来年2月に中国へ返還されることが決まったシャンシャン。5歳になった今でもあどけない雰囲気で、そのかわいさは健在。土日には観覧のための大行列ができる(撮影:月亭ペン太)

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シャンシャンの返還は来年2月21日」と12月23日の定例会見で小池都知事から発表され、上野動物園にいたシャンシャンファンたちはみな大きなショックを受けていた。一方、パンダ大使の二木忠男会長の元には、驚愕な内容の意見書が膨大に届いていた。「シャンシャンは箱入り娘なんです。怖い思いはさせたくありません」「嫌いな人にんじんはすりおろしてもらっています。そんな丁寧な対応が中国でも受けられるのでしょうか」「今年の夏、園内で引っ越しをしただけで、7キロもやせてげっそりしてしまったのに、10時間のフライトなんて耐えられるわけがありません」などと、少なくとも千通を超える投書や電話があったという。シャンシャンロスによって、体調不良となり、なんと入院してしまった人や引きこもりになってしまった人まで出ているのだ。

「私も寂しい気持ちでいっぱいです。上野観光連盟の理事長としてパンダに関わらせてもらって、最初に生まれたのがシャンシャン。しかも、生まれるまでの5年間は、まだか、まだか、と追い立てられることもありましたので、上野にとっても私にとっても待望の赤ちゃんでした。まん丸顔でかわいくてきれいな顔立ち、それに加えてママに膝カックンしちゃうユニークさもあって皆さんに愛されるパンダに成長しました。そんなシャンシャンを思う皆さんの気持ちは重々承知しているのですが、中国へ行ってもちゃんとした施設に入って生活する、ということを聞いていますので、安心して欲しいです」(二木会長、以下同)

シャンシャンは繁殖のために中国へ行くんです

中には、「シャンシャンを野生化させるようなことがあっては困ります」というような行き過ぎた心配をしている人もいるようだ。「そんなことは絶対にありません。中国へ返還されるのは、繁殖のためです。シャンシャンは5歳という適齢期を迎えていて、3月は発情期。向こうへ行って、相性のいいパートナーに出会って、かわいい赤ちゃんを産むためなんです」

二木さんは‘08年、パンダのリンリンが亡くなり、上野動物園にパンダが不在となってしまったとき、パンダ誘致に尽力し、‘11年にリーリーとシンシンの来日を実現した立役者。上野界隈の幼稚園や小学校に通う生徒たちの「パンダを上野に」という思い込めた「パンダの寄せ書き」を、当時の石原慎太郎都知事の元へ届け、誘致に難色を示していた石原氏の心を動かした。来日した翌年‘12年にリーリーとシンシンの間に赤ちゃんが生まれたが、残念ながら赤ちゃんは6日間の短い命となってしまった。その5年後に、生まれたのがシャンシャン。「これは上野も大フィーバーになるぞ」と二木さんの喜びもひとしおだったという。シャンシャン=香香という名前は中国語で人気者、という意味もある。文字通り、誕生イベントは大盛況、連日、上野動物園に大行列ができ、日本中に熱狂的なシャンシャンファンが誕生した。そんなシャンシャンが日本に居なくなってしまったら、ファンたちは耐えられるのだろうか?

「悲しみばかりに目を向けないでほしいですね。シャンシャンが相性のいいイケメンパンダを連れて上野に戻ってくる、っていうのが僕の夢のプランなんです。そして上野で赤ちゃんを産んでくれたら最高ですよね。そんな未来を楽しみにするのもいいんじゃないでしょうか」と優しい笑顔で語った。