「脳動脈瘤の手術内容」はご存知ですか?術後の過ごし方も医師が徹底解説!

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脳動脈瘤の手術内容とは?Medical DOC監修医が脳動脈瘤の手術・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

「脳動脈瘤」とは?

脳動脈瘤とは、脳の動脈の一部が膨らんで瘤(こぶ)のような形になった状態のことを指します。通常、脳動脈瘤は頭部CT/MRI検査などの画像検査で見つかります。動脈瘤の状態によって、瘤が破れたものを破裂脳動脈瘤、破れていないものを未破裂脳動脈瘤と呼んでいます。
未破裂脳動脈瘤は小さなサイズでは症状がないことが多くて脳ドックなどの画像検査を行なった際に見つかります。
一方で、動脈瘤が破裂した(破裂脳動脈瘤)場合にはくも膜下出血を発症して、約3割が死亡し、約3割が後遺症を生じて、残りの約3割しか社会復帰できないという状態になるため、緊急の対応が必要な状態となります。
くも膜下出血は、発症からの経過日数によってさまざまな合併症を起こす可能性があるため、これらがひと段落したと判断されるまで、数ヶ月に渡って治療が続きます。
具体的には、発症日から主に治療する内容が変わり、急性期(発症日から3日目まで)に行う破裂脳動脈瘤に対する手術治療、攣縮期(発症4日目から14日目まで)に行う脳血管攣縮予防の治療、その後(発症1ヶ月~3ヶ月程度)に必要に応じて行われる水頭症の治療、などが行われます。
この記事では、脳動脈瘤の治療の中でも、特に急性期に行う手術について解説します。

破裂脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)

脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血を生じます。典型的な症状は、これまで経験したことのない突然の強い頭痛です。
頭痛の強さは、雷が落ちたような、とか、バットで殴られたような、という表現も使われるほど、とにかく激痛です。吐き気や嘔吐も伴い、意識を失うこともあります。また、徐々にではなくて「○時○分から急に痛みだした」と覚えている人がいるほど突然の発症であることがほとんどです。
頭部CT/MRI検査で診断されます。くも膜下出血であると診断された後は、緊急で入院治療が必要です。脳動脈瘤が何かの刺激によって再破裂してしまうと回復率が低くなるため、初期治療が非常に重要です。
突然の激痛を頭に感じた場合には、すぐに脳神経外科のある病院を受診してください。

未破裂脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤の多くは、脳ドックや頭部打撲、頭痛の検査として頭部MRI検査を受けた時に診断されます。
動脈瘤が生じる原因はいまだ解明されていません。先天的な血管壁の異常という遺伝的な要因もありますが、高血圧、喫煙、外傷、加齢などによる血管へ壁へのストレスの関与も大きいといわれています。
未破裂脳動脈瘤の多くは自覚症状がありません。動脈瘤の大きさが大きくなると破裂しやすくなるため、破裂する前に予防的な治療を行う必要があります。ただし、動脈瘤の場所、サイズ、数などによって、治療を急ぐ必要性が高いものと低いものとがあるため、すぐに治療を行うことになるとは限りません。
まれに、動脈瘤のサイズが大きい場合には、動脈瘤が脳神経を圧迫するために、二重にものが見える、瞼が上がりづらい、などといった脳神経障害による症状を引き起こすことがあります。このような神経症状が見られている場合には、緊急で治療を行う必要があります。
未破裂脳動脈瘤が見つかったら、脳神経内科や脳神経外科を受診し治療方針を決めるべきです。

破裂脳動脈瘤の手術内容

くも膜下出血に対して急性期に行う手術治療とは

破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血は、すぐに治療が必要な状況です。脳動脈瘤は破裂した後も再度破裂する危険性があるため、まずはそれを阻止しなければいけません。再度破裂した場合には、回復する割合が低下してしまうからです。手術は、この脳動脈瘤の再破裂を予防する目的で行います。手術は大きく2種類あり、頭の骨を開けて顕微鏡操作を行う開頭手術と、動脈内にカテーテルという長いチューブを入れて操作する血管内手術があります。全身麻酔で行い、難易度によって数時間から十数時間かかります。手術に伴う合併症もあります。
動脈瘤の場所や数、大きさ、形などによって難易度が変わりますが、個々の症例に応じて開頭手術か血管内手術のうち安全に治療ができる方法を選択して治療します。
手術内容については、専門的な内容になってしまうため、今回はおおまかな流れの説明に留めます。

開頭手術

開頭手術とは、頭蓋骨に手術を行うために必要なサイズの穴を開けて行う手術のことです。非常に細かい作業なので、手術用顕微鏡を用いて操作します。破裂した脳動脈瘤の中に血流が勢いよく流れ込み再破裂しないように、金属製のクリップで動脈瘤の根元を挟み込むという、クリッピング術という手術が基本的な治療です。
動脈瘤の位置、形、サイズ、患者さんの頭の解剖学的な構造などによって、難易度にはかなり差があります。動脈瘤のクリッピング操作などが終わったら、脳を包む膜(硬膜)や頭蓋骨を元通りに塞いで皮膚を縫合して手術を終了します。

血管内手術

血管内手術とは、カテーテルと呼ばれる細いプラスチックチューブを動脈内に挿入し、カテーテルを脳の動脈まで進めた後に、プラチナ製のコイルを脳動脈内に詰めることで、破裂動脈瘤が再度破裂しないようにすることを目的とした治療です。
多くの場合、カテーテルは大腿動脈という足の付け根の太い動脈に針を刺して挿入していきます。造影剤を入れて検査していくことで、血管の位置関係を確認しながら慎重に行います。カテーテル治療が終わったら足の付け根からカテーテルを抜きますが、通常の点滴の針よりも太い針を刺しているため、手術後は数時間~1日間程度の間、足の付け根の部分を圧迫して確実な止血を行います。

保存的治療

くも膜下出血の発症により脳や全身へのダメージが大きく、昏睡状態や極めて全身状態が悪い場合には、手術治療をすることができません。この場合には、血圧を下げる薬や痛みを和らげる薬などを点滴から投与して状態に合わせて対応することになります。仮に意識状態が改善するなど全身状態に変化がみられた場合には、前述の手術治療を行う可能性があります。

未破裂脳動脈瘤の治療法・手術内容

未破裂脳動脈瘤に対する治療とは

「ダブって見える」「目が開かない」と言ったような視機能の異常があり、サイズの大きな未破裂脳動脈瘤が見つかり、その動脈瘤が脳神経を圧迫しているために症状が出現していると判断できる場合には、緊急手術を行います。動脈瘤のサイズや場所、形などによって開頭手術か血管内手術のうち治療に適する方法で行います。
一方で、脳ドックなどで偶発的に見つかった未破裂脳動脈瘤については、すぐに治療が必要でないことがほとんどです。脳動脈瘤の破裂する危険性は、サイズが大きいことやいびつな形をしていることが認められると高まることが知られています。また、どの部位に脳動脈瘤が発生したか、という場所の問題なども破裂する確率に影響します。これらの危険性を判断した上で、治療を急ぐ必要性があるかどうかを見極めます。
多くの場合、定期的な画像検査を行いながら経過をみていくことになります。
手術は、破裂脳動脈瘤と概ね同じで、全身麻酔をかけて開頭手術あるいは血管内手術を行うことで治療します。動脈瘤の場所や数、大きさ、形などによって難易度が変わるため、個々の症例に応じて開頭手術か血管内手術のうち安全に治療ができる方法を選択して治療します。手術時間についても難易度によって数時間から十数時間かかります。手術に伴う合併症もあります。
ここでも、手術内容については、専門的な内容になってしまうため、おおまかな流れの説明に留めます。

経過観察

未破裂脳動脈瘤を始めて指摘された場合、動脈瘤のサイズがどの程度であるかが重要なポイントの一つです。ガイドラインでは、脳動脈瘤のサイズが5~7mm以上の場合、あるいは、5mm以下でも動脈瘤の形状がいびつな形であったり、破裂しやすい部位にある動脈瘤であったりすると、破裂予防目的の手術を検討することが勧められています。
手術を検討する目安の状態までに脳動脈瘤が大きくなっていないか、定期的な画像検査でチェックしていきます。多くの場合、約6ヶ月~1年に一度のペースで経過を見ていきます。
なお、ガイドラインの手術時期の推奨はあくまで目安であって、実際には、患者さん自身から早めに治療を希望するケースもあれば、できる限り手術をせずに経過をみたいと希望するケースもあります。脳動脈瘤の破裂する危険性や、手術を受けることでの合併症が発症する危険性などについても、担当医から説明を受けて、十分に納得した上で治療を受けることが重要です。

開頭手術

頭蓋骨に手術を行うために必要なサイズの穴を開けて行う手術です。手術用顕微鏡を用いて、手術する部分を拡大して安全性を保ちながら非常に細かい操作を進めていきます。脳動脈瘤の中に血流が勢いよく流れ込み破裂しないように、金属製のクリップで動脈瘤の根元を挟み込むという、クリッピング術という手術が基本的な治療です。
動脈瘤の位置、形、サイズ、患者さんの頭の解剖学的な構造などによって、難易度にはかなり差があります。クリッピングが難しい形状の動脈瘤である場合には、動脈瘤の壁をコーティングすることがあります。また、動脈瘤の中に血流が入り込まないようにしつつ脳内の血流を保つように血液の流れを変えるバイパス術、というとても難易度の高い手術を行うこともあります。

血管内手術

多くの場合、カテーテルは大腿動脈という足の付け根の太い動脈に針を刺して挿入します。
脳の動脈内にカテーテルを進めた後に、プラチナ製のコイルを脳動脈内に詰めることで、動脈瘤が破裂しないようにすることを目的とした治療です。コイルを挿入する操作を安定して進めたいときにもう一本カテーテルを挿入して行う方法や、小さな風船を入れて操作する方法やステントと言った金網を動脈瘤の近くに留置して行う方法などがあります。
未破裂脳動脈に対する血管内手術は、事前に手術予定を立てて、手術を行う適切な準備を整えて操作することができるため、破裂脳動脈瘤の治療と比べて治療方法の種類が多く存在します。

「脳動脈瘤の手術」についてよくある質問

ここまで脳動脈瘤の手術・治療法などを紹介しました。ここでは「脳動脈瘤の手術」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

未破裂脳動脈瘤の治療・術後はどのように過ごせば良いですか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

脳動脈瘤がある場合には、脳動脈瘤が破裂しないように、高血圧を予防することや喫煙はしないことが重要です。治療を行った後も同様の生活習慣を続けるようにしてください。

脳動脈瘤はなぜできるのでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

脳動脈ができる原因は、いまだにはっきりとはわかっていません。先天的な血管壁の異常という遺伝的な要因もありますが、高血圧、喫煙、外傷、加齢などによる血管へ壁へのストレスの関与も考えられています。

脳動脈瘤の術後に合併症や後遺症が残ることはありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

脳動脈瘤が破裂しくも膜下出血を発症した場合には、そのくも膜下出血に伴う何らかの後遺症が残る可能性があります。また、脳動脈瘤の破裂の有無に関わらず、手術治療を行う場合には一定の割合で合併症が発生する可能性があります。

未破裂脳動脈瘤が脳ドックで見つかりましたが、手術はすぐに必要でしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

いいえ。動脈瘤の大きさや形、動脈瘤のある場所などによって緊急度は異なります。すぐに必要でないケースは多くあります。まずは脳神経内科や脳神経外科を受診して相談しましょう。

脳ドックはどのくらいの頻度で受けた方が良いでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

40歳以上の方で、脳ドックを受けたことがない場合には早めに一度受けることをお勧めします。問題なければ、2-3年に一度の受診で良いでしょう。
また、40歳未満でも、脳の病気がある家族がいる場合や生活習慣病(高血圧や脂質異常症、糖尿病など)を指摘されたことがある場合などには、一度受診することをお勧めします。問題なければ1-2年に一度の受診で良いでしょう。

編集部まとめ

未破裂脳動脈瘤の大半は自覚症状がないため、脳ドックなどの画像検査を行なった際に見つかります。一度見つかると大きな不安を抱える方も少なくないと思いますが、多くの場合、すぐに治療を行う必要はありません。脳神経内科や脳神経外科を受診し、動脈瘤の確認と、治療が必要なのかを確認して、治療方針を決めることがくも膜下出血を予防するために大切です。

「脳動脈瘤の手術」と関連する病気

「脳動脈瘤の手術」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経外科の病気

脳動脈解離

解離性脳動脈瘤

脳動静脈奇形

細菌性動脈瘤

くも膜下出血

内科の病気

高血圧症

感染性心内膜炎

高血圧や感染症、動脈の病気は動脈瘤ができてしまう原因となったり、動脈瘤を破裂する原因となったりする可能性があります。

「脳動脈瘤の手術」と関連する症状

「脳動脈瘤の手術」と関連している、似ている症状は15個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

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脳動脈瘤そのものによる神経症状で代表的なものは、目の機能障害です。そのほかに列挙した顔に関する症状が出現する可能性は、かなり低いです。
脳神経外科手術に伴う術後合併症は、一般的に5%程度と言われています。破裂脳動脈瘤に伴うくも膜下出血であると、全身の状態が悪い中で手術を行うことも多いため、合併症の出現する確率がさらに高くなることもあります。

参考文献

脳卒中治療ガイドライン2021「改訂版2023」