着物は右前に着るとされるが…(写真はイメージ)

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東京・銀座で開かれる予定の着物イベントのポスターについて、イラストの着物が左前になっていると、ネット上で疑問が相次いでいる。

左を手前にして着る左前は、「死に装束」とされていることが理由だ。イベントの運営会社は、「着物は、もっと自由でいいと思っています。ポスターはイメージで、深い意味はありません」と取材に説明している。

AIを使ってアジアの少女を生成させたフリー素材を使用か

ポスターでは、花を背景に、黒髪の少女がピンクに近い色の着物を着ている上半身のイラストが描かれている。

イベントは、「銀座今昔きもの大市」と題して、2023年5月12〜14日に開かれる予定だ。公式ツイッターでは、4月17日にポスター画像を載せてイベントをPRした。

ところが、この画像に対し、リプライ欄で突っ込みが相次いだ。

「それ死装束じゃ......?」「左前は駄目でしょ」「これでよくGOサイン出したな」

さらに、着物の中にシャツらしきものが見える、などと違和感を訴える声も次々に寄せられた。

中には、「『未来の着物』のイメージってことなんだろう」「着物界へのアンチテーゼなのかも」との意見も出たが、否定的な声の方が多い。

イラストについて、AIを使ったのではないかとの指摘も相次いだ。出所についても特定が行われ、写真などの素材サイト「Adobe Stock」で同じ画像があったとの指摘があった。

画像ページを見ると、AIを使ってアジアの少女を生成させたと英語で説明されている。

着物を左前に着ることについては、過去に物議を醸したケースがいくつか報じられている。2010年9月には、西郷隆盛のキャラクター「西郷どーん」の着物が死に装束とされる「左前」だと指摘が出て、JR九州が制作会社のミスとしてイラストを修正した。

「着物は、もっと自由にコーディネイトしていい」

今回のイベントで、着物を左前にするなどしたイラストをポスターに使ったのは、一体なぜなのだろうか。

銀座今昔きもの大市を手がけたイベントプランナーのデザイン・アベニュー(奈良県吉野町)は4月20日、代表がJ-CASTニュースの取材にこう説明した。

「伝統的な着物にこだわる方が納得いかないのは分かりますが、着物を着るきっかけとして、色んなものがあってもいいでしょう。ファッションに決まりごとはなく、着物は、もっと自由にコーディネイトしていいと思っています。ポスターはイメージであって、そこに深い意味はありません」

イベントは、着物をもっと色んな人に広げようと、15年ほど前に始めたという。

「デパートなどの着物展示会と趣向を変えており、特に若い人に興味を持ってもらいたいと考えています。帯を締めずに西洋のコルセットを使ったり、着物の下側にフリルのドレスを着たりするのもはやっています。とっかかりは自由でよく、段々と伝統的な着物が好きに変わっていくこともあると思います」

ポスターについては、このまま変更する予定がない考えを明らかにした。

イラストは、Adobe Stockの画像かどうか分からないものの、フリー素材を使ったと認め、「画像的にAIではないかと思っています」と答えた。

イベントでは、全国から14店が出品して、着物や帯を中心に数千点を展示販売するという。価格は、1000円から正絹、作家物なら20万円ぐらいまであるとした。3日間で、少なくとも1500〜3000人は来場する見込みだとしている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)