季節の変わり目などは、落ち込んだりやる気が出なかったりと、心身に支障をきたすことも…。とはいえ、落ち込んだりすることは誰にでもあること。ここで、うつメンタルコーチの川本義巳さんに、うつという症状について詳しく教えてもらいました。

意外と知られていない「うつ」の正体

先日、私が行っている講座で「うつ」についてのお話をしたとき、参加者から「うつってそういうことなんだって初めて知りました」という感想をいくつかいただきました。また、日常的に知人などと会話をするときでも同じように反応されることも多いので、今回は、改めてうつという症状についてご紹介できればと思います。

私自身、20年ほど前にうつ病になりましたが、当時はうつについての情報がなかなか得られなかった記憶があります。元々心の問題ですから、あまり自分からそうだと言わない人も多く、どちらかというと「すごく大変な病気」のような印象がありました。

今でこそ、うつに関する情報も多く出回っていますし、著名人がうつ病であったことを告白したりしています。でも一方で、インターネット等を介して間違った情報も伝わりやすくなっています。そこで今回は改めて「うつとは何か?」について説明をしていこうと思います。

●「抑うつ」と「うつ病」の違いとは?

まず「うつ」というのは、すごく大きな“くくり”だと思ってください。例えば「趣味はなんですか?」と聞かれたとき、「音楽」と答える人がいますよね。この「音楽」というのは、とても大きなくくりです。実際に音楽というくくりを細分化すると、鑑賞、演奏、歌うことや作曲があったりと数多くの「音楽に該当する趣味」があります。じつは「うつ」も同じで、この言葉自体はとても大きなくくりになります。このうつの中には、もっと詳細が存在します。

その中でもまずは大きなグループとして「抑うつ」と「うつ病」というのがあります。一般的には、この2つは区別なく扱われることがあります。その結果、じつはうつ病なのに「うつ」と表現したり、抑うつなのに「うつ病」と表現したり、どちらのケースもある場合はまとめて「うつ」とか「うつ病」とか言ったりもします。

この辺りを整理するために、まずは抑うつとうつ病の違いを知ることが必要です。ちなみに「うつ状態」という言葉も存在しますが、これはここで言っている「うつ」と同じ程度の言葉だと理解してください。少し整理するとこういう形です。

(1) 「うつ」という言葉は、「うつ状態」と同じと考えてもいい

(2) うつには、「抑うつ」と「うつ病」の2つがある

●抑うつに該当する症状9つ

それではまず「抑うつ」から説明をしていきましょう。
じつは本人に起こっている症状的なものは、抑うつとうつ病で大きな違いはありません。ここがややこしいところなのですが、基本的には「抑うつ→うつ病になっていく」と考えるとわかりやすです。この抑うつの状態が病的と診断されると「うつ病」として治療対象になります。

その「抑うつ」ですが、医療機関の診断基準では次のように定義されています。

(1) 憂鬱な気分が続いている

(2) 物事に興味がなくなる、なにをやっても楽しめない

(3) 食欲がない、食べすぎる

(4) 眠れない、睡眠が浅い、寝すぎてしまう

(5) 話し方や動作が以前にくらべて遅くなっている

(6) 疲れがとれない、気力もわかない

(7) 「自分には価値がない」「自分が悪い」と考えてしまう

(8) 考えたり集中したりすることができなくなってきている。

(9) 死について考えることが多くなった

ざっとこんなところなのですが、これって日常的に起こっていたりしますよね?

誰しも悲しいことやつらいことがあれば、憂鬱な気持ちにもなるし、なにもやる気にならなくもなります。疲労感や焦燥感も感じますし、食欲にも影響が出たりします。そうなんです。抑うつというのは、ほとんどの人が普段でも陥る状態です。ただ、ほとんどの人はこれらが一時的なもので終わっているので、心身に大きな影響が出ないのです。

●うつ病という診断名をつけられるのはどんな状態?

では「うつ病」とはどういうことなのか? これには明確な基準があります。DSM−5という精神疾患の基準マニュアルがあるのですが、精神科のドクターは、ほとんどこれに基づいてうつ病という診断名をつけます。その症状は、抑うつとほぼ同じです。

ただ条件があって、先ほど紹介した9つの症状のうち、(1)憂鬱な気分が続いている、(2)物事に興味がなくなる、何をやっても楽しめない、の2つを含め、5つ以上「ほぼ毎日」「2週間以上」続き、生活に支障をきたしている場合、うつ病と診断されます。

ですので、当てはまるようでしたら、早めに病院受診をおすすめします。

私からのアドバイスとしては、抑うつ状態がまだそれほど長く続いていないようであれば、十分に解消することが可能ですので、早めに自分の生活を見直したり、専門家に相談したりすることを心がけてみてください。

秋は季節の変わり目で、自律神経の乱れなども影響しやすいので、ぜひ自分の症状に目を向けながら過ごしたいものですね。