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格安航空会社(LCC)ジェットスター・ジャパンの労働組合「ジェットスタークルーアソシエーション」(JCA)は8月15日、ストライキも視野に未払い賃金などについて会社側と交渉していた件について、14日の団体交渉で会社側から半年以内をめどに計算し直すなどの説明があったことを明らかにした。

JCAによると、会社側は在籍している社員を対象として未払い賃金の計算し直し、一括して支払うと回答。求めていた組合事務所の提供についても会社側が可及的速やかに準備するとの説明があったという。

JCAは2023年5月1日に要求書を提出し、会社側と事務折衝や団体交渉を続けてきたものの満足な回答が得られなかったとして、8月3日に争議権(ストライキ権)を確立。厚生労働省などに争議行為予告を実施し、ストなどが可能な開始日を8月17日以降としていた。

ジェットスターの機長でJCA執行委員の井小萩明彦氏は、会社側の対応を「高く評価したい」と話す一方で、「未払い賃金はコンプライアンス(法令遵守)の問題であり、労働条件の改善を求める場合とは異なり、会社側との妥協案を探るようなものではない」と訴えた。

●未払い賃金「本来は会社と交渉するような話ではない」

JCAは、以下の(1)〜(3)を会社側に要求していた。

(1)変形労働時間制における所定労働時間外の労働に対する未払い賃金をすべて支払う
(2)休業開始後に一方的に減額された通勤費をすべて支払う
(3)組合活動のために必要とする会社所管の施設、設備等の便宜供与を認める

JCAによると、8月14日の団体交渉で、会社側からは以下の内容を説明されたという。

(1)組合員だけでなく在籍している社員を対象に、3〜6カ月をめどに計算し直し、一括して支払う
(2)手続き上の瑕疵があったことは認めつつも、一部の通勤手当の支払いには応じられない
(3)組合事務所については可及的速やかに会社が準備して提供するが、組合掲示板の設置は許可できない

(1)の未払い賃金を一番重要視して交渉していたため、井小萩氏は会社の14日の説明については「真摯な対応」と評価。在籍している社員を対象に計算し直し、正確な金額を算出するために約3〜6カ月の期間を設けたことにも理解を示した。

もっとも、井小萩氏は「​​すべての要求を認めてもらうために取り組んできた」とし、今後のストライキ実施の可否については組合員と相談の上で判断するという。

万が一ストライキが実施される場合には、多くの運行が止まるような大規模ストライキがおこなわれる場合には48時間前に会社側に通達するとし、運行に支障がない程度のストライキを実施する場合には前日18時までに会社側に伝える方針だという。

ジェットスターの客室乗務員でJCA執行委員長の木本薫子氏は、「(スト実施等で)お客様にご迷惑おかけすることは本意ではない」と話し、今回の団体行動は「会社の安全文化にも関わること」と強調する。

「乗務員だけでなく、地上職や整備員など全従業員が数多くのルールを遵守したうえで、旅客機の安全な運行は成り立っています。賃金支払いについて法令を守れないようでは、周囲から安全に関わる法令も守れていないのではないかと思われかねませんし、従業員としても不安に思います。

賃金未払いはコンプライアンスの問題であって、本来、労組が会社と交渉するようなものではありません。争議権の確立にまで至ったことは苦渋の決断でもあります。

私は創業時から客室乗務員として勤めています。会社が好きだからこそしっかりしてほしいという思いです」

●ジェットスター・ジャパンの回答

ジェットスター・ジャパンの広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「早期解決に向け今後も組合と真摯に協議を重ね、最良の着地点を見出すことに全力を尽くしてまいります」と回答した。

(8月17日18時45分、「創業以来の全社員」を「在籍している社員」に改めるとともに、ジェットスター・ジャパンの回答を追記しました)