【ステアリング形状が違う】なぜスバル ソルテラは「楕円」に変えて、トヨタbZ4Xは「丸形」のままなのか?

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■スバルは変えた。トヨタはそのまま

10月25日のプレスデーを皮切りにスタートしたジャパンモビリティショー2023。そのタイミングに合わせ、トヨタとスバルの共同開発で生まれた兄弟BEV、トヨタbZ4Xとスバル ソルテラが改良を発表した。

その両実車はジャパンモビリショーにも展示されていたが、なんとステアリング形状が違っているではないか。正確には、スバルは変えてトヨタは変えなかった。2022年4月、両モデルのデビュー時にはどちらも同じ丸形のステアリングを採用していたのに…。

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まず、今回なぜスバルが丸形から楕円に変えたのか。その理由は「メーターを見やすくする」ためだ。

そもそも、デビュー当時から両車のコックピットは斬新。ステアリングが手前にあり、メーターはかなり遠目で高い位置に配置されている。このメーター配置はトップマントメーターと呼ばれ、運転中に前方を見ながら少ない視線移動で瞬時に情報を得るためのものだ。

しかし、スバルいわく「ユーザーからは、着座位置によってはメーターが見にくいという声がありました」。それを改善すべく、今回の改良でステアリングの上下を切ったような楕円タイプに。ステアリングがメーターにかからないようになり、視認性を向上させたわけだ。このステアリングは、オーバルステアリングホイールと呼ばれている。

それに対してトヨタは変えなかった。「この丸形ステアリングは真円タイプ。そのステアフィールのよさを大事にしたかった」というのがトヨタの言い分。もうひとつは、「丸形のほうが、ほかのクルマからすんなり乗り替えてもらえる」という判断からだ。

この両者の違いは、仕向地の多寡にもよるようだ。bZ4Xは、これから海外販路をさらに拡大していく予定。ご存知のようにトヨタは次世代BEVを開発中で、どうしてもそちらに注目が集まるが販売はまだ先。目先の「2026年までに150万台のBEVを販売」という目標を達成するためには、まだまだbZ4Xの販売もがんばらなくてはいけない。もっと広く、多くの人に届ける必要がある。

そこで、一般的な丸形ではなくなったスバルに話を聞くと、「(ステアリングを持ちかえるときも含めて)この楕円タイプにもすぐ慣れていただけると思います」。さらに、「このステアリングは新開発なので、タッチセンサーを組み込めました。渋滞時にハンズオフできる機能など、ADAS関連が進化しています」というのだ。

ちなみにbZ4Xは今回の改良でハンズオフ機能などの追加はない。ADAS関連で、両車の装備に差がついたカタチだ。

見た目はもちろん、じつはサスペンションのセッティングなども含めて両車の違いはかなりあった。ただ、今回の改良でさらにその違いが広がったのは事実。兄弟車とはいえ、互いの思惑にはかなり違いがあるのだ。

そのほか、両車の改良メニューは下記のとおり。同じものもあれば、違うものもある。それぞれのユーザーが求めるもの、開発の優先順位などで違いが出てきている。

なお、ソルテラの販売方法は変わらず。bZ4XはこれまでKINTO(サブスク)のみだったが、ついに一般販売も開始する(11月13日より)。



■両車共通の改良内容

●急速充電時間の改善
・冷間時のバッテリー暖機性能向上などにより、低外気温下における充電時間を短縮
→駆動用バッテリー充電警告点灯から充電量の約80%までの充電時間を最大30%削減


■bZ4Xの改良内容

●BEVとして実用性向上
・消費電力の抑制と空調制御の最適化により、実航続距離を延伸(WLTCモードの数値は変わらず)
→電費向上に貢献するAUTO(ECO)モードを自動起動化。消費電力が高いエアコンへの依存度を下げ、シートヒーターやステアリングヒーターなどを通じて直接的に乗員を暖めることで省電力を実現
→空調制御の最適化を行い、消費電力を抑制(AUTO(ECO)モード時以外も含む)
→湿度センサーを採用し、フロントガラスの曇りを検知。外気取り込みのタイミングをより精密にコントロール

・充電中における車両充電状態の情報をメーター表示に追加
→現充電残量から、長距離ドライブ時などの急速充電器使用時に重要となる80%までの充電時間と、現充電残量でのエアコンON・OFF別の走行可能距離をメーターに表示 ※両表示の並べることで、エアコンON・OFFの航続距離の違いがひと目でわかるようになった

●装備の充実
・後席シートヒーター、助手席8Wayパワーシート、ブラック塗装のホイールアーチモールをZグレードに標準装備
・フラッシュハザードランプ(後方車両への接近警告)を全車に標準装備

●Gグレードの追加設定
・必要な機能や装備を厳選して価格を抑えたGグレードを新設定
→主な装備:18インチアルミホイール、4眼LEDヘッドランプ、12.3インチHDディスプレイなど

・Gグレード(FWD)のWLTCモード一充電航続距離は567km(Zグレード(FWD)は同559km)

●価格
Zグレード FWD:600万円 4WD:650万円
Gグレード FWD:550万円 4WD:600万円

■ソルテラの改良内容

●安全性能の充実
・アドバンストドライブ(渋滞時支援)
・レーンチェンジアシスト(LCA)
・フロントクロストラフィックアラート(FCTA)
・後方車両への接近警報
・セカンダリーコリジョンブレーキ(停車中後追対応)
・後方車両接近告知
・周辺車両接近時サポート

●機能装備の充実
・オーバルステアリングホイール
・パドルスイッチでのS-PEDALモード選択機能(AWDのみ)
・フロントパワーシートの調整範囲拡大
・ナノイーX(ET-HSグレード標準装備)

●価格
ET-HSグレード AWD:715万円
ET-SSグレード FWD:627万円 AWD:671万円

〈文=ドライバーWeb編集部〉