「iPhone」は若い女性、「Android」はおじさんが多い謎 スマホのOSシェアは五分五分だが
「iPhone」と「Android」、あなたはスマホのOSにどちらを使っているだろうか。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2023年11月21日に発表した「2023年9月スマートフォンOSシェア調査」によると、五分と五分のシェアを分け合っていることがわかった。
しかも、若い世代、特に女性は「iPhone」ユーザーが多く、一方、年配世代、特に男性は「Android」ユーザーが多いという結果が出て、世代&男女対決の構図が明らかになった。調査担当者に聞くと――。
10〜20代女性は、「iPhone」ユーザーがほとんど
MMD研究所の調査(2023年9月22日〜27日)はスマホを利用している18歳〜69歳の男女4万人が対象。そのうち、自分のスマホのOSを把握している3万4564人に、メインで利用しているOSを聞くと、「iPhone」が50.0%、「Android」が49.7%と、全く五分五分の結果になった【図表1】。
これを年代性別に見ると、非常に面白い傾向が明らかになった。「iPhone」は10代女性(84.9%)が最も多く、次いで20代女性(81.9%)、10代男性(78.8%)、20代男性(73.8%)となった。一方、「Android」は、60代男性(62.4%)が最も多く、次いで60代女性(60.9%)、50代男性(60.7%)、40代男性(60.3%)となった【図表2】。
つまり、「iPhone」は女性と若い世代に、「Android」は男性と年配世代に、それぞれ受け入れられている傾向がはっきり出たわけだ。
また、契約している通信サービス別に見ると、さらに面白い傾向が浮かび上がってきた。対象に選んだ通信サービスは、「Rakuten最強プラン」を含む「大手4キャリア」と、「Rakuten最強プラン」を除く「大手3キャリア」、そして「オンライン専用プラン」、「キャリアサブブランド」、「MVNO」(格安スマホ)の5つ。
ちなみに、MMD研究所では、キャリアサブブランドは「UQmobile(au)」と「Y!mobile(SoftBank)」、オンライン専用プランは「ahamo(docomo)」「povo(au)」「LINEMO(SoftBank)」を指している。サブブランドには店舗があり、オンライン専用プランは手続きやサポートを含め、基本的にはオンラインで完結するプランとなっているからだ。ただし、「ahamo」のみ有料で、ドコモショップで契約のサポートを受けることができる。
さて、通信サービス別にスマホのOSを聞くと、「iPhone」はオンライン専用プラン(61.9%)が最も多く、次いでキャリアサブブランド(55.7%)となった。一方、「Android」は格安スマホ(63.0%)がダントツに多く、次いで大手4キャリア(51.0%)、大手3キャリア(49.0%)となった【図表3】。
ところで、「iPhone」ではどのシリーズの、「Android」ではどの端末機種の人気が高いのだろうか。それぞれのユーザーに聞くと、iPhoneユーザーは「iPhone SE」(22.6%)がトップで、次いで「iPhone 13」(17.6%)、「iPhone 12」(16.8%)が上位に並んだ。一方、Androidユーザーは「AQUOS」(28.0%)がダントツに多く、次いで「Xperia」(21.2%)、「Galaxy」(14.1%)が上位に並んだ【図表4】。
若者の「iPhone」人気は周りが「iPhone」だから
今回の調査結果、どう見たらよいのか。J-CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者(女性)に聞いた。
――今回、「iPhone」と「Android」のシェアが五分五分の結果になりましたが、過去の調査の推移でも同様でしょうか。かつて日本は「iPhone大国」と呼ばれて、「iPhone」のシェが7割近くありましたが、円安で価格が上昇したこともあり、現在は「Android」に押されていると聞きますが。
調査担当者 今回の調査で初めて通信サービス別のOSシェアを出しており、過去の調査と比較することはできません。しかし、今年9月に行った「iPhone 15シリーズに関する購入意向調査」を見ますと、「iPhone 15」の購入意向がわずかですが、上がっています。
また、今回の調査でも「次回購入したい端末」として「iPhone15」を挙げる人が50%以上と、「Android」を含めて一番多いので、新シリーズの注目度は高いと思います。
――「iPhone」が10代〜20代に圧倒的に強く、「Android」が50代〜60代に浸透と、かなり世代対決の傾向がはっきりしましたが、これはOSの歴史的な背景があるのでしょうか。それとも、それぞれのOSの機能、使いさすさ、魅力といった商品特性の違いがあるのでしょうか。
調査担当者 若年層に「iPhone」の人気が高い理由としては、周りに「iPhone」利用者が多く、「iPhone」のほうが写真の共有をはじめ、同じアプリや操作で使用しやすいことや、Appleのブランド力の高さが挙げられると思います。
スマホスキル高い格安スマホに「Android」が6割以上
――「iPhone」は若い女性(10代〜20代)に圧倒的に支持されていますね(8割以上)。同じ女性でも30代(6割以下)、40代(5割以下)に比べると、違和感さえ覚えます。これはなぜでしょうか。
たとえば、NTTドコモのモバイル社会研究所の調査(モバイル社会白書2023年版)などによると、若い女性(10代〜20代)が「1日にスマホを見る時間が4時間以上」の割合が70%を超えており、スマホ漬け状態になっています。同世代の男性が50%前後ですから、スマホと接する時間は群を抜いています。
また、フリック入力をする割合も若い女性(10代〜20代)は47%で、同世代の男性が33%ですから、こちらも群を抜いています。LINEやインスタで女子同士の連絡を頻繁にとっているからと思われます(J-CASTニュース「フリック入力」15〜24歳女性が断トツに多い ガラケー世代の「トグル」だとスマホ生活に差が?)。
こうした若い女性特有のスマホの使い方と、「iPhone」の機能、商品特性がマッチしているということはあるでしょうか。
調査担当者 おっしゃるとおり、若い女性のほうがスマホを通してSNS等で周囲とつながる場面が多く、周りがみんな「iPhone」だから「iPhone」にするという人も多いと考えられます。「iPhone」のほうがケースなどアクセサリーの種類が豊富であることも、特に若い女性に人気な要因であると思います。
私自身(女性)も以前は「Android」だったのですが、現在は「iPhone」を使っています。友人に「iPhone」が多いため写真などの共有がしやすいのと、ケースなどのアクセサリーも充実している印象があったので「iPhone」に変えました。
すごくこだわりがあるわけではなく、価格的にも安かった「iPhone SE」の第2世代を使っています。「iPhone SE」が「iPhone」シリーズの人気トップになったのは、低価格であることと、扱いやすいサイズ感であることが魅力となっているかと思います。直近のシリーズに関しては価格がネックになっている人も多いのではないでしょうか。
――通信サービス別のOSのシェアのグラフも非常に面白いものでした。オンライン専用ブランドやキャリアサブブランドといった若い世代向けのサービスに「iPhone」が多いのはわかりますが、意外だったのは格安スマホ(MVNO)に「Android」が63%もいることです。
格安スマホといえば、スマホのスキルが高く、こだわりを持つ、若い世代が多いという印象を受けますが、これはどういうわけでしょうか。彼ら/彼女らになぜAndroidが受け入れられるのでしょうか。
調査担当者 通信サービス契約の際、端末とセットで販売することが一般的ですが、格安スマホは「iPhone」のセット販売ができている会社が少ないのです。Appleとの契約で販売量を求められるためです。
また、格安スマホ利用者はモバイル関連のリテラシーが高い、かつ料金の安さを重視する人が多いため、多様な端末があり、価格も「iPhone」に比べ比較的安価な「Android」を選ぶ傾向にあると考えられます。
(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)