタートした。

以降、青切符の違反について検察は、原則として、違反者を呼び出すことなくさっさと不起訴にしてしまう、そっちへ舵を切り始めたようにどうも思われる。検察官はこう考えるのではないかと。

「警察は不起訴でも違反点数を抹消しないようになった。たとえ1点でも免許更新や任意保険の掛け金なんかで違反者は不利益をこうむる。警察のほうで交通裁判所へ出頭させており、それが“お灸”にもなっているだろう。特に駐車違反の場合、不起訴でも車両の持ち主が放置違反金の納付命令を受ける(※)。そのへんでヨシにしとこう」

※ たとえば自分のクルマで駐車監視員の取り締まりを受けた場合、違反者として反則金を払わず不起訴になっても、車両の持ち主として放置違反金(反則金と同額)を徴収される。信じられないかもしれないが、道交法はそれを可能としており、追認する判例もすでにある。

まとめると、行政制裁金制度の実現へ向け警察は「警察無謬」を押し出そうとしている。そういう背景があって、福岡県警のとんでもないケースがあるのだろうと私は見る。「刑事処分が不起訴でも無罪でも違反点数は抹消しない。行政処分は撤回しない」ということが、福岡だけでなく全国で起こっているはずだ。

どうにかならないものか? うーん、記者クラブメディア(つまりテレビ・新聞)は、日々の犯罪報道を警察発表と捜査官からのリークに頼っている。警察が喜ばないことを地道に掘り起こして報じることは難しいのだと、これは某大手新聞の編集委員から私は聞いた。

また、警察には選挙違反を取り締まる力があるため、警察の問題はなかなか国会で取り上げにくいのだと、これは若手の国会議員(のちに某政党の大物)から私は議員会館の事務所で聞いた。

でもね、古今東西、世の中はこんなもんだろう。絶望は愚か者の結論だという。頑張っていきましょう。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通事件以外の裁判傍聴にも熱中。交通違反マニア、開示請求マニア、裁判傍聴マニアを自称。