パレードや仮装大会など、一大イベントが開かれる「ハロウィーン」。日本ではかなりの盛り上がりを見せていますが、遠く離れたフランスではどう過ごしているのでしょう? フランス文化研究者のペレ信子さんがその様子を教えてくれました。

フランスのハロウィーンは日本より「静か」

10月になり街にはハロウィングッズがあちこちに飾られ、季節限定のお菓子もスーパーに並ぶようになりました。日本ではすっかり定着した印象のハロウィーンですが、フランスではそうでもありません。その理由を紹介します。

●じつはフランスであまり定着していない

現在「ハロウィーン」といえば、子どもたちが仮装して近所の家々を回りながら「Trick or Treat」と言ってお菓子をもらう行事。夜に仮装して歩き、お菓子がもらえるなんて子どもには絶対楽しいはずです。しかしこのイベント、私がフランスに住んでいた数十年前は全く知られていませんでした。

私の子どもたちが小学生の頃、近所(日本でしたが多くのフランス人が住む地域)で大々的にハロウィーンをすることになりました。それぞれの家をお化け屋敷風にデコレーションして、お母さんたちが魔女に変装。子どもたちが来たら歌を歌わせたりクイズを出したりして、お菓子をあげることに。数年前から始まったイベントのようでしたが、私には初めてのことで、とまどいながら準備しました。このとき、フランスもずいぶんアメリカ風になったのだなと思いました。

●「Trick or Treat」よりも「お彼岸」に近い

その頃はハロウィーンが爆発的に流行って、フランス人の定番行事になっていくのだろうと想像していました。が、数年経ってみるとそこまで浸透している感じはありません。もちろん、スーパーや繁華街にハロウィーンに関する商品がたくさん並ぶのは日本と同じです。

じつはフランス人にとって、10月31日のハロウィーンよりも11月1日のToussaint(万聖節:すべての聖人の祝日)の方が大切なのです。翌日の11月2日がFête des morts(死者たちの日)になっていることから、11月1日には日本のお彼岸やお盆のようにお墓参りをする人が多いのです。この静かな伝統の方が、ハロウィーンのお祭り騒ぎよりも定着している印象です。

●ハロウィーンが流行らない理由は2月の「謝肉祭」

子どもに楽しいはずのハロウィーン。なぜフランスで爆発的に流行らないのでしょうか。それは2月のマルディ・グラ(カーニバル、謝肉祭)があるからだろうと思います。昔はマルディ・グラの日は宗教的な断食前の大パーティで仮装し、歌って、踊って、飲んで、食べてというのがならわしでした。今でもリオのカーニバルを見るとその興奮度が分かりますよね。

現在のフランスでは地域によりますが、そこまでの興奮はありません。それでも子どもたちにとっては仮装して学校に行ける日です。この日、子どもたちは思い思いの格好で登校してきます。

日本人にとっては2月のとある普通の日。東京にあるフランスの学校に通っていた子どもたちは、「おかしな格好で登校しているな」と電車の中でジロジロ見られたそうです。小さい子はプリンセスやスパイダーマンになっていることが多いけれど、高校生はモナリザになっていたり、パジャマにスリッパでぬいぐるみを抱っこして来た生徒もいたそう。「この子、寝坊したんだな」と電車の中で憐れみの眼差しで見られていたとか。放課後には仮装大賞も決めたそうです。

●フランスのハロウィーンは、静かにお墓参り

お祭り騒ぎのイメージのあるハロウィーンですが、フランスでは「そろそろお墓参りに行こうか」という時季。静かな秋の到来を感じるタイミングなのです。