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まったく新しい「ノイエ・クラッセ」EVの正体

ドイツの自動車メーカーであるBMWは、「ノイエ・クラッセ」と呼ばれる次世代EV群を2025年に導入する予定だ。最近、iX3の後継車らしきプロトタイプがドイツ国内で目撃されるなど、その具体的な姿が徐々に明らかになってきた。

【画像】BMWの「駆けぬける歓び」は電動車にも受け継がれる【ノイエ・クラッセのプロトタイプとコンセプトモデルを写真で見る】 全38枚

ノイエ・クラッセはセダンやSUVを含む6車種が計画されており、最も高性能な仕様で600ps近い出力を発揮すると言われている。今年9月には、ビジョン・ノイエ・クラッセとして3シリーズの後継車も予告された。


BMWは2026年前後に「ノイエ・クラッセ」SUVを導入する。(編集部作成予想CGイメージ)    AUTOCAR

BMWの研究開発部門責任者であるフランク・ウェーバー氏は本誌の取材に対し、ノイエ・クラッセの複数のEVモデルがBMWのラインナップに順次追加されると語った。

「BMWは今、柔軟性が求められる段階にいます。これまでのプラットフォームの捉え方、認識から離れなければならないのです」

「ポートフォリオの多様性は、エンジン、モーター、バッテリーセル、車載コンピューター、制御ユニット、アプリ機能、ソフトウェア・アップグレードなど、主要コンポーネントをどのように使用し、どのようにネットワーク化するかにかかっている。そのような認識が高まってきています」

「プラットフォームの構造そのものよりも、個々のコンポーネントとその使い方が重要なのです」

第2世代となる次期iX3(コードネーム「NA5」)は、現行車と同様の戦略で、ガソリン、ディーゼル、PHEVモデルとともに販売される。しかし、プラットフォームは別物となり、次期iX3がEV専用に移行する一方で、エンジン搭載車は既存のCLARの改良版を使用する。

ウェーバー氏は、「販売台数の大部分を電動車とする場合、すべてのプラットフォームをどのように調整するかを検討しなければなりません。わたし達は、従来の内燃エンジンモデルの強みと次世代EVの開発が、BMWのさらなる成長につながると確信しています」と述べている。

円筒セルの水冷バッテリー採用 充電速度もアップ

次期BMW iX3は、2025年からハンガリーのデブレツェンの新工場で生産される予定だ。アウディQ6 eトロンやポルシェ・マカンEV(車名未定)などがライバルとなるだろう。

ドイツのミュンヘンとメキシコのサン・ルイス・ポトシにある工場でも、2026年と2027年からノイエ・クラッセモデルの生産が開始される予定である。


ドイツで目撃されたBMW「ノイエ・クラッセ」SUVのプロトタイプ    AUTOCAR

一方、内燃エンジン搭載の次期X3(ガソリン、ディーゼル、PHEV)の生産は、引き続き米国スパータンバーグ工場で行われる。

ノイエ・クラッセでは、BMWが開発した第6世代の新しいリチウムイオンバッテリーが導入される。既存の角柱型セルとは異なり、水冷機能を備えた新しい円筒型セルを採用している点が特徴だ。セルの標準直径は46mmで、搭載されるモデルによって95mmと120mmの2種類の高さがある。

ウェーバー氏は、現在使用されている第5世代バッテリーと比較して、正極内のニッケル含有量が多く、コバルト含有量が少ないことを明らかにした。また、負極はシリコン含有量を増やし、合成黒鉛の配合を変えている。これにより、体積あたりのエネルギー密度が20%向上するという。

つまり、同じサイズのバッテリーで、より長い航続距離を実現できるようになるのだ。さらに、既存の400Vアーキテクチャーから、より強力な800Vへの移行により、充電速度が30%向上するとされている。

2025年のデビューを前に、まだ明かされていない点も多いが、次期iX3をはじめとするノイエ・クラッセモデルは高出力DC充電器で最大350kWの充電に対応し、充電時間を大幅に短縮すると予想されている。

高性能の次世代モーター 最高出力は600ps?

モーターもまた、ノイエ・クラッセで重要な鍵となる。ウェーバー氏によると、次世代モーターはノイエ・クラッセ用に設計されているものの、CLARベースの他の電動車にも使用できるという。

巻線、ステーター、ハウジング、ウォーター・ジャケットの変更による冷却能力の向上が特徴とされている。


ドイツで目撃されたBMW「ノイエ・クラッセ」SUVのプロトタイプ    AUTOCAR

BMWはノイエ・クラッセモデルの効率を25%向上させると謳っているが、ウェーバー氏によれば、この改善はモーターだけによるものではないという。

「BMWは最大限の効率性と同時に最大限のダイナミクスを求めています。効率に貢献するのは電気モーターだけではありません。すべてのコンポーネントと、重量、空力、転がり抵抗といった二次的効果など、システム全体が関わるものなのです」

「現在、i4の現実的な航続距離は約400kmです。将来的には500km以上になるでしょう。バッテリーを大きくすることだけが答えではありません」

後輪駆動のみの現行iX3とは異なり、第2世代では後輪駆動と四輪駆動が用意される。フラッグシップの「iX3 M60(仮称)」など、Mブランドのパフォーマンス仕様も導入される見込みだ。iX3 M60では、2基の第6世代モーターから発生する最高出力は600psに迫ると予想されている。

「駆けぬける歓び」をどう実現するか

BMWらしいドライビング・キャラクターを実現するため、ノイエ・クラッセモデルには「ハート・オブ・ジョイ」と呼ばれる高度な制御システムが搭載される。これについてウェーバー氏は次のように述べている。

「ハート・オブ・ジョイはBMWのDNAに他なりません。ドライビング・ダイナミクスに関連するすべてを網羅し、ドライブトレインとシャシーの相互作用と機能における基礎となるものです」


BMW iX3(現行)

「わたし達は、これを成功裏に行える競争相手はほとんどいないと確信しています。競合他社はどこからかコンピテンシーを購入するかもしれませんが、このように組み合わせて購入できるところはありません。というのも、BMWは自分たちの専門知識と技術を駆使して、自分たちの手で成し遂げたからです」

ウェーバー氏によれば、BMWの信条である「駆けぬける歓び」を電動車においても実現するために多大な投資を行ってきたという。「ノイエ・クラッセでは、まさにこのキャラクターをめぐって長い議論が交わされました」

「わたし達は、お客様が求めているのはコンピューターと車輪だけではないという結論に達しました。お客様はデジタル技術を駆使した製品を求めているが、車輪のついたコンピューターは求めていない。求めているのは、非常に感情的な関係です」

BMWは独自のドライビング・キャラクター構築にあたって、モーターとスロットルレスポンスの開発に心血を注いでいるようだ。

「電気モーターは非常に正確で、やや不器用な内燃エンジンとは異なります」

「電気モーターは信じられないほど細かく制御できます。わたし達はシャシーシステムと組み合わせて、EVのドライビングを次のレベルに引き上げることに成功しました」

ハート・オブ・ジョイは4つの独立マイクロプロセッサーを搭載し、その処理能力には大きな期待が寄せられている。

「これまでの20倍の速度で動作します。開発を始めると、すぐにコンセプトが正しかったことに気づきました。わたし達が想定していなかったのは、その可能性でした。これは本当のゲーム・チェンジャーです」