ESSEonlineで2023年9月に公開されたなかから、ランキングTOP5の記事を紹介します。

画廊と美術館での学芸員経験を持ち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さんは、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。お金を極力使わない「ケチカロジー」という言葉を生み出し著書も上梓している小笠原さんは、極力ものをもたないようにしています。食品ロスなどが叫ばれている今、生ゴミや無駄を出さない暮らしについて教えてもらいました。

記事の初出は2023年9月。内容は取材時の状況です。

食品ロスや無駄を出さない暮らし

「生ゴミが多いなぁ」と思うことはありませんか?

生ゴミの量は食品ロスにもつながります。最近、地元のタウンニュース紙に、ロス削減の記事が出ていました。『買いすぎゼロ・つくりすぎゼロ・食べ残しゼロ』の推奨です。市ではゴミ処理によほど困っているようで、路線バス内では「生ゴミを減らそう、水きりをしよう」という放送が流れます。

年金暮らしであまりものを買えない私は、ほとんど買いすぎがなく、少ない量の食材でやりくりするのでつくりすぎもなく、ケチな私には食べ残しなどもってのほかです。そんな私の生ゴミやものを減らした暮らしをご紹介します。

●生ゴミはなるべく生まない食生活

お茶を飲めばその葉まで食べますし、大根やニンジン、リンゴはむろんキウイや柿の皮、キャベツの芯、それにスイカの白い部分、またはゴーヤのワタやピーマンの種、焼き魚の頭など食べられる限りは骨まで食べつくしますので、ゴミは微量です。ジャガイモの皮をむくときは、流しに直接皮を落とし、あとは指でつまんでゴミ袋に入れるので水分はほぼゼロです。

●ティッシュペーパーも使わない

ティッシュペーパーもゴミを膨らませる要因です。汚れをふく場合はなるべくふきんを使ったり、必要な分だけちぎれて、水に流すこともできるトイレットペーパーを代わりに使っています。体裁のいい箱に入れればリビングでも気になりません。汚れたプラスチック容器などは、切り刻んで捨てるとかさばらず、チラシなどは資源ゴミに出すので、生ゴミになるものは少量です。

●調理グッズや食器も最小限

流しに、生ゴミ用の三角コーナーを置きませんし、台所には調理具も少なく、大小の鍋と、レンジ対応の一合炊き釜くらい。ザルは大小ありますが、おたまはレンゲで代用します。そんな私がよく使うのが、切れ味抜群の調理用ハサミです。包丁ももってはいますが、いちばん使うのは歯切れのいい果物ナイフとこのハサミです。

食器もわずかで、飯椀と汁椀。大小の小鉢と中小のお皿くらいです。食生活に器は欠かせませんが、食器戸棚を食器でいっぱいにするのも地震の際、危険です。大小で5器ほどが入れ子になった木のお椀をマイ食器とする僧侶に憧れる私は、いつかその程度に収めたいと夢見ています。食器は調理具と共にシンク下の収納に納まっています。

ものを少なくすると、今あるものを大事に扱うようになったり、大切に食べきったりして、物品ロスや食品ロスが減るものです。

●衣類や手紙、写真も徐々に処分

次に衣類のシンプル化を考えるとき、私の頭に浮かぶのはココ・シャネルです。彼女は亡くなるとき数着の黒いドレスしか持っていなかったそうです。衣装に生涯をかけた人の、それが最後の選択だったようです。なお、住まいについていえば、近代建築の巨匠ル・コルビジエの終の棲家は、16m×4mで約20坪の、みごとな小住居でした。

あるのが普通だけど、なくてもいいものは、意外とあります。たとえばキャスターつきのスーツケース。旅行の定番品ですが、私はもっていません。買えなかったからですが、それより在宅時家にどこに置くのかを考え、その大きさにぞっとしたからです。

あのスーツケースは、平地ではラクちんでも、階段で難航したり、着陸時に不明になったり、また、余計な物まで詰め込んでしまう可能性も大です。私は一か月旅行の際も、身から離さず機内持ち込みのバックパックで通しました。日本が誇る老舗鞄のリュックなら、どんな宿でも見劣りはしなかったと思いました。

ところで私は最近、終活の一つとして手紙を捨てることにしました。小学生時代から全部とってあったので、膨大な量でした。しかも住所氏名を切り刻んだので、中断しながら作業に数か月かかりました。

家族が撮影好きだったため、写真も膨大な量でした。これはそのまま捨てました。よく「思い出写真がなにより大事」と聞きますが、私は心に蘇るシーンだけで十分です。消えがたい記憶は、日常のふとした時の狭間から鮮やかに浮かび上がって、消えます。私はその瞬間が好きで、アルバムより大事に思っているのです。