ウクライナ軍が「段ボール製のドローン」を攻撃に利用したニュースが話題になっていますが、「段ボール製」と聞くと頼りなさそうに感じる人も多いはず。そこで、ウクライナ軍が使ったとされる段ボール製ドローンは一体どんな機体なのかまとめてみました。

SYPAQ Supporting Ukrainian Armed Forces - SYPAQ

https://www.sypaq.com.au/news/sypaq-supporting-ukrainian-armed-forces/

2023年8月29日にオーストラリアの日刊紙「The Age」が「ウクライナ軍がオーストラリアの段ボール製ドローンを用いて約170km離れたロシアの飛行場を攻撃(kamikaze drone attack)し、ロシア軍の戦闘機5機を破壊した」と報じました。同日中にウクライナのワシル・ミロシニチェンコ駐オーストラリア大使が当該記事をX上にポストしていることから、報道は事実であるとみられています。





報道によると、ウクライナ軍はオーストラリアの企業「SYPAQ」が開発したドローンを用いたとのこと。SYPAQのプレスリリースをさかのぼると、段ボール製ドローン「Corvo Precision Payload Delivery System(Corvo PPDS)」のウクライナ軍向けの供給を開始したというリリースが2023年3月2日に発表されています。このことから、ウクライナ軍が使用した段ボール製ドローンはSYPAQが開発したCorvo PPDSだと考えられます。



また、SYPAQが2023年3月28日に公開したプレスリリースによると、SYPAQは毎月100機のCorvo PPDSをウクライナに納品しているとのこと。当該リリースにはCorvo PPDSにサインするミロシニチェンコ大使の写真も掲載されています。



Corvo PPDSはSYPAQがオーストラリア軍と提携して開発した段ボール製ドローンで、従来の方法では物資輸送が不可能な地点への投入を目的とした物資輸送機です。Corvo PPDSには自動飛行システムが搭載されており、荷物を詰め込んで目的地を指定するだけで、荷物を目的地へ輸送できます。Corvo PPDSの特徴は以下のPDFファイルにまとめられています。

CORVO PPDS

(PDFファイル)https://corvouas.com.au/wp-content/uploads/CORVO-PPDS-web-version-23082023-compressed.pdf



Corvo PPDSの翼幅は2000mmで、空荷時の重さは2400g。最大3000gの荷物を積載可能で、時速60kmで最大120km先まで荷物を運べるとされています。翼は使い捨てですが、その他の部分は繰り返し利用可能とのこと。また、SYPAQのプレスリリースには「ウクライナのユーザーからのフィードバックを受けて、諜報任務や監視任務、偵察任務に適応させた」と記されていることから、ウクライナ軍が使用したCorvo PPDSには独自のカスタマイズが施されていたと考えられます。なお、SYPAQはCorvo PPDSを「低コスト」と述べるのみで詳細な価格は明かしていませんが、イギリスの大手メディア「Daily Mail」は1機当たり2750ポンド(約50万7000円)と報じています。



オーストラリアのニュースメディア「7NEWS」が公開した以下のムービーには、Corvo PPDSの実物や、実際に飛行する様子が記録されています。

Aussie company SYPAQ develops cardboard drones for defence of Ukraine | 7NEWS - YouTube

Corvo PPDSの実物はこんな感じ。



以下のように折りたたんでコンパクトに輸送できます。折りたたみ状態の寸法は高さ760mm×幅510mm×厚さ45mmです。



小型のカタパルトを使って射出可能。



また、勢いよく投げるだけでも飛ばせます。