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 試合後、エディン・テルジッチ監督は何度も、何度も言葉を探さなくてはならなかった。普段ならば非常に巧みに言葉を選び発言する指揮官なのだが、「決して皆さんに分析的な言葉を言える状態にないことをお許し願いたい」と絞り出すのが精一杯で、目からは涙も溢れ出た。この日は自分の心のクラブであるドルトムントにとって、そして当然ながら自分自身にとっても、大きな、大きな1日となる可能性があった。11連勝中の難攻不落シグナル・イドゥナ・パークで、もしも1.FSVマインツ05を相手に勝利をおさめれば、クラブとして11年ぶり。自身にとっては監督として初のブンデスリーガ優勝をここドルトムントで達成することができた。「ここに辿り着くため、我々はとにかくハードワークをし、そして実際にビッグチャンスを手にしたのだが」

 逆に自身57試合目のブンデスリーガでの試合は、まさに「最悪」の悪夢と化していく。早々に2点を奪われ、最終的には追いついたものの逆転で2位転落。「地面に倒れ込んだり、ロッカールームで座り込んで、打ちひしがれている選手たちの姿があった。それを見て、この虚しさの中で、私は本当に世の中は不公平であるように感じてしまう」と吐露。だがそれでも最終的には頂点に立ったバイエルンに「祝福の言葉を贈りたい」とも述べており、「今日という日が我々にとっていかに困難なものであったとしても、この34試合を経てトップに立つからにはそれだけの理由もあるんだ」と言葉を続けている。「今回のマインツ戦は簡単な試合にはならないと覚悟していたが、数週間前のホーム戦のような展開にはならず難しくなってしまったね。はやく2点目が決まっていたら、あのPKが決まっていたら?可能性はあったかもしれないが」

マッツ・フメルス「これから本当に辛い数日が待っている」

 そのPKとは1点リードした迎えた場面でエムレ・ジャンが獲得したPKのこと。そこでジャンはこれまで5度決めているにも関わらず、ブンデスで1度もPKを決めたことのないセバスチャン・ハーラーがキッカーを務めた。その理由は?この問いに、ジャンは肩をすくめながら当初は特に返答せず、ただその後に「セバスチャンは良い感覚を持っていたから、だから彼が蹴ったんだよ」と説明。そして改めて今回の敗戦について「言葉にするのは難しいし、選手を責めるようなことだってできない。僕らは全力を尽くしたんだんだ。」と強調し、今季ドルトムントが4度首位に立ちいずれも勝利できなかったことには「正確にはわからないよ」を肩を落とした。また「本当は今日の試合で決めてしまわなくてはいけなかったのに」と肩を落としたマッツ・フメルスも、「マインツが掴んだ2度のチャンスで、いずれも2点決めてしまった」と総括。

 一方で、「このクラブがいかに素晴らしいファンであり、素晴らしいクラブであるかがわかる」という大声援が、逆に重圧になったのでは?との問いには、「あの雰囲気はむしろ感動的で、信じられないほどだった。人生でほとんど経験したことがない」と反論し、ジャンも「ドルトムントには世界一のファンがいる、今日それを見ただろう」とコメント。試合後には落ち込む選手たちへ、ドルトムントのファンからは温かな拍手と共に、「We are all Dortmund boys」との声援を送られていた。「これから長い日が続く。この数日間に味わったものよりも。厳しい日々がこれからも続くだろう」とフメルス。一方ジャンは「34試合を経てトップに立った」バイエルンを讃えつつ、「必ず、必ず来年また、僕たちは戻ってきてみせる」と力強く誓った。 

ジュード・ベリンガム欠場の理由「今朝の状態が良くなかった」

 なおこの試合でも欠場を余儀なくされたジュード・ベリンガムについて、テルジッチ監督は「金曜の時点ではかなり良い感じだったのだが、今朝になって彼からチームの助けになるには万全ではないと耳打ちされたんだ。非常に残念ではあったが、ただウォーミングアップでも調子が悪かったのでね」と説明。ただそれでも途中出場も検討していたようだが、ドルトムントは逆に追いかける展開となったため「かなり攻撃的な起用になった」ことからベリンガム投入は見送られたという。「それでも彼はウィナーだ。今日まで我々に優勝の可能性があったのは、彼がいてくれてこそ。今後きっと彼のキャリアの中で多くのタイトルを手にすることだろう。それは確かなことだ」と語った。