by Cockrell School

コンピュータの基礎を築き上げたアラン・チューリングにちなみ、計算機科学の発展に貢献した人物をたたえるチューリング賞が、通信規格のイーサネットを発明したボブ・メトカーフ氏に贈られました。

2022 Turing Award

https://awards.acm.org/about/2022-turing

Turing Award Won by Co-Inventor of Ethernet Technology - The New York Times

https://www.nytimes.com/2023/03/22/technology/turing-award-bob-metcalfe-ethernet.html

記事作成時点でメトカーフ氏はテキサス大学オースティン校の電気・コンピュータ工学名誉教授を務めており、マサチューセッツ工科大学のコンピュータサイエンス・人工知能研究所にも計算工学の研究員として所属しています。



by Cockrell School

1973年、ゼロックスが管轄するパロアルト研究所(PARC)のコンピュータ科学者だったメトカーフ氏は、最初のパーソナルコンピュータであるPARCの「Alto」を建物内で接続するための「ブロードキャスト通信ネットワーク」について記述した有名なメモを配布しました。メトカーフ氏が考案した初期のイーサネットは2.94Mbpsの速度で動作するもので、これは既存のネットワークよりも約1万倍高速でした。

当初の設計ではイーサネットを同軸ケーブルで実現することが提案されていましたが、同時にツイストペアケーブル、光ファイバー、無線(Wi-Fi)、電力ネットワークなどを置き換えることが可能な設計にもなっていました。メトカーフ氏は、ハワイ大学で開発されたコンピュータネットワークの草分け的存在であるALOHAnetから知見を得て、共同発明者であるデビッド・ボグスとともにイーサネットを完成させます。最初のイーサネットは後にゼロックス内で広く使われるようになりました。その後、メトカーフ氏は10メガビット・イーサネットを開発したチームを率いて、その後の規格の基礎を形成しました。



1979年にゼロックスを退社した後も、メトカーフ氏はイーサネットの専門家として開発を指導し、オープンスタンダードを業界に普及させるための努力を続け、IEEE 802.3の標準化にも貢献しています。

イーサネットは世界中の有線ネットワーク通信における重要な役割を果たしています。10Mbpsから400Gbpsまでのデータレートに対応し、800Gbpsや1.6Tbpsの技術も新たに登場しているなか、イーサネットは巨大な市場となっており、イーサネットスイッチだけで2021年の収益は300億ドル(約3兆9000億円)を超えるといわれています。



賞を授与したACMのヤニス・イオアニディス会長は「イーサネットはコンピューターを他の機器やコンピューター同士でつなぎ、インターネットに接続するための主要な方法でした。メトカーフ氏の独創的な設計思想により、イーサネットの帯域幅は幾何級数的に拡大しました。このようなインパクトのある発明を、50周年という節目の年に表彰することは、特にふさわしいことだと思います」と述べました。