厳選!2歳馬情報局(2023年版)
第24回:シュガークン

 今年の2歳世代のなかには、GI通算7勝を挙げた偉大な兄を持つ期待馬がいる。栗東トレセンの清水久詞厩舎に所属するシュガークン(牡2歳/父ドゥラメンテ)である。


シュガークンの兄にはGI通算7勝を誇るキタサンブラックがいる。photo by AFLO

 同馬の偉大な兄とは、キタサンブラック。日本を代表する演歌歌手、北島三郎さんの所有馬(※馬主名義は「(有)大野商事」)として、話題を振りまいた名馬だ。

 初陣は2015年の年明け。3歳新馬でデビュー勝ちを決めると、そのまま3連勝を飾ってGIIスプリングS(中山・芝1800m)を制覇。続くクラシック第1弾のGI皐月賞(中山・芝2000m)でも3着と好走した。

 クラシック第2弾のGI日本ダービー(東京・芝2400m)こそ14着と惨敗を喫したものの、秋にはGIIセントライト記念(中山・芝2200m)を勝って、クラシック最終戦のGI菊花賞(京都・芝3000m)で初の戴冠を遂げた。その後、GI有馬記念(中山・芝2500m)でも古馬相手に3着と奮闘した。

 4歳になると、レジェンド武豊騎手とコンビを組んでさらに躍進。重賞6戦をこなして、すべて馬券圏内(3着以内)という成績を残した。GIは、春に天皇賞・春(京都・芝3200m)を勝利し、秋にはジャパンC(東京・芝2400m)を完勝。時代の中心的な存在となっていった。

 そして、その強さに一層の磨きがかかったのが5歳になってから。この年、GIに昇格した大阪杯(阪神・芝2000m)を制して初代王者になると、天皇賞・春で連覇を達成。秋には不良馬場のGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)で、致命的な出遅れから驚異的な追い上げを見せて6つ目の栄冠を手にした。

 ラストランとなる有馬記念でも、圧巻の逃げ切り勝ち。GI通算7勝という偉業を果たし、有終の美を飾った。

 そんな名馬の弟となるシュガークンは、兄と同じ清水厩舎に管理されている。間近で見ているスタッフは、同馬についてどんな印象を抱いているのだろうか。関西競馬専門紙のトラックマンが話を聞いてきた。

「シュガークンについてスタッフは、『馬体のサイズは500kg前後と大型で、身のこなしや乗り心地はとてもいい』と上々の評価を口にしていました。さすがに『まだキタサンブラックと比べるのはかわいそう』と言っていましたが、『現時点で持っているものはよさそう』と好感触でした」

 ただ、同馬は入厩し、しばらく調教を積んだあと、現在は再び放牧に出されている。その理由について、先述のトラックマンが陣営の考えを明かす。

「スタッフによれば、シュガークンは『素材のよさは間違いないが、まだ気が入ってくるところがない』とのこと。調教での前向きさや集中力が伴わないため、気持ちの変化を促す意味で放牧に出したようです。

 それでも、気性的には『素直で扱いやすい』とスタッフ。問題があるのは、本当に前向きさだけのようですから、それさえ解消されれば、一気に軌道に乗っていくのではないでしょうか」

 再入厩を果たし、デビューの時を迎えるのが待ち遠しいシュガークン。兄キタサンブラックを彷彿とさせる走りを見せてくれることを期待したい。