EUはオンラインコンテンツ規則を順守するために、SNSを運営する企業にコンテンツモデレーターの配備を義務付けています。ロイターが、イーロン・マスク氏が買収したX(旧Twitter)にはわずか2294人のコンテンツモデレーターしか抱えておらず、YouTubeやTikTokと比較するとかなり少ないと報じています。

Musk's X has a fraction of rivals' content moderators, EU says | Reuters

https://www.reuters.com/technology/musks-x-has-fraction-rivals-content-moderators-eu-says-2023-11-10/

EUがSNSの運営企業などのオンラインサービス提供者に対して、違法なコンテンツがアップロードされた場合の対応について規則を定めた「デジタルサービス法」は、2022年11月に施行されました。

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このデジタルサービス法によって、XやGoogle、Apple、Meta、Microsoft、TikTokを運営するByteDanceなど、多くのテック企業がプラットフォーム上の違法なコンテンツや有害なコンテンツに対する取り締まりを強化することが義務付けられています。

しかし、イーロン・マスク氏によって2022年10月に買収されたTwitterでは、買収直後から従業員のおよそ3分の2を解雇する大規模レイオフが実施されたことで話題となりました。この影響で、TwitterでEU対応を担当していたブリュッセル支社が閉鎖しており、EUの担当者はTwitterのコンプライアンス管理について懸念を示しています。

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ロイターによると、2023年9月にEUへ提出された報告書で、Xのコンテンツモデレーターは2294人とあり、Googleが運営するYouTubeが1万6974人、TikTokが6125人であるのに比べてかなり少なかったことが明らかになったとのこと。

Xがコンテンツモデレーターの数を絞っているということは、Xがフェイクニュースやヘイトスピーチなど、違法あるいは有害なコンテンツに対処する能力が制限されることを意味します。こうしたコンテンツに対応できない場合、Xには最大で全世界売上高の2%という巨額の罰金を科される可能性があります。また、他のプラットフォームよりも管理能力が低いと判断されるため、ユーザー数の減少につながります。



ロイターに証言したEUの高官は「規制当局は、Xが競合サービスに追い付くためにコンテンツモデレーターの人数を増やすように圧力を感じることを期待しています。デジタルサービス法には同調圧力という重要な側面があるのです」と語っています。

なお、デジタルサービス法についてはEUの執行部が大手テック企業の法務部に対処できず、取り締りに企業間格差が生じるのではないかと懸念されていました。そのため、欧州委員会はデジタルサービス法の執行を担当するスタッフ数を50名から120名に増やしたそうです。