『ジョン・ウィック』ドラマ「ザ・コンチネンタル」に『ターミネーター』の影響、テーマは「ディスコ・ノワール」
『ジョン・ウィック』シリーズ初の実写スピンオフドラマ「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」が完結を迎えた。各話1時間半、全3話という映画並のスケールで制作された本シリーズでは、若きウィンストンがコンチネンタルホテル・ニューヨークの支配人になるまでの物語が描かれた。
第1&3話でメガホンを取ったのは、アルバート・ヒューズ。『フロム・ヘル』(2001)『ザ・ウォーカー』(2010)『ブロークンシティ』(2012)などを手がけ、ダークな世界観の創造に長けたヒューズは、『ジョン・ウィック』ユニバースに新たな色を持ち込んだ。
THE RIVERが手に入れたオフィシャル・インタビューでは、ヒューズが本シリーズのテーマを存分に語ってくれている。シリーズを完走した方もそうでない方も、改めて作品に込められた想いを確認してみてはいかがだろうか。
「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」第1&3話監督 アルバート・ヒューズ オフィシャル・インタビュー © Amazon Studios── 「ザ・コンチネンタル」をどう表現しますか?
「ザ・コンチネンタル」は、映画『ジョン・ウィック』シリーズのスピンオフ作品であり、前日譚でもあります。1970年代のニューヨークが舞台なので、ニューヨークの印象派的な雰囲気が漂っている。映画のように現実的ではなく、逃避的でパラレルワールド的な世界観、独自のルール、音、色があります。そしてハードコアな現実には全く染まっていません。一番は観客を楽しませること。映画ではイアン・マクシェーンが演じたウィンストンが権力を握り、コンチネンタルホテルを乗っ取るまでの非現実的で楽しい、ワイルドな展開が描かれているんです。
── ファンが本シリーズを観るべき理由は?
映画シリーズのファンなら、「ザ・コンチネンタル」をより楽しめるはずです。映画に登場するキャラクターたちの始まりが描かれていて、違う時代の彼らを見ることができますから。これはジョン・ウィックが物語に登場する以前の話なので、彼はまだ出てきません。もしかすると思わぬ仕掛けがあるかもしれませんが。映画シリーズに登場していたキャラクターが、「ザ・コンチネンタル」では若い頃の姿で登場するかもしれません。皆さんもよくご存知のシャロンやウィンストンが登場する一方で、まだあまり多くを知られていないその他大勢のキャラクターも出てきます。
© 2022 Starz Entertainment, LLC── 本シリーズを作るにあたって影響を受けた作品はありますか?
クリエイターのカーク・ウォードは1980年代の作品やジョエル・シルバー映画、メル・ギブソンの『リーサル・ウェポン』、『48時間』『ターミネーター』といった作品が好きなんです。彼はとてもポップな感性を持っているんです。僕もそういった作品が好きですが、セルジオ・レオーニやマーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラも好きで。でもこの世界では、もっと多くのことを表現できる。必ずしも現実的である必要性はないと思っています。
── 70年代のニューヨークという設定にはどう向き合いましたか?
元々1975年のニューヨークという脚本でした。でもその時代のいろいろなタイプの音楽を取り入れたかったので「1975年ではなく1970年代にして、70年代の印象にしよう」と提案しました。ニードルドロップ※をやりたかったんです。白人の母と黒人の父の間に生まれた私の出生にも関係しているのですが、母はレッドツェッペリン、ピンクフロイド、ジミー・ヘンドリックスを、父はジェームス・ブラウンとモータウンを聴いていました。異なるジャンルの音楽が交じり合う空間にいたので、多くの刺激をもらいましたね。
※作中で既存曲を使用すること。
© 2022 Starz Entertainment, LLC── ウィンストン役のコリン・ウッデルの演技について教えてください。
表面的なことを言えば、彼はカメラに愛されていて、映画スターのように見えます。プロフェッショナルで研究熱心。アクションの訓練にも打ち込み、本当に心血を注いでいるのが分かるんです。
しかし、彼はとてもスマートで、ウィットに富んだツッコミもできます。出演者たちの芝居には台本にあるものだけでなく、アドリブも多くあります。彼はそのアドリブに上手く対応して、ツッコミを入れることができるんです。コリンはキャラクターを楽しむのがとても上手い。とても真っ直ぐに芝居をしていて、まるで映画スターのようでした。クラーク・ゲーブル、ハンフリー・ボガード、ハリソン・フォードみたいに。
彼はカメラに愛されていて、大きく失敗することはありません。彼と一緒に旅に出たくなるし、ウィンストンはスマートなキャラクターだってみんなにも思ってもらえるといいですね。きっとそうなると思います。
── シャロン役のオーディションはいかがでしたか?
シャロン役のオーディションには、本当に多くの人が応募してきました。5度も挑戦してきた人もいました。そして彼(アヨミデ・アデグン)がやってきたんです。彼はウェールズの演技学校に通っていたのですが、卒業する前に彼を引き抜いたんです。シャロン役を演じるためには、学校を卒業している必要があったので。ある日、撮影監督が私を訪ねてきて、“彼はどうしたんだ?彼には存在感がある”と言うんです。それを聞いて全員が確信しました。
© 2022 Starz Entertainment, LLC── KD役のミシェル・プラダについて教えてください。
ミシェル・プラダは特別な存在です。彼女はいわゆる女優としての訓練を受けているわけではないのですが、KD役で一緒に仕事をした初日から感じたのは、何かが起きてているということでした。彼女の目を見れば、キャラクターとして歯車が回っているのがわかります。彼女はあくまで自然体で、何かを引き出していました。一日一日の選択に対してとても賢く、キャラクターに厚みを持たせてくれました。非現実的な世界をリアルに見せてくれるんです。彼女はこのシリーズの心臓であり、魂だと思います。まさにこの物語が真に目指すことの核なのです。
── シリーズを通したウィンストンの心情の変化について教えてください。
ウィンストンの心情の変化は、脚本である程度示されていました。ですが、撮影現場でカーク(・ワード、製作総指揮)と私で調整を加えながら、俳優と一緒に作品を作っていくうちに、俳優がキャラクターに対して何をもたらし、何をしようとしているのかが見えてくるんです。エピソード1の最後にとても悲劇的なことが起こりますが、そこで彼のキャラクター性が明確になります。彼はもう詐欺師として人生を謳歌し、真っ当な人生を送る気はない。(『ゴッドファーザー』の)マイケル・コルレオーネそのものですよね。
彼はこんなことを望んでいませんでしたが、その状況に追い込まれてしまった。そして悲劇が起こり、突然彼はひとつの使命に囚われることになります。彼の性格はすっかり変わってしまい、その使命を達成した時、彼はまた別人になる。彼はカメレオンなんです。よほど親しくない限り、彼の意図は信用できない。そう思うでしょう。彼はかなり早い段階で心に傷を負い、その絶望が彼を使命に向かわせただけだったのです。
© Lionsgate── 最大の挑戦は何でしたか?
ファンの期待に応えることでした。既存のコンテンツだから、プレッシャーも大きいし挑戦的でもありました。でも、それを作り上げるには、新しい世界を創造しなければなりません。ニューヨークではあるけれど、新しいニューヨーク、正確には古いニューヨークなんです。だから、スタッフ、カメラマン、撮影監督を鼓舞するような、私が“パワーワード”と呼んでいるものを考え出さなければなりませんでした。ネオン・ノワールやネオ・ノワールという言葉を聞いたことがあると思いますが、私が思いついたのはディスコ・ノワールでした。ディスコとノワールを思いついても、それを組み合わせるのは難しかったです。どうやって実現するのか?それがどんな意味を持つのか?衣装、音響、セットデザイン、フィーリング、進歩的な文化、全てが重要でした。
もう一つの大きな挑戦は、観客を決して退屈させないという、自分たちに課した義務でした。小道具、歌、衣装、芝居、撮影、照明、音響、その全てにおいて。観客が「おっ、何だ?これは面白い」って絶え間なく感じてもらうことが不可欠でした。
「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」全3話はPrime Videoで独占中。