今週で最後となる今年の東京開催。ラストを飾るのは、国際招待競走のGIジャパンC(11月26日/東京・芝2400m)だ。

 今年は、外国招待馬の参戦がイレジン(せん6歳/フランス)1頭だけと寂しいが、イクイノックス(牡4歳)vsリバティアイランド(牝3歳)という夢の対決が実現。いつにも増して、注目度の高い一戦となっている。

 この2強以外にも、昨年のダービー馬ドウデュース(牡4歳)をはじめ、GI3勝のタイトルホルダー(牡5歳)、今年2月に海外GIのサウジC(2月25日/サウジアラビア・ダート1800m)を制した快速馬パンサラッサ(牡6歳)、昨年の二冠牝馬スターズオンアース(牝4歳)など、豪華な顔ぶれが集結。日本の競馬史に刻まれる熱戦となることは間違いない。

 そんな胸躍るレースを前にして、スポーツ報知の坂本達洋記者もこう語る。

「世界ランキング1位のイクイノックスと三冠牝馬リバティアイランドとの直接対決は、海外からも注目されているようにハイレベルな戦いが予想されます。あるベテラン調教師は、『GI天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)のレコードはすごかった。この分だと、ジャパンCでも2分19秒台(の勝ちタイム)が出ちゃうんじゃないの』と、レコード決着必至の争いと見ています」

 当の坂本記者も、現在の東京競馬場の馬場状態から「究極の決着になる」と踏んでいる。

「先週からCコースに替わった東京の芝レースは上がりの速い決着が多かったですから、(2強による)至極のキレ味勝負になった場合は、おそらく他の馬の出る幕はないのではないか、と思っています」

 とはいえ、フルゲート18頭の争いとなり、次週のGIチャンピオンズC(12月3日/中京・ダート1800m)と両にらみだったパンサラッサの参戦もあって、イレギュラーなことが起こりそうなムードもある。坂本記者はそういった点にも注意を払う。

「パンサラッサは10着に敗れた今春の海外GIドバイワールドC(3月25日/UAE・ダート2000m)以来となりますが、サウジCでの鮮やかな逃げ切り勝ち。そして、昨年の天皇賞・秋で果敢な大逃げを打って、イクイノックスに1馬身差の2着に粘ったことはまだ記憶に新しいです。

 同馬に加えて、前へ、前へと積極策に出るであろうタイトルホルダーも出走しますから、この2頭がある程度引っ張る流れになれば、後続もなし崩し的に脚を使わされて、持久力が求められるレースになるようなイメージも沸きます」

 過去10年で1番人気は5勝、2着1回、3着2回。比較的堅いイメージのあるジャパンCだが、フルゲートとなった4戦ではわずか1勝(2着1回、3着1回)。伏兵の台頭も十分に考えられる。

 そういった場合、どんな馬が浮上するのか。坂本記者は騎手の心理も踏まえて、こんな見解を示す。

「騎手の心理からして、ヨーイドンの瞬発力勝負になったら、イクイノックスやリバティアイランドを上回るのは難しいと思うはず。それなら、前、前で運んで、そのリードを生かして粘り込む形に持ち込む作戦をイメージしていると思います。ならば、穴馬候補としては、あえてそれら逃げ、先行馬を狙ってみるのも面白いかもしれません」

 そこで、坂本記者は2頭の名前を挙げた。

「持久力を求められる展開になった場合、まずはスタミナ豊富なディープボンド(牡6歳)に妙味を感じます。

 休み明けだった前走のGII京都大賞典(10月9日/京都・芝2400m)は、前半でスムーズさを欠いて、道中も中団馬群のなかで揉まれる形に。それでも、勝負どころで動いて外からロングスパート。差のない3着まで追い上げた内容は評価できると思います。

 重馬場で1着プラダリアと2着ボッケリーニが前で粘ったなか、さすが最後は地力を見せてくれました。GI天皇賞・春(阪神・芝3200m。今年は京都・芝3200m)では、2021年から3年連続2着と好走。距離はあっていいタイプで、スタミナ勝負は望むところです」


ジャパンCでの一発が期待されるディープボンド。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 前走後は、ここに向けて調整されてきた。

「イクイノックスを含めた前走で天皇賞・秋を使った組は、超高速決着の反動が心配されるうえ、中3週というローテが決してラクではないと思います。それに比べて、ディープボンドは十分に間隔を空けて一段階状態を上げていることでしょう。

 事実、この中間も順調にきているようで、1週前の追い切りでは栗東CWでびっしりと追われて、81秒8−11秒4の好時計をマーク。主戦の和田竜二騎手を背にしての大きなフットワークは迫力十分で、体調のよさが伝わってきました。

 前走の内容からも衰えは感じられませんし、本来はもう少し前で運べる馬。うまく1コーナーへの入りをこなせれば、パンサラッサ、タイトルホルダーに続く好位につけていけると思いますし、展開面と状態面を考慮すれば期待は膨らみます」

 坂本記者が推すもう1頭は、パンサラッサだ。

「攻めの競馬をしてくると思われる同馬は、やはり無視できません。右前脚の繋靱帯炎(けいじんたいえん)などにより休養は長引きましたが、"世界の"矢作芳人厩舎がゴーサインを出したからには、恥ずかしい競馬はしない出来にはあると見ていいでしょう。

 東京コースを走ったのは、昨年の天皇賞・秋と2020年と2021年のリステッド競走・オクトーバーS(東京・芝2000m)の3回だけですが、1着1回、2着2回と苦手なわけではありません。というより、連対率100%と適性は高いです。

 主導権争いもタイトルホルダーが真っ向からハナを主張してくるとは思えませんし、共倒れを避けてすんなり2番手に控えてくれると見ます。距離克服はカギになりますが、自分の競馬に徹すれば、アッと言わせるシーンがあってもおかしくないと思います」

 現役最強馬決定戦に視線が注がれるなか、虎視眈々と一発を狙う馬たちもいる。ここに挙げた2頭が世界中の競馬ファンの度肝を抜く走りを見せても不思議ではない。