仙台地下鉄東西線の終点付近に、道路と地下鉄が2層構造になった橋があります。しかも道路は先につながっておらず、「廃墟」のような状態。なぜこのような形になったのでしょうか。

地下鉄と道路の2層構造の橋

 仙台市を走る地下鉄東西線には、”山岳鉄道”の顔もあります。広瀬川を渡って西へ進むと、トンネル内で徐々に標高を上げていき、終点・八木山動物公園駅では標高136.4mに到達。駅前の道路からは、仙台市街地を見下ろすパノラマが楽しめます。

 2015年の開業後しばらく「標高日本一の地下鉄駅」となっていましたが、2020年に神戸の六甲山地を抜ける「北神急行」が市営地下鉄に移管されると、終点の谷上駅(標高244m)が日本一の座につきました。


2015年に開業した仙台市営地下鉄東西線(乗りものニュース編集部撮影)。

 ところで、終点付近の青葉山〜八木山動物公園間は、山奥の深い谷間を「竜の口橋梁」で越えていきます。長さ120mのトラス鉄橋である竜の口橋梁はなんと、「下が鉄道、上が道路」の2層構造になっているのです。

 こういった2層構造の橋といえば、本州と四国をむすぶ「瀬戸大橋」や、JR・南海が下層を走る「関西国際空港連絡橋」などがあります。しかし、地下鉄での事例はこの仙台市地下鉄のほかに見当たりません。東西線はリニアモーター式で、線路のあいだに駆動を生み出す「リアクションプレート」が敷かれているのも特徴です。

 さらにこの橋が異質なのは、上部を走る道路が、「橋の先でプツンと途切れている」ということ。つまり、未完成なのです。

どうしてこうなった「橋の上だけ道路」の将来

 道路部分は都市計画道路「川内旗立線」に位置づけられ、八木山動物公園駅から北西回りに、東北大学工学部の下をトンネルで抜け、川内駅から仙台西道路(国道48号)方面へ抜けていくルートとなっています。


途中で途切れたままの「竜の口橋梁」。下層を仙台地下鉄が走る(画像:Google Earth)。

 現在、八木山の住宅街から仙台中心街へ直結する広い街路は無く、長町の国道286号へ出るか、狭くクネクネと急勾配が続く仙台城経由の山道くらいしかありません。観光シーズンには混雑するほか、2022年3月の地震で仙台城の石垣が崩落し、無期限の通行止めという状況です。

 川内旗立線は2000(平成12)年から環境アセスメントなど手続きが進められ、2006(平成18)年に取りつけ部である八木山動物公園駅付近が着工。地下鉄建設と一体的に行われたもので、川内駅周辺整備もこの都市計画で行われています。竜の口橋梁は2008(平成20)年に着工しています。

 ところが、2011(平成23)年1月に都市計画路線網の見直しが行われました。そこで川内旗立線は、計画自体は残されたものの、優先順位が低い路線とされたのです。

 計画は生きているので、「2層構造」としての竜の口橋梁の建設は続行され、2014(平成26)年に完成。翌年に地下鉄東西線が開業しました。しかし橋の先の道路は「整備着手時期は未定」となったままで、今も橋の入口はバリケードで封鎖されています。

 2021年の環境アセスメント報告書でも「市全体の道路交通ネットワーク上、環状機能もあわせ持つ重要な路線と位置付けられる」とされた川内旗立線。事業化し「山奥の廃墟」を脱却するめどは立っていません。