ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――先週のGIジャパンCは"2強"が強い競馬を見せ、馬連は180円という低い払戻金額となりました。一転、今週のGIチャンピオンズC(12月3日/中京・ダート1800m)は大混戦。波乱の決着も十分にありそうです。

大西直宏(以下、大西)ダート路線は地方や海外の番組も多いため、ただでさえ能力の上下関係が読みづらい状況にあります。そこへ、新たな世代の馬も加わってくるのですから、各馬の実力比較はとても難解になりますよね。

 現在のダート路線の勢力図をざっと説明すれば、マイルまではレモンポップ(牡5歳)が、中距離ではウシュバテソーロが強い、という認識が一般的だと考えられます。

 しかし、チャンピオンズCにウシュバテソーロは出走しません。その代わり、レモンポップがこの路線に参戦してきました。1800m戦は今回が初めて、という馬が上位人気に支持される可能性が高いゆえ、その時点で「波乱ムード」と言っていいでしょうね。

――突き抜けた存在がいないなか、勝ち負けに加わってもおかしくない馬は数多くいる印象。出走馬を見渡して、大西さんでしたら、どの馬に乗りたいですか。

大西 それは、とても難しい質問です。GIレースにおいて(騎乗したい馬を)ここまで悩むことはなかなかありません。

 ただひとつ言えるのは、5戦無敗のセラフィックコール(牡3歳)は人気が予想されますが、「このコースだと乗り難しいだろうな」と感じています。

 というのも、チャンピオンズCと両睨みだったパンサラッサがジャパンCに出走し、逃げ馬プロミストウォリアも出走を回避。それにより、逃げ・先行勢が手薄になったので、ペースが上がらない可能性が高くなってきたからです。

 中京・ダート1800mはもともと先行有利と言われ、スローペースで大外をぶん回すような乗り方をして勝ちきるのは、かなり至難の業。セラフィックコールは末脚の爆発力が随一であることは認めますが、追い込みを決めるには、乗り方がよほどハマらないと難しいかもしれません。

――となると、このレースでは先行タイプの馬に騎乗するほうが競馬はしやすいでしょうか。

大西 今回のメンバーとコース形態を考えたら、後方からさばいて上位を狙うよりは、2列目ぐらいまでで流れに乗ってなだれ込みを狙える馬のほうが乗りやすいイメージがありますね。

 レモンポップも好位で運ぶ馬ですが、結局のところ、今回初めての距離に挑みます。たとえ逃げたとしても、「最後は止まるんじゃないか」という不安を抱えていますから、(中距離を主戦場とする)番手から抜け出せる馬のほうが有利なのではないでしょうか。

 おそらくそのポジションには、川田将雅騎手が乗るクラウンプライド(牡4歳)や、ジョアン・モレイラ騎手が手綱をとるアイコンテーラー(牝5歳)、クリストフ・ルメール騎手が鞍上を務めるグロリアムンディ(牡5歳)あたりがつけて、虎視眈々と抜け出しを狙ってくるでしょうね。

――この秋のGIで活躍するジョッキーたちが同じような位置でぴったりマークしてくる展開だと、レモンポップも気が抜けませんね。では、そうした状況にあって、穴候補となり得る馬はいますか。

大西 基本的には"先行馬同士の争い"という見立てですが、前の馬たちが勝ち急ぐと、その後ろで脚をタメている馬たちにも上位に食い込むチャンスが出てきます。僕は3列目辺りで流れに乗っている馬に食指が動きます。

 なかでも注目は、メイショウハリオ(牡6歳)です。


チャンピオンズCでの巻き返しが期待されるメイショウハリオ。photo by Yasuo Ito/AFLO

 この馬は脚質的に横綱相撲をとるタイプではないので、人気を背負うとどうしても乗り方が難しくなります。戦績的にもそうですが、人気がなくなって一発を狙った乗り方をした時のほうが好走しやすいイメージがあります。

 前走の地方交流GI JBCクラシック(4着。11月3日/大井・ダート2000m)では1番人気を裏切ったので、今回は人気が落ちるはず。鞍上の浜中俊騎手としても、乗りやすくなるのではないでしょうか。

 以前は後方一気の不器用な競馬スタイルでしたが、ここ1年くらいは馬群のなかで競馬を試してみたり、ある程度ポジションを取りにいったりして、競馬の幅を広げています。この夏、地方交流GI帝王賞(6月28日/大井・ダート2000m)で連覇を果たした実績からも能力的には十分に足りています。

 混戦だからこそ、この馬が狙い目だと見ています。ということで、今回の「ヒモ穴馬」にはメイショウハリオを指名したいと思います。