パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが仮想通貨での寄付を募っているとの疑いから、イスラエルサイバー警察と国防省が関連する仮想通貨口座を特定し凍結しました。捜査には仮想通貨取引所のBinanceが協力したと伝えられています。

Israel freezes crypto accounts seeking Hamas donations, police say | Reuters

https://www.reuters.com/technology/israel-freezes-crypto-accounts-seeking-hamas-donations-police-say-2023-10-10/



In Wake of Attack on Israel, Understanding How Hamas Uses Crypto | TRM Insights

https://www.trmlabs.com/post/in-wake-of-attack-on-israel-understanding-how-hamas-uses-crypto

2023年10月7日、ガザ地区を拠点とする武装組織ハマスがイスラエルに大規模な攻撃を仕掛け、数千発のロケット弾を発射し、報道によればイスラエル側で少なくとも1200人が死亡しました。

ロイターなどによると、ハマスは資金調達のために長年仮想通貨を利用していて、今回の騒動では寄付を呼びかけるようなキャンペーンがSNS上で実施されていたとのこと。

口座の数や押収された仮想通貨の価値については明らかになっていませんが、今回イスラエル当局はハマスの口座を抑えることに成功しました。特定の背景にはBinanceの支援があったことが明らかになっていて、Binanceは広報担当者を通じて「テロ資金供与と闘う継続的な取り組みを支援するため、私たちは24時間体制で取り組んできました。私たちは世界中の法執行機関や規制当局と積極的に提携しています」との声明を発表しています。



ハマスが関与した過去の暴力事件では資金調達活動が活発化したことがわかっています。たとえば2021年5月、ガザ地区で大規模な武力衝突が発生した際には、ハマスが管理する講座に40万ドル(約6000万円)を超える資金が寄せられました。

金融犯罪対策を支援するTRMによると、少なくとも2019年初頭から、ハマスの軍事部門であるエゼディン・アル・カッサム旅団が軍事活動を行う目的で仮想通貨を利用してきたとのこと。ハマスは暗号化メッセージングサービスのTelegramでビットコインの寄付を募って資金調達のテストを行った後、自身のウェブサイトであるalqassam.netでの直接的な資金調達に移行しました。

2020年8月にはアメリカ司法省もハマスの仮想通貨取引に言及していて、組織が「洗練されたサイバーツール」を使用しているとの見解を示していました。このとき、アメリカの内国歳入庁犯罪捜査部門(IRS-CI)や連邦捜査局(FBI)などの共同捜査により、エゼディン・アル・カッサム旅団との間で資金洗浄を行った150の仮想通貨口座が押収されています。



TRMによると、エゼディン・アル・カッサム旅団は2023年4月27日に「寄付者の安全を懸念し、危害を避けるため、ビットコインによる寄付の受け取りを停止する」と発表していて、ハマスを支援しようとする者に対する敵対的な行為が激化していると、支援者に向けて声明を出していました。

支援経路の縮小が見られる中追い打ちをかけるように、今回のイスラエル当局による口座凍結が行われました。イスラエル当局はイスラエルへの攻撃を支援する他のグループの口座も抑えていて、2023年7月にはパレスチナ・イスラミック・ジハードに関連する数十の口座の押収命令を発令したほか、その1週間前にはイスラム革命防衛隊に属する仮想通貨の押収に成功しました。