彼の自宅バスルームに、女物のシャンプーが堂々と置いてあった…。男が隠しておかなかったのは、なぜ？
東京では今日も、男女の間にあらゆるトラブルが発生している。なかには解決が難しい、不可解な事件も…。
そんな事件を鮮やかに解決してSNSを賑わせている、ある1人の男がいた―。
彼の名は光城タツヤ。職業は、探偵。
今日彼のもとにやってきたのは「彼氏宅のバスルームで、女物のシャンプーとトリートメントを見つけてしまった」という女性だ。
あなたも、この事件の謎を一緒に考えてくれないだろうか…？
「浮気相手を特定する方法となると…。彼を問いただすか、スマホの中身を勝手にチェックして、決定的な証拠を見つけるしかないでしょう。
でも浮気相手がどんな人物かを明確にする方法は、いくつかあります」
早口でまくし立ててくる美沙さんを落ち着かせるように、僕は電話口でゆっくりとそう告げた。
「えっ！？それ、教えてください！」
「では、テレビをつけてもらえますか」
彼女は「どういうこと…？」とつぶやきながら、テレビのスイッチを入れた。
「2ヶ月前、美沙さんはInstagramに『ミナトンは、おうちでホラー映画を見るのにハマってる』と書いていましたよね。
でしたら彼は、Amazonプライム・ビデオやNetflixなどの動画配信サービスに加入しているはずです。視聴履歴は見られますか？」
「あ、入ってる入ってる！そういえば最近見てないな〜」
そう言って彼女は、リモコンを操作しているようだ。しかし次の瞬間、声にならない声をあげた。
「…えっ。なにこれ？」
「どうしました？」
「今、視聴履歴が出てきたんだけどさぁ。ホラー映画に交じって、韓流ドラマがめっちゃ再生されてる…」
「彼は、韓流ドラマには興味がない？」
「あるわけないじゃん！私が見ようって言っても、全く見なかったし。しかも全部ラブストーリーじゃん…。誰と見てるの！？」
「美沙さん、落ち着いて。差し支えなければ、タイトルを教えてもらえますか？」
「えぇっと…」
直後、彼女の口から飛び出した韓流ドラマのタイトルに、僕は何度も小さく頷いてしまった。
「…やっぱりな」
僕はバスルームにあったシャンプーと韓流ドラマの、ある共通点を発見したのだ。
「えっ。これだけでミナトンの浮気相手がわかったの？」
「あ、いえ。あくまで僕の推測ですが…。おそらく、彼の家に出入りしているのは50代の女性ですね。
あのシャンプーとトリートメントはエイジングケアに特化した商品ですし、視聴履歴にあった韓流ドラマはかなり昔に流行った作品ですから」
20代後半にもなって自立できていない男・湊（26歳）
「湊くん！ご飯、できたわよ」
「うわ〜、美味しそう！」
僕は温かい味噌汁をすすりながら、仕事の疲れがスーッと抜けていくのを感じていた。
「そう？良かったわ。初めての1人暮らしはどう？慣れたかしら」
「うん、激務だけどね。毎日頑張ってるよ。でも時々、この味噌汁の味が恋しくなる」
「偉いわ！今日は泊まって、明日の朝ごはんを作ってから帰るわね。
…あ、そうそう！さっき湊くんが帰ってくる前に、Netflixでお友達が薦めてくれた韓流ドラマを見てたのよ。面白くて一気に見ちゃったわ」
そう言ってバスタオルを手にした彼女は、鼻歌を歌いながらバスルームへと向かった。
その背中を見送りながら、僕は美沙から届いたLINEを読む。
美沙：明日、朝から湊のマンションに遊びに行っていい？
「うわっ。美沙、家に来たいって言ってる…。朝からはちょっと困るなあ」
僕は小さくため息をついた。
バスルームに向かった彼女は、僕がこのマンションに引っ越してきてから、週1でこの部屋を訪れている。そして身の回りの世話をしてくれているのだ。
正直、とても助かっている。でも彼女は、僕に恋人がいることを知らない。
26年間実家暮らしを続けた1人っ子の僕に、付き合っている彼女がいるなんて思ってもみないのだろう…。
そんなことを考えながら、ソファの上に落ちていた1本の長い毛を拾った。
「ママ、いつの間にか白髪が増えたなぁ」
▶前回：1人暮らしを始めた彼の家へ、遊びに行ったら…。バスルームで見つけてしまった、まさかのアイテム
▶1話目はこちら：同棲中の彼女が、いきなり帰ってこなくなって…？男が絶句した、まさかの理由とは【Q】
▶NEXT：1月24日 火曜更新予定
映画デートの約束を、ドタキャンされてしまった男。一体なぜ？
