Twitterによって「国営メディア」のラベルを付けられたアメリカの公共放送・NPRが、毎日続けていたTwitterの投稿を終了することを明らかにしました。NPRは別のプラットフォームから記事にアクセスするようユーザーに求めています。

NPR quits Twitter after being falsely labeled as 'state-affiliated media' : NPR

https://www.npr.org/2023/04/12/1169269161/npr-leaves-twitter-government-funded-media-label

NPRは、自身が管理する52のTwitterアカウントで新しい投稿を行うことをやめることを明らかにし、ニュースレターやFacebook、Instagramなどの他のプラットフォームから記事にアクセスするよう呼びかけました。この決定は、TwitterがNPRのアカウントに「国営メディア」のラベルを付けたことが理由であり、NPRは「ロシア、中国、その他の独裁的な国の宣伝機関に使用するものと同じラベルが付けられた」としてTwitterを非難しています。

NPRのTwitterアカウントに「国営メディア」ラベルが付与されたのは2023年4月5日のこと。このラベルは「国家が財源や直接的/間接的な政治圧力をもって報道内容を統制したり、制作および配信を管理したりする報道機関」に付けられるものですが、TwitterはかつてNPRを「政府および国家当局関係メディアアカウントの例外」と明記していたこともあり、ポリシーをわざわざ改訂してまで非営利のメディア組織に不適切なラベルを付与したとして社内外から非難されていました。

Twitterが非営利組織のNPRに「国営メディア」のラベルを付ける、国の公式見解を垂れ流すロシアのRTや中国新華社と同じ扱い - GIGAZINE



NPRは確かに政府の資金を財源として運営していますが、その額は年間予算の1%にも満たず、編集の独立性は確保されていると主張しています。アカウントに国営メディアのラベルが付けられたことにより、NPRはコンテンツのプロモーションができなくなり、Twitterのアルゴリズムによって拡散されたり、オススメに表示されたりすることがなくなってしまいました。

その後、TwitterはNPRのラベルを「政府から出資を受けるメディア」というものに変更しました。記事作成時点で、NPRにはこのラベルが付いています。

NPRのTwitterアカウントに付けられた「国営メディア」ラベルが「政府から出資を受けるメディア」に変更&BBCも同一ラベルを付与される - GIGAZINE



一連の騒動について、NPRのレポーターを務めるボビー・アリン氏がTwitterのイーロン・マスクCEOとやりとりをしています。このやりとりのさなかに上記ラベル変更が行われていますが、マスク氏はラベルの変更に伴い「重要なのは、特定のルールをすべての人に公平に適用することです」と述べ、NPR以外のメディアにもラベルを付与する可能性を示唆していました。





マスク氏の意見は「NPRは政府からの出資を受けているので、政府から出資を受けるメディアというラベルを付ける行為は間違っていない」というものです。NPRがTwitter投稿を停止するというニュースを受け、マスク氏は「NPRのウェブサイトには、連邦政府からの資金援助が『不可欠である』と書かれているじゃないですか」と投稿しています。





なお、同じく非営利公共放送のPBSとイギリスのBBCも「政府からの出資を受けるメディア」のラベルが付けられましたが、BBCはマスク氏との直接対談を果たし、やりとりの末に「公的資金で運営されるメディア」というラベルへ変更してもらったことを明らかにしました。

NPRのアリン氏は「私たちの幹部は、政府が資金提供するメディアというラベルが私たちの編集の独立性に疑問を投げかけ、私たちの信頼を損なうと言っています。これが報道機関の間で連鎖反応を引き起こすのではないかと疑問に思う人もいます」と主張。実際にカリフォルニア州サンタモニカを拠点とするKCRW、ペンシルバニア州ピッツバーグのWESA、ケンタッキー州のWEKU、マサチューセッツ州ボストンのWBURがNPRと連帯してTwitter投稿を停止することを発表しています。

NPRのジョン・ランシングCEOは「長年、多くのジャーナリストは、ニュースを監視し、大きなイベントで人々とつながり、権威ある情報源とつながり、報道を共有するために、Twitterが重要だと考えていました。しかし、マスクがしばしば急きょ発表する方針転換は、それを損なっています。すでに虐待的なコンテンツがあふれているTwitterの文化が悪化したことが、撤退を決断する一因になりました」と述べました。