ソーシャル動画プラットフォームにおけるクリエイター主導型コマースは、理屈のうえではうまいやり方だ。人々は、クリエイターが特定の商品を紹介する動画を視聴し、その商品を購入したいと思い、動画に付随するプラットフォーム内の機能を通じて商品を購入する。

それは簡単なことだ。しかし現実には、プラットフォームが提供するアフィリエイトコマースは、これまで使い勝手がいいとはいえなかった。だが、それが変わりつつあるようだ。

この夏、YouTubeとTikTokはどちらも、新たなクリエイター向けのコマースプログラムを導入した。YouTubeは6月、クリエイターが動画内で商品をタグ付けし、売り上げからアフィリエイト収入を得られるアフィリエイトコマースのオプションを追加した。そして8月には、TikTokが米国版のTikTokショップ(TikTok Shop)を開始した。こちらもクリエイターが商品を宣伝し、アフィリエイト報酬を受け取ることができる仕組みだ。

インスタグラムの機能が不評だった原因



とはいえ、YouTubeもTikTokも、それほど画期的なことをしているとは思えない。

インスタグラムは以前、クリエイター向けのアフィリエイトコマースプログラムを導入したが、メタ傘下の同プラットフォームは2022年にプログラムを打ち切った。クリエイター業界の幹部たちは、クリエイターのあいだで利用が伸びなかった原因のひとつとして、複雑な設定プロセスが不評だったことを挙げている。

「すぐに使い始められるという感じではなかった」と、インスタグラムのアフィリエイトコマースプログラムについて、打ち切り当時にあるクリエイター業界幹部はコメントしている。

優れたアフィリエイトコマースは視聴者にとって使いやすいもの?



一方、YouTubeのアフィリエイトコマースプログラムに関しては、クリエイターから異なる感想が聞かれる。米DIGIDAYの姉妹サイトGlossy(グロッシー)のインフルエンサーマーケティングに関する動画シリーズで、クリエイターやクリエイター業界幹部に筆者がインタビューした限りではそのようだ。

YouTubeで200万人の登録者、TikTokで41万4000人のフォロワーを擁するクリエイターのカサンドラ・バンクソン氏は、「YouTubeの(アフィリエイトコマースプログラム)はもっとも使いやすいのでお気に入りだ。2番目はAmazonだろう。インスタグラムは本当に面倒だった」と述べている。

また、YouTubeで29万9000人の登録者、TikTokで21万5000人のフォロワーを擁するクリエイターのオヒマー・ボンスー氏は、昨年からYouTubeショート(YouTube Shorts)のアフィリエイトコマースプログラムを試しているという。商品へのタグ付けが簡単にできることを評価し、「リンクを探しにサードパーティに移動する必要がない」と述べる。視聴者にとっても使いやすいことを理由に、同氏はYouTubeショートを美容製品を紹介する動画のアフィリエイトコマースでもっともパフォーマンスが優れたプラットフォームに挙げた。

「YouTubeショートを挙げるのは、動画内の商品に直接タグを付けることができ、『プロフィル欄のリンク』や『説明欄』を見てなどと言う必要がないからだ。YouTubeでは何も言う必要はない。『ここをクリックして』と言うだけでいい」とボンスー氏は話す。

TikTokで1000万人のフォロワー、YouTubeで590万人の登録者を擁するシドニー・モーガン氏も、YouTubeのアフィリエイトコマースプログラムに参加しており、やはりその使いやすさを指摘した。「画面左下に『購入可能』のアイコンを表示させ、その商品に直接リンクを張ることが簡単にできる。これのおかげで大きな成功を収めており、ブランド側も気に入っている」と同氏は述べている。

オーディエンスが手早く何かをしたい



一方で、TikTokのプログラムについても、同様に楽観視する理由があるようだ。インフルエンサーマーケティングエージェンシーのシャイン・タレント・グループ(Shine Talent Group)は、1年前からTikTokショップの英国版に参加する同国のクリエイターたちと仕事をしている。

エージェンシーの共同創設者であるジェス・ハニチェン氏は、「我々はそこで多くの成功を収めている」と話し、「この成功が大西洋の向こう側にも広がることを期待する。理由はやはり、使いやすさだ」と言う。

また、「我々はオーディエンスが手早く何かをしたいことを知っている。だから、ひとつのページから次のページに移動して決済する代わりに、ひとつのページですべてを済ませられ、アプリから離れる必要がないとなれば、彼らの気持ちを強くつかめると思う」とハニチェン氏は語った。

[原文:Future of TV Briefing: The key to creator-driven commerce comes down to ease of use]

Tim Peterson(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)