健康診断の「ヘマトクリット」とは?医師が病気のリスクなどを徹底解説!

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ヘマトクリットとは?Medical DOC監修医が血液検査でわかるヘマトクリット値の見方や基準値・数値が高い/低いときの主な原因と病気のリスク・対処法等を解説。

ヘマトクリット値とは?

ヘマトクリット値とは、血液のうち酸素を運搬する赤血球がどれくらいの割合を占めるのかを表したものです。ざっくり表現すれば「血の濃さ」ということになりますが、これには適正な値があり、多すぎても少なすぎてもいけません。どのような疾患が考えられるか、以下で解説していきます。

ヘマトクリット値が高い場合のリスクと対策

ヘマトクリット値が高いとどうなる?

ヘマトクリット値が高い場合、原因としては循環血液量(体中を巡る血液の総量)全体が増加している場合と、循環血漿量(体中を巡る血液の、血球を除いた成分)が低下している場合が考えられます。前者を絶対的赤血球増加症といい、後者を相対的赤血球増加症といいます。前者は血液疾患や他の疾患の二次的作用として出現しますが、後者は急激な水分量が原因で起こることも多く、また自身での対応で改善する場合もあります。
急激な水分量の低下とは、脱水、嘔吐、下痢などによって生じることが多いです。またこのような体液量の急激な変化がなくとも、生活習慣や慢性的なストレスで生じることもあります。これはストレス多血症とも呼ばれ、頭痛や顔のほてり、疲労感といった症状が出現することもあります。

健康診断でヘマトクリット値が高いと言われたら?

健康診断で高いと言われたら、近隣の内科の診療所やクリニックで再検査を行いましょう。

ヘマトクリット値を下げる方法は?

ヘマトクリット値とは、要は血液の濃度なので血漿にあたる水分量を増やすことでヘマトクリット値を改善することができます。
水分を多く含んだ食材を摂取したり、水分自体を多く摂取しても良いでしょう。ただし、コーヒーや緑茶といった利尿作用のある飲み物は尿として体外へ排出される水分も増えるので、あまりお勧めはできません。

ヘマトクリット値が低い場合のリスクと貧血対策

ヘマトクリット値が低いとどうなる?

ヘマトクリット値が低い原因は、赤血球数が少ないか、水分量(循環血漿量)が多いことです。後者は水分が多い状態ですのでそこまで心配する必要はありません、前者はいわゆる貧血という状態ですので、適切な対応が必要です。
貧血の場合は、息切れ、ふらつき、めまい、動悸、疲労感といった症状が出現します。貧血を引き起こしてしまう食事は、鉄分、ビタミンB12、葉酸といった成分が不足した食事です。これらは鉄欠乏性貧血、大球性貧血といった病気につながります。

健康診断でヘマトクリット値が低いと言われたら?

健康診断でヘマトクリット値が低いと言われたら、高い時と同様に、近隣の内科の診療所やクリニックで再検査を行いましょう。

ヘマトクリット値を増やす方法は?

ヘマトクリット値を増やす食べ物としては、鉄分、ビタミンB12、葉酸を多く含む食材が重要です。鉄分を多く含む食材は赤身の肉(牛肉、豚肉、羊肉)、レバー(鶏、豚、牛などの内臓肉)、ほうれん草、レンズ豆、黒豆、大豆などがあります。ビタミンB12を多く含む食材は、魚(さば、まぐろ、サーモンなど)、貝類(ホタテ、ムール貝、カキなど)、卵、乳製品などです。葉酸を多く含む食材は、ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガス、果物(特にバナナ、メロン、レモン)、豆類、穀物とされています。

健康診断のヘマトクリット値の見方と基準値・再検査が必要な数値・結果

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

健康診断・血液検査の「ヘマトクリット値」の基準値(Hb・Hgb)

ヘモグロビン(Hb)の基準値は、男性14~18 g/dL、女性12~16 g/dL です。
ヘマトクリット(Ht)の基準値は、成人男性で40~50%、成人女性で34~45%とされています。

健康診断・血液検査の「ヘマトクリット値」異常値・再検査基準と内容

男性では赤血球数 ≧ 600 ×1012、Hb(ヘモグロビン) ≧ 18 g/dL、Ht (ヘマトクリット)≧ 51%、女性では赤血球数 ≧ 550 ×1012、Hb ≧ 16 g/dL、Ht ≧ 48%の場合を多血症と言うことが多いです。一方、貧血の定義はHb値が男性で13.0g/dl以下、女性で12.0g/dl以下とされています。
これらに該当する場合は、医療機関での再検査を検討してください。再検査は基本的に血液検査をもう一度行う場合が多いです。同一医療機関で再検査を受けることが理想ですが、健診で受けただけで同じところが難しい場合は、かかりつけや近隣の内科クリニックで再検査を受けましょう。検査費用は3割負担の場合、およそ2000~2500円程度のことが多いです。
多血症でも貧血でも、異常を指摘された場合は出来るだけ早く医療機関を受診してください。貧血に関しては、Hb 6g/dL以下では緊急輸血が必要なケースもありますので、より早急な精査が求められます。また多血症に関しても、脳血管障害や胸痛など緊急の血管病変(脳卒中や狭心症など)がある時や、Ht ≧60%で体の痒みや腹部の張りが見られる場合は他の合併症の可能性があるため、可能ならすぐに受診して精査が必要です。

健康診断・血液検査の「ヘマトクリット値」の異常で気をつけたい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「ヘマトクリット値」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

多血症

多血症とは、血液中の赤血球数、Hb濃度、Ht値が正常より高い状態を指します。
先述の通り、多血症は絶対的赤血球増加症と相対的赤血球増加症に分類されます。絶対的赤血球増加症の原因としては、慢性骨髄増殖性疾患に分類される真性多血症と、基礎疾患に伴い生じる二次性の赤血球増加症があります。相対的赤血球増加症に関しては先述の通り、脱水や下痢、嘔吐による急激な水分減少や、ストレスによるものがあります。後者の方は先に詳しく記載したので、ここでは前者の絶対的赤血球増加症について述べます。
特徴的な症状としては、顔面が紅くなる、頭痛、めまい、高血圧、入浴後のかゆみといったものがありますが、無症状で経過して健康診断で偶然指摘される場合もあります。
治療法としては、まず他の疾患による二次性赤血球増加症の場合は、元の疾患の治療を行います。そして真性多血症では、瀉血といって血を少なくする治療法が一般的です。
専門の診療科は血液内科です。血液はあまりにも濃度が濃いと粘稠度が高くなり(ドロドロになり)固まりやすくなってしまいます。そのため多血症治療の主な目的は、血が濃すぎることによる血栓症予防です。
そこまで緊急性の高い状態ではありませんが、麻痺や呂律困難といった脳卒中を疑う症状、胸痛などの狭心症を疑う症状が見られる際は、すでに血栓症になっている可能性があり緊急性が高いです。その際はまず救急外来を受診しましょう。

貧血

貧血とは、血液中のヘモグロビンという物質が少ない状態のことを指します。このヘモグロビンは酸素と結びついて、体中の各臓器や組織、細胞に酸素を運搬する役割があります。貧血の状態ではヘモグロビンが少ないため、体中が酸素不足になり、息苦しさを自覚することがあります。そのほかにはめまいやふらつき、倦怠感などを自覚することが多いです。

原因は栄養素の不足(鉄分やビタミンなど)、産生の低下(骨髄の異常)、出血(胃潰瘍や大腸がんなど)などがあります。治療法はこれらの原因を突き止めたのち、それぞれに応じた治療が行われます。例えば、鉄分が不足するために起きる鉄欠乏性貧血では、鉄分の内服治療を行います。
めまいやふらつき、息苦しさを自覚した際は医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は一般内科です。血液検査で貧血の程度や原因を調べるのが一般的です。

「ヘマトクリット値」が高い時、低い時の正しい対処法・改善法は?

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、ご自身でできることはまず水分摂取、そしてストレスの解消になります。水分は利尿作用のあるコーヒーや緑茶よりも、水自体をとるようにしましょう。
逆にヘマトクリット値が低いと指摘された場合、特にヘモグロビンも少なく貧血と診断された場合は、ご自身でできることは栄養摂取です。レバー、ナッツ類、豆類など、貧血に有効な栄養素を多く含む食材を摂取してみましょう。
ただし検査結果によっては、ご自身での改善では間に合わない、効果がないような結果もありますので、健診の判定結果や医師の指示にしたがって対応してください。

「ヘマトクリット値」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ヘマトクリット値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

血液検査のヘマトクリット値とは何の数値ですか?

中川 龍太郎 医師

端的に言えば、血の濃さを表した数値です。

ヘマトクリット値が低い場合いくつからが貧血ですか?

中川 龍太郎 医師

ヘマトクリット値のみで貧血とは診断されません。同時に計測されているヘモグロビンの数値が男性で13.0g/dl以下、女性で12.0g/dl以下の場合は貧血と診断されます。

ヘマトクリット値が高く50%以上だと多血症の危険性がありますか?

中川 龍太郎 医師

男性ではHt (ヘマトクリット)≧ 51%、女性ではHt ≧ 48%の場合を多血症と言うことが多いです。またヘマトクリット以外の検査データも含めて総合判断されるので一概には言えません。

ヘマトクリット値は食事で改善できますか?

中川 龍太郎 医師

一部改善できます。

編集部まとめ

ヘマトクリット値に焦点を当てて解説しました。血の濃さは少なくても多すぎても良くないと言うことがわかっていただけますと幸いです。多血症はそれ自体でいきなり生死に関わるような疾患ではありませんが、血栓症という合併症が厄介です。血液検査を活かして早期発見、早期治療をしていただければと思います。

「ヘマトクリット値」の異常で考えられる病気

「ヘマトクリット値」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

血液内科の病気

多血症(赤血球増加症)

絶対的赤血球増加症

ストレス多血症(赤血球増加症)

鉄欠乏性貧血

大球性貧血

「ヘマトクリットの異常」だけでもこれらのような様々な疾患が疑われます。どの疾患かを見極めるには、ヘマトクリット値以外に必要な情報が多数あるため、医療機関での検査は欠かせません。健康診断で指摘されたら放置せずに、早めに再検査を受けましょう。

参考文献

多血症の診断と治療

36.貧血より(日本臨床検査学会)

[日本内科学会雑誌第104巻第7号]的確な診断と治療のために注意すべきこと