国道417号「冠山峠道路」がまもなく開通し、地図上で途切れた「分断国道」がまた1つ解消されます。岐阜〜福井の最短路となり、北陸道などの迂回路になることが期待されていますが、もともとが険しい場所です。どのような道になるのでしょうか。

北陸道の迂回路確保 でも、とんでもない山道?

 山で隔てられている岐阜〜福井の県境部をつなぐ国道417号「冠山峠道路」が、2023年11月19日(日)に開通します。これにより、県境の山奥で途切れていた国道417号がつながり、両県を結ぶ最短路が誕生することになります。


完成間近の冠山峠道路(画像:福井河川国道事務所)。

 国道417号は、岐阜県大垣市を起点とし、福井県南越前町を終点とする道路です。このうち、岐阜県揖斐川町と福井県池田町の境にあたる冠山峠付近7.6kmは「交通不能区間」となっていたことから、代替路として線形不良箇所や冬期通行止めのある林道が利用されています。これを解消するため、2003(平成15)年から国が20年をかけて県境の国道を整備してきました。

 両県の行き来はこれまで名神・北陸道もしくは国道8号経由がメインでしたが、冠山峠道路の開通により大回りが解消され、揖斐川町と池田町の間は移動距離が約86kmになり、所要時間でいうと約1時間短縮になるとのこと。

 また、道路構造も安定するため、「北陸自動車道の通行止め時における代替ルートの確保」につながると期待されています。整備を担当した国土交通省 福井河川国道事務所によると、近年は大雪で北陸道と並行する国道8号の両方が同時で通行止めになることも多く、代替路確保の観点は大きな意味を持っているといいます。

 とはいえ、もともとが険しい山道。県境部が開通したとしても、迂回路としてここを「通るべきか……」と考える人もいるかもしれません。実際どうなのでしょうか。

「たとえば岐阜側で、確かに狭くて線形が悪い部分はあります。国道417号と303号の交点前後などが挙げられるでしょう。注意は必要でしょうが、実際、工事用ダンプや資材車は問題なく通っていました」(福井河川国道事務所)。

 開通後は岐阜・福井両県が管理していきますが、除雪対応がなされ、通年で通行可能な道になるといいます。最も険しい林道の代替となる新設部には、雪崩防止や雪止め設備なども完備しており、最大勾配は5%ほどだそうです。

今の林道でも大型車が通っている!

 これまで県境の林道は11月末から6月中旬まで通行止めになり、その19.4km部分を通過するだけで約1時間かかっていたそうです。

 そんな林道でも、実際に大型車の通行ニーズはあり、急カーブでの脱輪事故も起こっていたそう。さらに、「紅葉スポットでもあるので観光利用は多く、バスも来ます」(福井河川国道事務所)とのこと。

 では、岐阜・福井の市街地を通る主要国道の迂回路としては、所要時間はどれほどなのでしょうか。

 開通に関する報道資料では、揖斐川町役場と池田町役場のあいだの所要時間が85分とされています。その前後を延ばす形で、岐阜県側の国道21号(国道417号が分岐する大垣市の河間交差点)、福井県側の国道8号(国道417号が合流する鯖江市の東鯖江交差点)の間を、Google mapのルート検索なども加味して調べると、所要時間は2時間20分ほどになりました(福井県道2号・105号経由)。

 なお、同区間は名神・北陸道回りだと約1時間半、普通車3320円(大垣西IC〜鯖江IC)となっています。


林道は法面崩落のため通行止めとなっている(画像:福井河川国道事務所)。

 福井河川国道事務所によると、この国道417号を使う冠山峠ルートは、線形こそ決していいとは言えないものの、物流のニーズ、そして観光需要も大きいと自信を込めます。福井県池田町では観光施設の整備が進められており、中京圏からの来客も期待されているそうです。

 ちなみに、冠山峠の林道は、土砂崩れのため2024年6月までの予定で通行止めになっていますが、国道の本線が開通しても、廃止はされないといいます。