TikTokが正式に新たなeコマースプラットフォーム「TikTokショップ(TikTok Shop)」を米国でローンチして約1カ月、クリエイターらは同プラットフォームに登録し、製品の直接販売を始めている。

TikTokは、同社のユーザーであるクリエイターが収益獲得の新たな仕組み作りで活用できる手段として、TikTokショップを生み出した。つまり、サードパーティのWebサイトにリンクしたり、AmazonやFacebook Marketplace(マーケットプレイス)で販売しようとして、追加の料金支払いや契約上の義務を課せられたりしなくても、TikTokショップで販売が完結できるようになる。

インスタグラムやFacebook、YouTube、SnapchatのようなSNSアプリは、どこもアプリ内ショッピングを試してきた。eコマースに主軸を移すほぼ1年前、TikTokはホリデーショッピングシーズンに先駆けて、ショッパブル広告のオプションを試験運用していた。このオプションを利用すれば、広告主は製品をインフィード動画に表示したり、動画で製品カタログを宣伝したり、ライブ動画にクリッカブル広告を掲載したりできる。

販売サイトと動画の一体化は自然な流れ



コマース領域に精通したエージェンシーであるジャニュアリーデジタル(January Digital)で顧客サービス担当シニアバイスプレジデントを務めるニック・ドラビッキー氏は、「クリエイターが自分のファンを購買時点まで誘導できれば、その製品レビューは信ぴょう性が増すだろう」と話す(マーケターが信ぴょう性を求める理由については、こちらから)。TikTokの新たな機能では、テキストベースのレビューではなく、バーチャル店舗の製品に対して動画レスポンスのアップロードが可能だ。

「販売サイトと動画の一体化は自然な流れだ。それに、特定のブランドのひとりのインフルエンサーというよりも、影響力の大きなブランドを引きつけられるインフルエンサーを何人も選別しているようにも思える」とドラビッキー氏は言う。「これまで15秒や30秒もあれば動画で製品を売りさばいてきたインフルエンサーにしてみれば、大した制限がないのなら、製品の販売などお手の物だ」。

TikTokの広報によると、TikTokショップは成果が出始めており、参加規模は明らかにされていないが、2022年11月には米国と英国でアルファ版の招待制試験運用を実施していた。小規模なエコシステムなため、ユーザーはワンストップショッピングで、瞬く間に製品を見つけ出し、購入まで済ませられる。TikTokは2023年に入り、数百人のベータ版モニターと売り手を対象に、TikTokショップベータ版を運用した。モニターからは、「ほしいもので現在TikTokでは入手できないが、ほかのeコマースサイトには売られているもの」について意見をもらい、それに対応しているという。

さらに、TikTokショップにはアフィリエイトプログラムもあり、クリエイターとインフルエンサーは売り手とつながっているため、クリエイターが手数料ベースの物品販売で手数料を稼げるようになる。TikTokの広報によれば、TikTok自体のコミュニティとつながることで、クリエイターは自分のブランドとアイデアの収益化が可能だ。なお、アフィリエイト料は1%からさまざまで、各ブランドやTikTokが設定した割合で決まるという。

自由度が高いTikTokショップ



TikTokに230万人のフォロワーを持つグレース・メアリー・ウィリアムズ氏は、2019年からお菓子やおもちゃなどのレビューにTikTokを使用している。2021年には、スライムのオリジナルおもちゃの製造と販売をTikTokで開始し、プロフィール欄に自分のオンラインショップのリンクを貼っていた。

ウィリアムズ氏にとってTikTokショップが便利なのは、インフルエンサーや将来のブランドパートナーとのコラボ、あるいはライブショッピングが可能で、TikTokショップ利用者なら送料が無料になり、1日中アナリティクスのトラッキングできる点だ。

「TikTokショップがなぜ私にとって魅力的なのかというと、そもそもTikTokが大好きで、すでにコンテンツをアップしていたというのも理由のひとつだ。加えて、TikTokなら売り方の自由度が大きいのが何よりも魅力的だ。自分の製品を好きなように売れる。ほかのプラットフォームではこうはいかない」とウィリアムズ氏は話す。さらに、TikTokだと、人気のハッシュタグがついたアイテムを見つけやすく、製品を売るときにそのアイテムを使いやすいという。

ウィリアムズ氏は2022年3月にTikTokのビジネスページを始めていたが、2023年8月に入り、TikTokショップでオンラインショップ@Slimesbygraceshopを発表した。TikTokビジネスセンターで製品カタログを作成し、自分のTikTok For Businessアカウントを利用して、TikTokストアマネージャーでストアを作っている。現在ウィリアムズ氏は、以前Amazonでやっていたようにコンテンツをストックフォトとして載せるのではなく、自分自身のオンラインストアにTikTok動画コンテンツをあげて、そこから買い物客の関心を引きたいと考えている。

「エンターテインメントとeコマースの両方を取り扱うクロスオーバーというアプローチは、実にすばらしい。TikTokがとても楽しくて、エンターテインメントとして優れていることは誰もがすでに認めているところだ」とウィリアムズ氏は述べた。

TikTokというバーチャルモール



バイラルハッシュタグ#TikTokMadeMeBuyItが、TikTokショップというバーチャルモールに道を譲ったのはあっという間だった。そう話すのは、広告エージェンシーのヒューズクリエイト(Fuse Create)でクリエイティブ戦略部長を務めるジャッキー・コスチュク氏である。ソーシャルeコマースの口コミ戦略と言えるこのハッシュタグは、TikTokでインフルエンサーマーケティングを行ったり、製品を探し出したりするときに、なくてはならない存在だった。分析プラットフォームのフートスイート(Hootsuite)によると、2023年8月現在、視聴数は6400万回を超えているという。

「ユーザーを今動画で見ている製品につなげようとしたとき、TikTokのパーソナルで極めてターゲットを絞ったアルゴリズムはとても役に立つ。Facebookのような、それほど楽に新製品を見つけ出せないプラットフォームとは一線を画す」と、ウィリアムズ氏は言う。

また、「TikTokショップでは、小規模な店舗でも見つけられるし、ほかの人が関心を持っているものも見つけられる。というのも、TikTokは関連のある動画を強く押してくるからだ。それはきっと、みんなにTikTokショップを見て、これまでとは違うと思ってもらいたい、そして、少しでも長くここにいようと思ってもらいたいからだろう」と付け加える。

[原文:What TikTok’s e-commerce launch could mean for marketers and content creators]

Julian Cannon(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)