首都圏JR「コロナからV字回復した駅」ランキング 山手線は南北で“明暗” 客足は本当に増えた?
JR東日本が2022年度の各駅乗車人員を公表しました。コロナ禍となって3年。コロナ禍前のデータと比較すると、どのような傾向が見えてくるでしょうか。減少率をひとつの尺度に、ランキング形式で見てみます。
テーマパーク最寄り駅は大打撃
コロナ禍となってから3年以上が経ちました。その間、鉄道の利用者が減少したのは周知のとおりです。それでは東京周辺のJR駅で、最も打撃を受けた駅はどこだったのでしょうか。その痛手から回復した駅、また回復とは縁遠い駅など、状況を見ていきます。
まず駅ごとの乗車人員に関して、コロナ禍の影響が最も大きかった2020年度における、コロナ禍以前からの減少率を見てみましょう。減少が著しかった(ワースト10)駅は以下のとおりです(2018年度比)。
山手線の目黒〜恵比寿間(2022年5月、内田宗治撮影)。
1位、舞浜駅(−53.8%)
2位、水道橋駅(−51.0%)
3位、原宿駅(−45.5%)
4位、品川駅(−42.4%)
5位、東京駅(−42.0%)
6位、海浜幕張駅(−41.4%)
7位、飯田橋駅(−40.3%)
8位、渋谷駅(−40.1%)
9位、有楽町駅(−40.0%)
10位、新宿駅(−39.6%)
(JR東日本発表、年度別「各駅の乗車人員」ベスト100駅での比較、以下同)
舞浜駅(京葉線)は東京ディズニーリゾートの最寄り、水道橋駅(中央・総武線各駅停車)は東京ドームシティのほか周辺に多くの大学を抱えています。原宿駅(山手線)は東京を代表するファッションタウンの玄関口です。そうした人気の遊び場などへのアクセス駅がワースト3となりました。全100駅の平均では−32.6%なので、上記の駅は平均よりかなり大きいダメージを受けたのが分かります。
それでは、コロナ禍がやや落ち着きを見せてきた2022年度には、どのくらい回復してきたでしょうか。コロナ禍前からの減少率の大きい順、すなわち回復していない順でランキングにしてみます。
回復が小さい駅ワースト10(2018年度比)
1位、品川駅(−35.2%)
2位、飯田橋駅(−33.3%)
3位、有楽町駅(−32.5%)
4位、大崎駅(−31.6%)
5位、新橋駅(−31.5%)
6位、浜松町駅(−30.4%)
7位、田町駅(−30.1%)
8位、目黒駅(−27.5%)
9位、代々木駅(−27.5%)
10位、五反田駅(−27.4%)
最悪期の2020年度に比べ減少率は改善しているものの、ワースト10となった駅は、まだまだ減少率が高いといえるでしょう(100駅の平均では−20.5%)。
コロナ禍からの乗車人員の回復率が小さい飯田橋駅(2022年3月、内田宗治撮影)。
なお2020年度にワースト1位だった舞浜駅は、−23.2%と約30ポイントも回復して25位、水道橋駅は−24.6%で15位、原宿駅は−23.4%で24位と、いずれもかなり持ち直しています。
2022年度のワーストランキングでは、山手線の南半分側にあたる有楽町〜品川〜目黒間、奇しくも連続する8駅がワースト10の中に入っています(高輪ゲートウェイ駅は2020年開業のため除外)。ワースト20にまで広げると、山手線では13位に東京駅、16位に秋葉原駅、19位に恵比寿駅、20位に新宿駅が入ります。いずれもすべて山手線の南側半分の駅にあたり、北側半分にあたる駅はひと駅も含まれないのも特徴的です(池袋駅は40位の−19.1%)。
一方、コロナ禍前からの減少率が小さい、すなわち利用者減が大きく回復した駅のランキングは以下のとおりです(2022年度の2018年度比)。
1位、桜木町駅(−9.1%)
2位、北朝霞駅(−10.4%)
3位、南越谷駅(−10.5%)
4位、赤羽駅(−11.0%)
5位、さいたま新都心駅(−11.2%)
6位、浦和駅(−11.52%)
7位、辻堂駅(−11.53%)
8位、金町駅(−11.7%)
9位、千葉駅(−12.2%)
10位、大宮駅(−12.3%)
定期外の利用はコロナ禍前の水準に近づく
ワースト10がすべて都心の山手線とその内側の中央線の駅だったのに比べ、ベスト10は神奈川、埼玉、千葉各県内の駅が8つも占めています。
1位の桜木町駅は、2020年に新南口(市役所口)が開設し、駅に隣接して商業施設やホテルのあるJR桜木町ビルがオープンしたことが寄与したと考えられます。また、北朝霞駅や南越谷駅のように、郊外住宅地の最寄り駅が多いのも特徴的です。
中央線の国分寺駅付近(2023年2月、内田宗治撮影)。
定期券利用者と定期券外利用者それぞれのデ−タも見てみましょう。コロナ禍前(2018年度)に比較して2022年度では、定期券外利用者は−15.3%にまで回復しているものの、定期券利用者は−23.9%と回復が鈍くなっています。
単発の利用で遊びなど様々な用事で出かける人の数はコロナ禍前の水準に近づいてきましたが、定期券を利用して通勤通学していた会社員や大学生は、リモートワークやリモートでの授業がある程度浸透し、コロナ禍前の状況へ完全には戻っていないことを示しています。
山手線の南側半分、特に東京〜品川〜大崎間に大企業中心のビジネス街が集中していることを考えると、こうした結果もうなずけます。
観光庁によると、2022年(暦年)の日本人の延べ宿泊者数は、2019年に比べ−9.6%にまで回復しています。旅行にしろ近場のお出かけにしろ、通勤通学以外で外出するという点では同じと考えると、定期券外での利用回復はさらに進むと思われます。定期券利用者に関しては、コロナ前に比べ10〜20%程度減少したまま留まる可能性もありそうです。