●3度目の朝ドラ参加に喜び

神木隆之介主演の連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合 毎週月〜土曜8:00〜※土曜は1週間の振り返りほか)でナレーションを務めている女優の宮崎あおい(崎はたつさきが正式表記)。宮崎が朝ドラに参加するのは、ヒロインを演じた『純情きらり』(06)、ヒロインの姉を演じた『あさが来た』(15〜16)以来3度目となる。「『らんまん』のファンです」と語る宮崎が、劇中で紡がれる夫婦愛や、ナレーションの舞台裏を語ってくれた。

『らんまん』でナレーションを務める宮崎あおい

○■ナレーションは客観的に物事を伝えることを意識

高知県出身の植物学者・牧野富太郎をモデルにした本作は、幕末から明治、大正、昭和と激動の時代に、植物を愛し、その研究に情熱を注いでいく主人公・槙野万太郎(神木隆之介)とその妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く物語。NHKのドラマ『群青領域』(21)や『旅屋おかえり』(22)などで知られる長田育恵氏が脚本を手掛けている。

宮崎はナレーションを担当することが決定した時の心境を、「また朝ドラに参加させていただけるのだという喜びがとてもありました」と振り返る。かつて歴代最年少でNHK大河ドラマ『篤姫』(08)の主演を務めたほか、様々なNHK作品に出演してきた宮崎だけに、旧知のスタッフも多いと言う。

「『らんまん』の台本を開いた時、以前お世話になったスタッフの方の名前がたくさんありました。だからNHKのスタジオに来ると、廊下を歩いているだけで楽しいです。中には10年ぶりにお会いするスタッフさんもいらして、『あの時、楽しかったですね』というやりとりもさせてもらいました。いろんなご縁がまたつながって、すごく幸せです」

これまでに声優やナレーションなど、声の仕事も数多くしてきた宮崎は、『らんまん』について「朝ドラはいろんな世代の方が観ているので、きちんと聞き取りやすいように話すことを心掛けています。また、今回は、役があってのナレーションではなかったので、より客観的に物事をきちんと伝えることを意識しました。近すぎず、離れすぎずにやれたらいいのかなと思いました」と語った。

○■神木隆之介は「素晴らしい座長です」

『らんまん』だけではなく、6月に公開された神木の主演映画『大名倒産』でも、神木演じる主人公の母親役兼ナレーションを担当した宮崎。神木については「『大名倒産』の時もそう感じましたが、素晴らしい座長です」と賛辞を惜しまない。

「『大名倒産』では1日お会いしただけでしたが、この方が中心になっている作品なら大丈夫! といいますか、幸せな作品になるなと思いました。『らんまん』での私はナレーションという立場なので、毎日皆さんと現場でご一緒しているわけではなく、たまに顔を出す程度ですが、その時も神木さんは『いらっしゃいませ! ようこそ』と両手を広げてお迎えしてくれる感じです。神木さん自身が心から作品を楽しんでいるからこそ、物語もより膨らんでいる気がするし、スタッフの方とのやりとりも含め、共演者を引っ張っていく素敵な座長だなと。私はもはや『らんまん』や万太郎のただのファンです」

万太郎のモデルとなった牧野博士については「想像もつかないようなことを成し遂げられたすごい方だなと。だから『らんまん』で牧野さんのことを知れたことは、私自身にとってもいい機会だったと思います」と称えつつ、神木演じる万太郎についても「万太郎を支える奥様や相棒、周りの人たちも万太郎を信じているし、万太郎が好きだという気持ちが伝わってきます。きっとドラマを観ている皆さんも万太郎のことが大好きだろうし、一緒に応援したくなるような主人公だと思います」と笑顔を見せる。

宮崎は土佐弁もお気に入りの様子で「私自身はそんなに馴染みがなかったのですが、『らんまん』を観てなんて可愛い言葉なんだろうと思いました。個人的に方言がある作品は好きですが、方言の台詞を自分のものにするには時間がかかると思います。にもかかわらず神木さんたちが、土佐弁を操れるように努力を重ねているからこそ、キャラクターがより魅力的になっていると思います」と述懐。



○■万太郎は寿恵子がいるからこそ「より愛される人に」

万太郎の妻・寿恵子についても「とても魅力的」と感じている。「研究に熱中しすぎて全然眠らない万太郎に、寿恵子さんがお布団2枚、枕を2つ置いて『一緒に寝ましょう』と言うのに、万太郎は振り向いてくれなくて。枕を投げたいけど、投げないというシーンがすごく好きでした。女の人は強いなと、寿恵子さんを見ていて思います。きゃしゃで愛らしいのに、芯の強い感じが伝わってくるのは、浜辺さんだからこそで、素敵な奥様だなと思っています」

さらに、「万太郎は寿恵子さんがいてくれるからこそご飯をきちんと食べたり、睡眠を取れたりするのかなと。それがなかったら体を壊してしまうし、周りの人とのやり取りも、もしかしたら上手くいかなかったりするかもしれません。肝が据わった奥さんがいてくれるからこそ、万太郎はより愛される人になったのだと思います。また、神木さんも浜辺さんもすごく可愛らしい方なので、そのお二人が演じる可愛らしい夫婦が、今後どう年を重ねていくのかも楽しみに拝見しています」とその魅力を語る。

●竹雄&綾夫婦の魅力も語る



また、志尊淳演じる万太郎の相棒・竹雄と、佐久間由衣演じる万太郎の姉である綾の夫婦も大好きだと言う宮崎。

「綾さんは、何かあるたびに地面に寝っ転がって空を見上げている印象がありますが、そんな綾さんに寄り添っている竹雄さんの包み込むような優しさが大好きです。綾さんが、竹雄の名前を呼んだけど『なんちゃーない』といったやりとりをするシーンもすごく好きで、観ていてドキドキしました」

○■誰かが亡くなる回は「どうしても感情が乗ってしまう」

ナレーションについては「自分が作品に出演している時よりも、物語を俯瞰で見えている感じがするので、今回はより隅々まで楽しめている気がします」と言う宮崎だが、万太郎夫妻の長女・園子がはしかで急逝する回は、感情がほとばしってしまったそうだ。

「誰かが亡くなる回は、どうしても感情が乗ってしまうので、最初に台本を読んだ時に1回泣いて、ナレーションの時には、ちゃんと俯瞰で見られるような状態にします。園ちゃんが死んでしまう回がそうで、やっぱり子どもが亡くなるのは耐えられないことだから、感情を乗せすぎずにと思ってもやはり乗ってしまいます。そこは乗せてもいいのかなと思いつつ、監督から指示をいただいて、その都度、修正していきました」

残すところ数週間となった『らんまん』。最後に宮崎は「朝ドラの醍醐味は、登場人物たちが年を重ねて成長していく姿を半年間見守っていけるところだと思っています。これから万太郎がいろんな人と再会したり、家族もどんどん増えて賑やかになっていきますから、それぞれが素敵に年を重ねていく姿を、最後まで皆さんに見守っていただきたいですし、私も語り手の立場として見守っていけたらなと思っています」と締めくくった。





■宮崎あおい

1985年11月30日生まれ、東京都出身。2008年、歴代最年少でNHK大河ドラマ『篤姫』の主演に抜擢。『少年メリケンサック』(09)、『ツレがうつになりまして。』『神様のカルテ』(11)、『わが母の記』(12)、『舟を編む』(13)、『怒り』(16)などで数々の映画賞を受賞。『おおかみこどもの雨と雪』(12)、『バケモノの子』(15)、『かがみの孤城』(22)など声優としても活躍。Netflixにて映画『クレイジークルーズ』が2023年に全世界配信予定。

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