混雑が増している「つくばエクスプレス」の8両化は長期にわたる事業となりますが、コロナ禍で事業の再検討も実施されたようです。現在どのような状況なのでしょうか。

コロナ禍で8両化を再検討も「引き続き推進」へ

 つくばエクスプレス(以下TX)の沿線9区市(つくば市、つくばみらい市、守谷市、柏市、流山市、三郷市、八潮市、足立区、荒川区)は2023年9月、同線の混雑緩和対策などを運営会社の首都圏新都市鉄道に連名で要望しました。


つくばエクスプレス(画像:写真AC)。

 TXの1日あたりの旅客輸送人員(2022年度)は34.9万人で、前年度より4.3%増加しています。新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行し、移動制限がなくなったことから、利用は戻りつつあります。沿線自治体は、現在6両編成となっている車両を早期に8両編成に増結することを要望しています。

 TXを運営する首都圏新都市鉄道は2019年、抜本的な混雑緩和対策として、8両編成化事業の実施を決定しました。ただ、コロナ禍で生活様式や鉄道事業者の事業環境が変化したことから、混雑状況の中長期的な見通しや会社への影響などについて、総合的に検討を実施したそうです。8両編成化についても再検討を行ったといいます。
 
 その結果、将来の混雑率については、利用状況の変化を考慮しても、長期にわたって150%超になると想定。同社は「質の高い輸送サービスを末永く提供していくため、8両編成化事業は必要不可欠な事業と判断し、引き続き推進することになりました」(経営企画部広報課)と話します。

 ただ、8両化が実現するのは2030年代初頭になる予定で、実現はまだまだ先の話です。時間を要する理由は、駅の8両対応化などの工事が、終電から始発までの短時間での作業になることや、資材の搬入箇所が限られているためです。

「8両編成化」どこまで進んだ?車両はどうなる

 8両化にあたっては、各駅のホームと車両留置線の延伸、変電所の増強、機械設備や信号・通信設備の新増設などを行う必要があります。2023年10月現在で秋葉原、新御徒町、浅草、南千住のホーム延伸工事が完了しているそうです。
 
 現在は青井と六町のホーム延伸工事が進められており、2023年度末に完成する予定。また、2024年度中に北千住駅のホーム延伸工事の着手を目指して検討が行われています。今後は8両編成の運用開始時期に合わせ、ホームドアの設置工事や信号・通信工事なども実施される見込みです。

 ただ、全編成を8両化するのか、それとも一部編成のみ8両化するのかは未定とのこと。また、2両の中間車のみを新造して8両化するのか、それとも最初から8両編成を新造するのかも決まっていないといいます。
 
 首都圏新都市鉄道は8両編成化について、「抜本的な混雑緩和対策であるため、8両編成の運行本数については、今後の混雑動向などを踏まえて検討していきます」と話します。また、「車両についても既存車両の状態やお客様サービスのあり方などを踏まえ、適切な導入形態を今後検討していく予定です」としています。