“日本一のスターマイン”を決める「土浦全国花火競技大会」を見逃すな 夜空に2万発!長岡、大曲と並ぶ“日本三大花火大会”11月4日開催
茨城県土浦市で毎年11月第1土曜日に開催される「土浦全国花火競技大会」は、「競技」を掲げていることから、花火師達が腕によりをかけて競い合う高度な技と芸術性に富んでいます。2023年の開催は11月4日。夏の花火を見逃した人も、今年の花火鑑賞の集大成として、ぜひ足を運んでみては。
「内閣総理大臣賞」は土浦と大曲の花火のみ
土浦全国花火競技大会は、1925(大正14)年から始まり、先の大戦による中断があったものの、2023年で92回を迎えます。
競技花火は、種目ごとに打ち上げ時間や花火玉の大きさといったルールに則って、花火師達が匠の技を競い合い、審査が行われます。各種目ごとの優勝者には、それぞれ権威ある賞が贈られますが、それらの中から最も優れた煙火業者には、内閣総理大臣賞が授与されることから、全国の花火師たちの垂涎(すいぜん)の的となっており、威信をかけて挑みます。
「全国花火競技大会」と名の付く大会は他に「大曲の花火」(秋田県大仙市、2023年8月開催で第95回)が有名です。日本全国津々浦々、花火大会は数あれど、土浦と大曲だけに内閣総理大臣賞が設けられていることから、格式高い大会とされています。
土浦、大曲は、競技大会ではない「長岡まつり大花火大会」(新潟県長岡市、同)と合わせて、「日本三大花火大会」と称されることもあります。
土浦の花火では、短時間に数百発の花火を連続で打ち上げる「スターマイン」、開いたときの星の配列や発色などがポイントの「10号玉」、決まった型にとらわれない新しいアイデアを披露する「創造花火」の3種目で行われます。土浦市商工観光課花火対策室によると、2023年は、19都道府県から57煙火業者が参加、2万発の花火が打ち上げられる予定です。
22業者が打ち上げるスターマイン
中でも、名実共に土浦の花火を全国屈指の大会に押し上げたのは、スターマインと言われています。スターマインは、数分ほどの短時間に数百発以上もの多種多様な花火を連射連発で次々と打ち上げるもので、テンポよく変幻自在に夜空を彩るさまは、花火大会のトリを飾ることも多く、観る人を魅了させています。
ただ、スターマインは、昭和30年代初め頃までは、仕掛け花火の裏打ちとして扱われる脇役にとどまっていました。
ところが、1959(昭和34)年、土浦が全国に先駆けてスターマインを競技の対象としたことから、花火師たちの間で高度な技と芸術性を求めて、熾烈な競争が繰り広げられるようになりました。花火の色彩や鮮明度はもちろんのこと、打ち上げの絶妙なタイミングが音楽とうまくマッチしているか、さらに年々、より高速で打ち上げるスピード勝負の様相もみせ、全体のレベルをさらに引き上げています。
ちなみに、昨年の土浦の花火で内閣総理大臣賞を授与された「野村花火工業」(茨城)は、スターマインの部で優勝しています。
土浦市のホームページ内にある花火大会の歴史に関して「土浦の花火大会は『スターマイン日本一』を決める大会とも言われています」と記述されています。その所以について、花火対策室では「土浦と大曲だけが内閣総理大臣賞を授与されるのが大きな要因ではないでしょうか」としたうえで、さらに「土浦の花火では、スターマインとして種目が独立している一方、大曲では創造花火の部に組み込まれているので、そう称されているのかもしれません」と説明しています。
2023年は、スターマインに22業者の参加が予定されているほか、競技花火とは別に、余興花火もあり「大会中盤に打ち上げられる幅約500メートル、約6分間で2000発以上を打ち上げる大会提供のワイドスターマイン『土浦花火づくし』は必見です」(花火対策室)とのこと。片時も目が離せません。
“食べる花火!?”常陸牛、アンコウ、レンコン…名物「花火弁当」14種
スターマインと並ぶ名物が「土浦花火弁当」です。2023年は飲食店6店と1団体が参加、14種類が個数限定で予約販売されます。
全国から集まる観光客に土浦の魅力をPRしようと作られた花火弁当には、地元の名産がたっぷり。常陸牛のローストビーフやアンコウ、フグ、霞ケ浦のワカサギや白魚、日本一の生産量を誇るレンコンや栗と盛りだくさん。花火を打ち上げる筒に見立てた丸い3段重に、それぞれ店ごとに趣向を凝らしており、彩り豊かな美しさは、まるで“食べる花火”のよう。観覧に華を添えます。
価格は物価高騰の影響で、例年より若干高い2000〜4000円台です。
老舗料亭「霞月楼」の「具沢山釜飯」(2860円、9月23日予約開始)は、容器についているひもを引っ張ると加熱され、アツアツをいただくことができます。肌寒い時期の開催を考慮した気遣いに、身も心も温まります。
「土浦花火弁当」は事前予約制。土浦市観光協会および各飲食店のホームページで案内しており、店舗に直接申し込みます。引き渡しは大会当日、桟敷席近くの受取所か、直接店舗にて行われます。個数限定、順次情報が更新されますので、早目に申し込まれてください。
【電話】029−824−2810(土浦市観光協会)
2022年から11月第1土曜日の開催変更に注意
土浦全国花火競技大会は、2021年まで長らく10月第1土曜日に開催されるのが通例でした。土浦市のホームページによると、秋の開催は「実りの秋を祝い、農民の勤労を慰める」との意味があるようです。
ただ、2022年からは11月第1土曜日へと、1カ月遅い開催となりましたのでご注意ください。変更理由について土浦市商工観光課の担当者は「10月開催は台風の影響を受けやすく、過去に何度か延期せざるを得ませんでした。11月は比較的、気候が安定していることから安全に花火が打ち上げられるよう11月第1土曜日へ変更となりました」と説明しています。
近隣在住の筆者も毎年のように訪れていますが、初の11月開催となった昨年は、見物人の中には、上着の上からブランケットをかぶるなど例年以上に防寒対策をしっかりしている印象を受けました。またカセットコンロを持ち込んで、鍋料理をつついて暖を取るグループや家族連れも見かけました。
土浦へは、品川駅や東京駅から特急で約1時間、JR上野東京ライン、常磐線の普通電車で約1時間半とアクセスもよく、2022年の来場者数はコロナ禍にも関わらず45万人に上りました。なお、JR東日本では大会当日、臨時の特急2本と普通の上下6本(開催延期の場合は開催日に運行)の増便を予定しています。
桟敷席、有料イス席の申し込みは9月30日まで
花火の打ち上げ場所は、土浦駅西口から約2キロ離れた桜川畔(学園大橋)付近となります。周囲に高い建物がないため、比較的離れた場所からもよく見えますが、やはり有料桟敷席からの観覧は圧巻です。
ただ、例年無料で開放していた河川敷の観覧場所は、2022年から有料イス席に変更しており、今年も同様となります。桟敷席(マス)、イス席とも抽選販売となり、公式サイトから「チケットぴあ」サイトへとアクセスして申し込みます(9月30日23時59分まで)。当選発表は10月4日の18時。
全国花火競技大会を主催する土浦市には、商工観光課内に花火対策室が設けられ、通年で次回の大会に向けて準備を進めていると聞きました。担当者は「歴史や伝統に胡坐をかいているようでは、あっというまに世間の評価は下がりますので、毎年危機感を持って臨んでいます」と話されているのが、印象的でした。一瞬の花を咲かせるべく精魂込めて打ち上げる花火師達、彼らを支える裏方の人々の情熱にも思いをはせ、観覧してはいかがでしょう。
文/中島幸恵、写真/土浦市提供
「第92回土浦全国花火競技大会」の概要
【日時】11月4日(土)17時半〜20時終了予定※荒天の場合、11月5日(日)または11月18日(土)
【場所】学園大橋付近の桜川畔
【交通】JR常磐線「土浦駅」西口から徒歩30分、シャトルバスで10分※乗車券販売は17時まで。大人250円、子供130円
【有料観覧席の販売】公式HP よりチケットぴあのWEB受付による事前申込の抽選販売。申込受付期間9月30日23時59分まで。当選発表、10月4日18時。桟敷席(全マス、4人まで)1マス24000円、(半マス2人まで)1マス12000円、イス席A、1席5000円、同B、1席4000円、同C席3000円
【問い合わせ】029−826−1111土浦全国花火競技大会実行員会事務局(商工観光課内)
【公式HP】https://www.tsuchiura-hanabi.jp/