この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。

小売業が急激に変化しているこの時期、スニーカーのリセールプラットフォームは、新年に期待を寄せている。

これらの企業の多くにとって、2021年はスニーカーのリセールの当たり年だった。これは特に、消費者がお金を消費する欲求を持っていたのが理由だ。しかし最近は、買い物客がインフレを理由に支出を切り詰めていることから、一部のリセール業者は売上が低迷している。今年、リセールされたナイキ(Nike)モデルのなかには、2020年よりも安い価格で取引されたものもあった。2022年に、全世界のスニーカーの販売額は前年比2.7%増と、2021年の同19.5%増に比べて成長は鈍化した。創設から2年のインポッシブルキックス(Impossible Kicks)は前年比10%の減収となったが、創設者のジョン・モカドロ氏は、これが「多くの小売ブランドと同水準か、実際にはそれ以上」だと語り、全体として「我々の顧客は、自由裁量の支出の減少に対して例外的に立ち直りが早かった」と述べた。

スニーカーのリセールには依然として需要がある。特に、未使用のグッズや、丁寧に使われたシューズなど、さまざまなニーズに対応するプラットフォームが出現したことが需要を促進している。一部のマーケットプレイスは、チャンキーな「ダッドスタイル(おじさんスタイル)」のスニーカーへの関心や、新しいコラボレーションの台頭など、最近のトレンドを生かしながら経営を維持してきた。2023年に何が人気を博したか、そして2024年にビジネスを成功させるため、スニーカーのリセラーがどのような手段をとっているのかを見てみよう。

ランニングシューズの人気が急上昇



ナイキ、ジョーダン(Jordan)、アディダス(Adidas)は長年にわたってスニーカーのリセール市場を独占してきた。特に、ダンク(Dunk)やエア・ジョーダン(Air Jordan)などのシルエットは人気が高い。しかし、昔ながらのランニングシューズのブランドを買うことで、クローゼットのバリエーションを増やそうと考えるスニーカーヘッズ(愛好家)が増えてきている。

実際に、米モダンリテールの入手した情報では、ニューバランス(New Balance)は現在、ストックエックス(StockX)で4位のブランドで、インポッシブルキックスでの売上は前年比で15%も増加している。ストックエックスのスニーカーおよびコレクターズアイテム担当ディレクターを務めるドルー・ヘインズ氏は、ニューバランスへの関心が高まった理由を、新しいシルエットの成功と、ジョウンド(JJJJound)やエメレオンドレ(Aimé Leon Dore)などとの話題のコラボレーションのおかげだとしている。

インポッシブルキックスでは、イージー(Yeezy)などのブランドと比べて、「ニューバランスは実際にフロントランナーになっている」と、モカドロ氏は米モダンリテールに語った。

しかし、ストックエックスのヘインズ氏が2024年に注目している「急成長ブランド」があるとすれば、それはアシックス(Asics)だ。アシックスの売上は8月にストックエックスで新記録を達成し、「10月にもさらに新記録を達成し、11月や12月にも過去最高を更新する見込みだ」と、同氏は説明した。ニューバランスと同様、アシックスも、「コラボレーションのプレイブックを有効に活用しつつ、消費者が求める履き心地の良いモデルを投入することに成功した」と同氏は付け加えた。7月の時点で、ストックエックスでのアシックスの売上は前年比72%増だった。

ホカ(Hoka)や、サロモン(Salomon)、オン(On)のように、かつてはニッチだったブランドも主流になりつつあり、売上が急増している。ストックエックスでのオンの7月の売上は、前年に比べて1万5000%以上の増加を見せた。オンはその翌月に、純売上が6四半期連続で過去最高を記録したと報告した。ホカの親会社であるデッカー(Decker)は、ホカの「ブランド推進力」に基づいて2024年度の業績予想を引き上げたと、CEOを務めるデイブ・パワーズ氏は7月に明かした。サロモンもまた、リアーナ(Rihanna)などのセレブリティが同ブランドの商品を身に付けたことで推進力を増している。

結局のところ、優れた商品を作り、革新を続けるランニングシューズブランドが勢いを維持していると、リセールプラットフォームであるストックエックスは米モダンリテールに語った。さらに、パンデミックのあいだに多くの人々がパフォーマンスシューズを選ぶようになり、この傾向は今後も続くと考えられている。

流通する資金が限られている現状で、「消費者の選択は厳しくなり、その好みも変化したように見受けられる」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のシニアアナリストを務めるスカイ・キャナバス氏は語る。「スニーカーのリセール市場は、少しずつ多様化が進んでいると思われる」。

快適性は引き続き重要



リセールプラットフォームでは、リラックスできる快適なシューズへの需要が新年にかけて高まることも予測している。ランニングシューズと同様、スリッポンやサンダルなどの快適なシューズも、パンデミックのあいだに人々がオフィスに通勤する必要がなくなったことから売れ筋になった。

「アグ(Ugg)、ビルケンシュトック(Birkenstocks)などのブランドは、誰もが快適性を求めている時期を利用して成功し、そのまま注目を集め続けている。飽き飽きしたとしても、これはトレンドであり続けるだろう。それどころか、快適なシューズへの需要は、これまでよりもさらに流行るかもしれない」と、ヘインズ氏は述べている。

冬が近づくにつれ、ストックエックスではさらにアグへの関心が高まっており、自社のホームページやSEO(検索エンジン最適化)で、アグをさらに押し出すことを考えていると、ヘインズ氏は説明する。7月時点で、ストックエックスにおけるアグの売上高は前年比で836%も増加し、ビルケンシュトックの売上も492%増加した。

快適性重視の多くのブランドもまた、コラボレーションによって売上が増加したと、キャナバス氏は指摘した。クロックス(Crocs)は今夏、NBA(ナショナルフットボールアソシエーション)、マインクラフト(Minecraft)、タコベル(Taco Bell)など人気のフランチャイズとのシューズを発売したことで、四半期の収益が過去最高の1億ドル(約150億円)を超えたことを報告した。「クロックスは、限定版や特別版に強く特化しており、これらの商品は完売する。そのため、本当に欲しい人は、リセールプラットフォームで買わなければならない」と、キャナバス氏は述べる。バービークロックス(Barbie Crocs)の一部は、元の価格の2倍近くでeBayで販売されている。

店舗内でのトライオン



スニーカーのリセールの多くはオンラインで行われるが、実際に店舗で買い物をしたい人のために、小売店舗を開設するプラットフォームも増えてきている。

パンデミックの最中に創設されたインポッシブルキックスは、そうした企業のひとつだ。ウェブサイトを通じて商品を販売しているが、売上の90%は店舗、10%がeコマースによるものだ。現在18店舗を構えているが、年末までに19店舗目をラスベガスに開く予定だ。来年は10店舗または11店舗をオープンし、合計で29店舗または30店舗に増やす計画だ。店舗の多くはショッピングモールやプレミアムアウトレットにある。

「当社は拡大計画を極めて積極的に推進している。当社のような種類の商品とサービスに対して、利用者は商品を試着したり、さまざまなスタイルを見たりすることを望む。何が起こっていたかというと、ハイプスニーカーの場合は特にそうだが、とにかく時間がかかりすぎる。そして、利用者は待ちたくないのだ」と、モカドロ氏は語る。

ストックエックスは10月初旬、ニューヨーク市にあるドロップオフ拠点に、初の「ショッパブル・エクスペリエンス」を開設した。この店舗は、ジョーダンブランド(Jordan Brand)やナイキなど、主要なスニーカーブランドから約50SKUを取り揃えて開店した。この品揃えは「その日や週に入手可能な商品」に応じて変更されると、共同創設者でプレジデントを務めるグレッグ・シュワルツ氏は9月に米モダンリテールに語った。

「多くの人々が店舗を訪れ、最初に口にする質問のひとつは、『試したり買ったりできる商品はあるか?』だ。そのため、それをテストして実現できることに期待している」と、同氏は述べている。

eBayは4月、2日間のスニーカーのポップアップ店舗を、エア・ジョーダン・ワン(Air Jordan 1)の発祥地であるシカゴに開設した。「ジ・エイティーファイブ・ショップ(The ’85 Shop)という名前のこのショップでは、オリジナルの1985年のエア・ジョーダン・ワンを、すべての配色で揃えた完全なコレクションを展示していた。このポップアップ店舗は、eBayの有力スニーカー販売業者の数者と共同で企画されたものだ。同社によれば、スニーカーヘッズたちは2022年、1日10万回以上も「エア・ジョーダン・ワン」を
検索したという。

迅速な配送



スニーカーヘッズの多くは、商品を短期間で入手することを望んでいるため、いくつかのリセール企業は迅速な配送に多くのリソースを割こうとしている。

ストックエックスは9月、24ドル95セント(約3740円)の手数料で、3営業日以内に商品を発送する新しい速達配送サービス「エクスプレスシップ(Xpress Ship)」を開始した。このサービスを開始するのに伴い、ストックエックスはニュージャージーに新しい速達フルフィルメントセンターを建設した。取引が行われる前に商品を事前検証し、センターに保管することで、時間の節約に繋げる。また、スティーブマデン(Steve Madden)などのブランドのリセールプログラムを運用するリキュレート(Recurate)は9月、UPS、カナダ郵便公社(Canada Post)、DHLなどと提携し、効率化された返品と迅速な配送を行う、ブランド向けサービスを開始した。

現在、ゴート(Goat)、デポップ(Depop)、eBayなど、多くのアパレルやフットウェアのリセールプラットフォームの売り手は、いずれかの形で速達または迅速な配送を行っている。ポッシュマーク(Poshmark)は、「トップの売り手の多くは、購入したその日のうち、または繁忙期も含めて土曜日に商品を発送することで知られており、それを誇りに思っている」と、最高執行責任者を務めるジョン・マクドナルド氏は米モダンリテールにeメールで答えた。

ストックエックスではこれまで、「商品を顧客へ迅速に届けるのに慣れていなかった」と、ヘインズ氏は語る。「しかし、2023年にeコマースを行っているブランドとしては、迅速な配送ができなければ、間違いなく少し遅れをとってしまう」。同氏は、2024年の目標は、より多くの売り手と買い手にエクスプレスシップを使ってもらい、このサービスの利用対象商品数を増やすことだと付け加えた。

「利用者が数日間で商品を受け取れるのが普通になり、それが当社のビジネスのごく一部だけでなく、大部分で使用できるようになるのが望ましい」と同氏は述べた。

[原文:4 trends that sneaker resale platforms are keeping an eye on in 2024]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
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