仮想通貨ウォレット「Zeus」の創業者であるエヴァン・カルディス氏が、Appleから事前に通告を受けることなく開発者アカウントを凍結されたと報告しています。カルディス氏は凍結の原因を、別のウォレット「Venmo」のユーザーがAppleを訴えた訴状に自分のX(Twitter)への投稿が引用されたからではないかと予想しています。



カルディス氏は投稿で、訴状に引用された自分の投稿や「このApple IDはアクティブではありません」というエラーメッセージが表示されているログイン画面などを示しました。



問題の裁判は、ウォレット「Venmo」のユーザー4人がAppleを相手取って起こしたもの。原告は、Appleが市場支配力を悪用してモバイル分野の個人間取引(P2P支払い)の競争を抑制しているのは独占禁止法に違反すると主張しており、「Apple Cash」事業の売却か分離を強制する差止命令を求めています。

Venmo, Cash App users sue Apple over peer-to-peer payment fees | Reuters

https://www.reuters.com/legal/transactional/venmo-cash-app-users-sue-apple-over-peer-to-peer-payment-fees-2023-11-20/

LAMARTINE PIERRE, MARK WHITLOCK, LYNN-MARIE RODRIGUES, and MARISSA WILLIAMS, on behalf of themselves and all others similarly situated, Plaintiffs, v. APPLE INC., Defendant

(PDFファイル)https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/legaldocs/zdpxrbjyrpx/Apple Cash 20231117.pdf

訴状に引用されたカルディス氏の投稿は以下で、Zeus v0.7.6が審査を通らなかったときのものです。Appleはガイドラインの「3.1.5 暗号通貨」の項目を示し、「仮想通貨が対応する取引所または認定金融機関から送信されなかった」として、カルディス氏に対し「アプリが利用可能なすべての場所で、仮想通貨交換機能を備えたアプリを配布するのに必要なライセンスとアクセス許可を得ているという証拠書類を提出してください」と求めています。原告はこれを、AppleがApple Cashのライバルになり得るウォレットアプリをApp Storeから排除しようとした動きの証拠として利用しました。



Appleが、カルディス氏のツイートを問題視したのかどうかは不明ですが、カルディス氏は「どうやら、もし独占禁止法違反の訴訟でSNSの投稿を引用されたら、Appleに開発者アカウントを事前通告なく凍結されるようですよ」と、今回のアカウント凍結が裁判と関係していると判断しています。

なお、カルディス氏は「アプリの審査が厳しいのは予想していましたが、こういう形になるとは想定外でした」とコメント。



アプリはアップデートできないものの、App StoreやTestFlightには残ったままであることを報告しています。



カルディス氏は「もしかすると、運良くこの一連の投稿も別の訴訟で引用されるかもしれない。興奮しますね」とも述べました。



開発者アカウントが凍結された件について、カルディス氏はAppleに問い合わせをしたものの、3日たっても反応はなく、アプリもそのままになっているとのことです。