松川・今井議員らのパリ視察を完全論破する東大論文…鬼の岸田政権「増税の成功体験を実感したい」地獄へまっしぐら

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「サラリーマン増税は考えていない」などと語った岸田文雄首相だが、松野博一官房長官は「サラリーマンを狙い撃ちにした増税は行わない」などと文言を軌道修正した。これに対して作家の小倉健一氏は「これでは真逆の意味を持ってしまう」と指摘するーー。

「サラリーマン増税やらない」発言を官房長官が修正…”結局やるんかい”

 アタらしいオカねのバラマキ先を見つけて、岸田首相はホッとひと息なのだろうかーー。

「消費税を引き上げる、ぜひ、この引上げを円滑に行うことによって、引上げの成功体験を国民の皆さんとともに実感し、未来を考える、こういったことの意味は大変大きい」と語ったのは、岸田文雄首相だ。2019年、衆議院予算委員会での発言だ。

 岸田首相は、支持率の低迷から「サラリーマン増税をしない」などと語ったが、「増税の成功体験」を国民と分かち合おうという不可思議な感覚は、岸田首相の長い永田町生活でしか身につかないものであろう。7月25日の岸田首相が『サラリーマン増税』を否定した翌日には、政権幹部である松野博一官房長官が「サラリーマンを狙い撃ちにした増税は行わない」として、軌道修正を行ったことだ。「サラリーマン増税をしない」と「サラリーマンを狙い撃ちにした増税は行わない」では、ほとんど真逆の意味合いを持つ。サラリーマンに対して増税するか否かであれば、確実にされるということだ。

 なぜ、増税するのが確実かといえば、防衛費倍増、異次元の少子化対策で、岸田政権は赤字国債を発行するか、増税をするかしか財源の手立てがない状況だ。赤字国債を発行したところで、結局のところ、将来の国民がその借金を返すことになる。

精神論で物事を解決しようとはかる恐怖の政権

 防衛費を増やして本当に日本の安全保障環境がよくなるのか微妙なところだ。ウクライナ戦争の教訓は、圧倒的な国力、武力を持ったロシアでも、ウクライナを思うように侵略できないこと、核武装国家同士は攻め合わないこと、軍事同盟がないと攻められやすいこと、まず、この3点だろう。日本の防衛費倍増はこの3つにどれも当てはまっていない。予算を倍増してまで増やした防衛費で、日本の安全度が倍になっているかは非常に不安を覚える。

 何よりも問題なのは、異次元の少子化対策だろう。日本の少子化は、晩婚化と未婚率上昇が9割の原因をしめていて、子育てをいくら支援しても出生率は改善されない。民主党からの政権交代から時間がだいぶ経ち、自民党は、対策と解決を完全に履き違えた政党になりさがってしまった。アメリカ軍の空爆に、竹槍を持って対策をしても、何一つ効果はない。

「こどもまんなかアクション」で、Jリーグのサッカー観戦で子どもを優先入場させる、「写真コンテスト」などという方法論で、少子化は何も解決しない。精神論で、物事を解決しようとする、岸田首相、そして小倉将信子ども相には、恐怖すら感じてしまう。

松川るい、今井絵理子両議院らのパリ視察は意味があったのか

 松川るい、今井絵理子両参議院議員が、パリへの海外視察が大炎上し、ネット上では逆に、彼らを擁護する意見が散見されている。たしかに、両議員への批判の中には嫉妬も動機に含まれているものもあるだろうし、自由な議員活動を規制させるのはよくない、というのもそのとおりだと思う。しかし、この問題の本質は、嫉妬の有無でも、議員活動の規制でもない。この手の海外視察に意味があるのか、否か、ただそれだけである。

 議員の海外視察に関する研究がないか調べてみたところ、面白い論文が見つかった(Hiroyuki Hoshiro『Do diplomatic visits promote official development aid? Evidence from Japan』2021)。東京大学社会科学研究所教授の保城広至氏によるものだ。

 この論文は、政治家の外交訪問が援助配分の決定要因になるかどうかを、日本への外国政治家の訪問数とODAの金額の関係を調べている。結果、(1)外交訪問は途上国が援助を必要としていることを示す、高い価値のあるシグナルであること、(2)援助国への訪問は、訪問者が公然と資金援助を必要とする場合、援助国に国内政治的圧力をもたらすこと、(3)援助国の指導者が直接会って話をすることは、援助先のニーズをより深く知る機会を提供する可能性が高いことの3つがわかったという。

ググればでてくることを現地で学んだということ

 この指導者の訪問に効果がある理由として、論文では「途上国指導者の援助国訪問は、現地メディアとの記者会見やインタビューの機会を提供する。このような公の場では、途上国の首脳が経済協力や援助に対する要望を表明することができる。このような公の場での表明は、受入国政府がそのような要請を無視することを難しくする」ことを1つの理由として指摘している。

 この論文から、こういうことが推察できるのではないだろうか。まず、相手国にきちんと要求することがある場合、直接訪問に意味がでてくる。また、指導者レベルの政府高官であればあるほど、その効果が発揮されるということだ。

 今回の今井、松川参議院議員の視察には、政府高官や現地メディアとの接触があったことが報じられていない。そして、情報交換と人脈づくりに一定の効果があったことを主張する向きもあったが、少なくとも、彼女たちは何かフランス政府から引き出そうとして赴いたわけではないということである。旅行の目的が「視察」としているところからもそれがうかがえる。本来、情報交換や人脈づくりというのは、副次的な要素であり、何かプロジェクトの遂行にあたって、後からついてくるものである。何も目的がないから、政府高官と会って交渉する必要もなかったのだろう。ググればでてくることを現地で学んだということだ。

「成果を出したこと」でなく「行動したこと」だけで評価される自民党

 外交訪問における対面での話し合いは両国の交流を活発にするということもいえるが、ここで言及すべき重要な点としては、外交訪問だけが 外交活動ではないということである。現地の大使館における外交活動は日常的に行われており、その活動が外交の圧倒的多数を占めているのだ。その大使館に子守をさせていたのだというから呆れてしまう。目的もなく、パリを漂っていただけというのが実際のところであろう。成果のともなわない海外旅行を「視察」として公の要素があるかのように主張するから、炎上を招いたのである。

 日本の安全保障環境、経済環境を考えれば、アメリカ、中国、韓国、台湾などの政治家のもとへ向かってもよかった。先の防衛費倍増や異次元の少子化対策と同じく、「成果を出したこと」でなく、「行動したこと」だけで、何か素晴らしいことをしているかのような政治家しか自民党にはいないのだろうか。

次なるバラマキのターゲットになる認知症

 いよいよ懸念されるのは、「異次元の認知症対策」だ。岸田首相は、8月3日に「国家プロジェクト」と位置づける認知症対策の拡充に向けて動き出した。認知症施設を訪れた岸田首相は、「認知症の方を含め、すべての方が生きがいを感じられる多様性や包摂性を大切にできる社会を実現していきたい」という強い決意を表明している。岸田首相自らをトップとし、認知症の当事者や家族、有識者らが参加する会議を来月立ち上げると表明した。こどもどまんなかの次は、高齢者どまんなかということであろう。とにかくバラまかないと不安で、不安で仕方がないのだろう。お金さえまけば、少なくともお金を撒いた先だけは喜んでくれるのだ。

 認知症の人は2025年時点で推計約700万人で、社会問題になっているから、次なるバラマキのターゲットになるのは間違いない。ここでも、私たちの税金をバラまいてどんな効果が生まれるのかなど議論はされないのであろう。対策をとりました!で終わるのが、岸田政権なのである。私たちが納めた税金は、こうしてムダに消えていき、さらなる増税へとまっしぐらに突き進んでいく。アタらしいオカねのバラマキ先を見つけて、岸田首相はホッとひと息なのだろうか。