セルフのガソリンスタンドでは、給油ノズルを手にする前に「静電気除去シートに触れてください」と案内されます。しかし有人のスタンドなどでは店員がシートに触れないばかりか、シートそのものがない場合もあるのはなぜでしょうか。

とにかく触れ! 静電気除去シート

 セルフスタンドでは多くの場合、ガソリン計量器に「静電気除去シート」として、カスタネットのような形の丸く黒いオブジェクトが据え付けられています。「静電気除去シートに触れてください」などと、給油ノズルを手にする前に音声で案内もありますが、触るのは利用者のみで、有人スタンドやセルフスタンドのスタッフが触る姿はあまり見られません。なぜなのでしょうか。


ガソリン計量器に設けられた静電気除去シートのイメージ(画像:写真AC)。

 セルフスタンドで利用者が静電気除去シートに触れずに給油作業すると、人体に蓄積された静電気が着火源となって、思わぬ火災事故を引き起こすおそれがある――こう警告されています。この除去シートは、給油ノズルを持つ全体でも指先のみ、どちらで触れても問題はありません。

 ただし、手袋を着用したままなどは厳禁で、必ず素手でシートに触る必要があります。加えて、給油作業は全ての操作をひとりで行うことなどが、セルフスタンドでは利用時の注意点として掲げられています。同乗した子どもなどに給油作業をさせることなどは厳禁とされています。

スタッフは「触らず給油OK」なぜ?

 一方、静電気除去シートがあるのはセルフスタンドばかりで、フルサービスのスタンドなどでは、店員がいちいちこのようなシートに触れる姿を見かけません。ガソリン機器メーカーの担当者によると、これは、“すでに対策がしてある”からだそう。

 というのも、ガソリンスタンドの従業員は、帯電防止に優れた衣服や靴を着用しています。業務中においても、水をまいたり、金属製品に触れるなど日常の動作で静電気の発生を防止しているのだとか。

 ガソリンスタンドなど危険物を取り扱う事業所で着用される静電気帯電防止作業服の仕様は、帯電を防止する生地であること、裏毛生地(ボア)を使用しないことなどがJIS規格で定められています。

 こうした静電気対策は、1998年にセルフスタンドが“解禁”される際、これを顧客に求めるかどうかが議論されたポイントでした。

 給油する人が車両ドアの金属部や、給油キャップを覆う金属製のふた、そして給油ノズルに触れることでも静電気除去はできるものの、これらに触れずに給油キャップを開け、放電により給油口から吹き出すガソリンベーパー(可燃性蒸気)に引火する事故も発生。このため、2001年に消防庁が各都道府県へ静電気対策について通達を出し、静電気除去シートの設置が進みました。