持続可能な社会をつくるための「SDGs」。2030年までの達成をゴールとした「持続的な開発目標」を指し、世界的に注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。

今回のテーマは「自分が“もしも”のときの準備」について。SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんにつづってもらいました。

考えていますか?もしものときのこと

現在50代。最近同世代で集まると、親の介護やその先のことが話題にのぼることが多くなりました。老いはだれにでも訪れるものです。しかも高齢者が多い日本は、これからどんどん亡くなる人が増える多死社会になっていきます。「もしものとき」自分はどうしたいか、みなさんは家族に伝えていますか?

そんなことを考えるのは縁起でもない、などと思うかもしれませんが、永遠に生き続ける人はいません。「もしものとき」は「絶対に」訪れるのです。

そのときにいちばん大変なのは、残された家族。子どもや配偶者が困らないためにも、元気なうちにちゃんと死後のことを考えて伝えておくことは、とても大事なことです。

●終活の必須アイテム「エンディングノート」

そういえば、最近よく耳にするエンディングノートは、まさに“終活”の必須アイテム。どういうものか、興味があったので書店に行ってみました。

探してみると遺産相続などのコーナーにありました! 呼び方はいろいろですが、その種類の多さにびっくり。お値段はだいたい1,000円代前半が多く、高くても2,000円くらい、どれも字が大きい(笑)。

終末期の延命治療は? 銀行預金などはどうなるの? 葬儀の形式、お墓は? といったようなことだけではなく、人生の記録や、家族や友達へのメッセージを書くところもあります。

●今一度考えたい「臓器提供の」意思表示

結構なページ数で、これをすべて埋めるのは結構時間がかかりそうです。私の葬儀かぁ…やってもいいけれど明るい音楽をかけて、遺影は盛れてる写真がいいとか、仏花はやめてその分寄付に回してほしいとか、色々注文が出てきます。その中でも条件が合えば絶対にやりたいのが臓器提供。

健康保険証や運転免許証の裏、マイナンバーカードにも、もしものときに臓器提供者=ドナーになるかを記載する意思表示覧があります。私はこれらにすべて記載していますが、エンディングノートでは意思を表示しているカードの「保管場所」を書くようになっていました。

 

お財布の中とか、共有の引き出しの中とか見つけやすい場所にしないとだめですね。

●「臓器提供が必要なとき」は身近に起きること

私は、脳死でも心停止でも提供できるものはなんでも提供してほしいと書いています。

脳死の状態からは、心臓、肺、肝臓、腎臓、眼球などが提供でき、最大11人の方を救うことができるのです。そんなことしたら天国で困る…という人もいますが、冷静に考えると火葬して灰になります。だったら、だれかの役に立ちたいと私は思います。

こちらの女性は、私の友人です。(写真右)

見るからに元気そうですが、じつは余命宣告されるほど重い病気を患っていました。医師から「心臓移植以外に助かる道はない」と言われ、補助人工心臓を体の中に埋めこみドナーが現れるのを待つことに…。そして、5年後、幸いにも心臓移植を受け命をつなげることができました。今は世の中に恩返しをしたいと、地元で子ども食堂をやっています。元気になって本当によかったです。

これまで提供する側の立場でお伝えしてきましたが、もしかしたらある日突然、自分や家族が移植でしか助からない病気になることもあるのです。彼女も仕事をもちながら2人の子育てをしていたときに突然発症しました。

●SDGsが目指す「すべての人に健康と福祉を」のゴールとは?

SDGsが目指す17のゴールの中に「3:すべての人に健康と福祉を」があります。新型コロナウイルスの世界的なパンデミックを経験したことで、だれもが健康やいのちの大切さを痛感したのではないでしょうか。

いつかは訪れる最期のときに「いのちのリレー」ができるのが移植医療です。これをもっと多くの方に知ってもらうため、10月は街のあちこちが移植医療のシンボルカラーのグリーンに点灯されています。

日本では臓器移植を待つ人が1万6,000人いるのに対し、その約3%しか移植を受けることができません。ヨーロッパやアメリカに比べて臓器提供者(ドナー)が極端に少ないのです。

とはいえ、ドナーになるってどういうことか、いまいちよくわからないという方も多いと思います。そういう場合は、「グリーンリボンキャンペーン」のサイトにわかりやすくまとまっています。

私の友人を救ってくれたドナーの方のように、私も人生を終えるときにだれかを助けたい。

大事なこととはわかっていても、家族との会話の中ではついつい避けてしまいがちなテーマでしたが、ちゃんと伝えるために少しずつエンディングノートを埋めていこうと思います。家族のため、自分のため、そして病に苦しむだれかのために。